第10話

「佐藤君」


「はい」


「篠塚さん……は、欠席」


「鈴木君」


「はい」


今日も一日が始まった。

速いものだ、始業式から三週間が過ぎて、明日からゴールデンウイークだ。学校は次の5月や6月に土曜日とか登校することで帳尻を合わせ今年は11連休だ。


ヒャッハー、休みだー。


いや、仕事だ。GWは客の入りが見込めるのでアクセル全開で行く事に決めている。いや、そんな話はこの教室の中で考える事では無い。集中だ。目の前の担任教師の話を漏らさなく聞いて、理解しなければ。


俺は、このクラスに来てから三週間が過ぎたと、冒頭、説明まがいの独白を入れているが、気がかりな事があった。それは、俺の後ろの、出席番号で後ろの篠塚さんだ。俺の知る限り三週間の間、彼女はいつも欠席だ。病気か何かなのだろうか。周りのご学友の話題にも彼女の話題が出ることが無いので伺い知ることが出来ないのだが。少し、気になった……までだ。


「未海さんはGWどこか行くんですか?」


給食のいつものレイアウトチェンジで俺の隣でニンジンが無い事を喜んでいた推しロリさんに話題を振ってみた。


「ん~。ちょっとわからないな~」


儚げな表情をして、まん丸お目目で俺を見つめている。

か、可愛い……ま、まずい、お、おれは、興味ないぞ。ほんとに。


「佐藤さんは?」


「私は、仕事です」


あ!言っちまった。どうしよう、絶対、次に来る質問は、


「何のお仕事してるの?」


ほら、そうなるよね。ホントの事なんて言ったら、PTAに吊し上げ喰らうんじゃないかと、校長先生の満島先生の立場も危うくなるだろうと、俺は懸念して、今まで、その辺はボヤ~とボカシていたのだが、


「え~っと、接客業です」


「せっきゃくぎょう? どんな?」


純真無垢な推しロリは俺の本心など知るはずも無く、遠慮会釈なしに俺の領域を侵食してくる。


「え~っと、リラクゼーションのお店です」


「りらくぜーしょん? って何?」


「え~っと、はいっ、お客様の心と身体をいやすお店です」


「へ~、佐藤さんがやるの?」


俺がやったら、客こねぇよなぁ。


「はい、そうですね。そんな感じです」


ここで、一気にその場しのぎの嘘ファンタジーに俺の真実を軌道修正した。

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