第21話 ラスボス
ウチの学校の五年生にこんな子いたのか、ご、五年生?10歳か?いやちょっと、おかしいだろ?コスプレか?そうだろう?そうだと言ってくれ。
俺は目の前の美少女、百合ちゃんに驚愕の視線をおくっていた。と思う。あまりの大人っぽさに。
「お兄さん、どうしたの?」
百合ちゃんは不思議そうに俺を見つめている。ヤバい、事案になる。俺は、
「ん~、何でもない。釣り頑張ってね。もう帰る」
事案になる前に、もう帰るとしよう。俺はリールをカリカリ巻いて海面を見ていた。
海面から上がってくる仕掛けはまだ見えていないが、太陽を反射するそれは、キラキラと眩しく輝き、俺の癒し済の脳にキラメキを与える。
百合……百合?……LILY……リリィ……
篠塚リリィ……
キラキラ&難読ネームに慣れ親しんだ恩恵か?俺は閃いた。
「篠塚さん?」
俺は隣で竿を上下に揺らして魚を集めている美少女さんに声を掛けた。
「君はもしかして、篠塚リリィさん?」
「そう言うお兄さんは?」
「俺は、佐藤、佐藤健太郎。君の、6年1組の君のクラスメートだ」
俺を大きな丸い薄い茶色の瞳で見つめていた美少女は、
「いや、何? あはははは」
腹を抱えて笑い出した。
「クラスメートって、ははは、そんな、そんなはず、ふっふふ、何か知らないけど、おかしい、ひひひい」
「君は、ずっとクラスに来ていない篠塚さんじゃないのか?」
「何? 先生? 新しい先生? そうでしょう?」
涙を指で拭って俺を見つめている。
「あ~イタタ、サビキの塩が目に」
「ほら」
俺はウエットティッシュを上げた。
「ありがとう佐藤君、クラスメートならいいよね? 君で」
「本当に篠塚さんなのか?」
「多分そう、私は半年、学校を自主休学している、あなたのクラスメートと思われるリリィよ。行ってないから、分からないけど」
おいおい、俺の一周目の悲壮感と比べたら何だこの感じは、まったく陰鬱なイメージを感じさせない健康的な日焼けと、はきはきした、小学六年生にはとても思えない受け答え、大人としても通用するスラっとした肢体と出来上がった美少女顔の造り。これでは、俺のじめじめうつうつな引きこもり生活の真逆じゃねぇか。
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