第66話 お誘い2

「リ、リリィさん?」


声が上ずってしまった。


「何? 佐藤君」


可愛いく微笑むリリィさんは、俺の目論見など知らずに無垢に俺を見つめて次の言葉を待っている。


「土曜日の花火大会、一緒に行かない?」


言えたよ。


「花火大会か、いいよ。行こう!」


嬉しそうな年の離れた友人の笑顔に俺はとても、癒された。

水槽の灯りから漏れる全体に青みがかった薄暗い雰囲気の中、夏休みの平日の昼過ぎで、それほど人の多くない大水槽をバックに、小麦色のお人形さんが俺を見つめて、嬉しそうに語りかける。


あー、誘って良かった……


俺の、仕事以外何もない小学六年生の夏休みの絵日記にリリィさんとの花火大会の思い出が書けそうで、年甲斐もなくその日に思いを馳せドキドキしていた。


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