第291話 奪われた日常11
恒常的に襲う震度3以上の揺れ、3分おきくらいにやって来る震度5クラスの地震はいまだに収まる様子が無い。
くそ!どうすれば……
船でも、船でもあれば……逃げられるか? そんなものあるはず………………
…………美琴さん……
「どこ行くの! けんたろー!」
俺はリリィさんのアパートの2階、美琴さんの部屋へ急いだ。
あいつ、持ってたよな。ボート、売ってねぇだろうな………………
全力で、階段を昇り、2階の角部屋、一番奥の美琴さんの部屋へ行き、
「美琴さん!! 美琴さん!!」
俺はドアの前でドアを叩きながら大声で美琴さんを呼んだ。居ない事は承知だ、今日は、美琴さんは昼過ぎからシフトに入っていたから、しかし、あのヒモがいるかもしれない。俺はその可能性にかけていたが……
やはり、返事はない。
ドアを、ドアノブを回すも、鍵がかかってやがる。
遅れて、リリィさんが俺に追いついて、
「何してるの?」
「ボート、あいつ、ボートもってるんだよ。一緒に行ったビンゴであてた商品のボート」
俺はそう言って、ドラマばりにドアに体当たりをかましてみた。
「けんたろー! ドア、外開きだよ!!」
完ロリが俺に指摘する。ああ、もうそんな事すら判断できないほど、混乱しているのか。
やはり、軽量アルミのドアは俺のショルダーアタックくらいではびくともしなかった。
くそ、もうだめか、2階から見ると俺の想像をはるかに超える有様だった。街に侵入する黒い波、1,000m程先の港の方、その近くの川、その辺りから、街へと浸水域を広げているのが見て取れる。俺は力なくドアの前に座り込んだ。
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