第12話 目覚める弟
私は、イルディンに膝枕をしていた。
イルディンは、私の膝の上で眠っている。とても穏やかな寝顔だ。
心配性な弟は、私の婚約のことが心配で眠れていなかったらしい。それで、かなり疲れていたようだ。
私の膝は安心できたようで、眠ってくれている。これで少しでも疲れが癒されるといいのだが。
「う……」
「あら……?」
しばらく経ってから、イルディンが声をあげた。
その後に、弟はゆっくりと目を開ける。どうやら、起きたようだ。
「おはよう、イルディン」
「お、おはよう……姉さん」
私に言葉を返して、イルディンは体を起こす。
別に、まだ眠ってくれてもよかったのだが、もう膝枕は終わりのようだ。
「姉さん、ごめんね。苦しくなかった?」
「大丈夫よ。長い時間寝ていた訳でもないから、そんなに疲れていないわ」
「なんだか、感覚的にはすごく眠っていた気がするけど、そうでもないんだね」
「ええ」
イルディンが眠っていたのは、数十分である。そのくらいの間で、膝が痛くなったりはしない。
もちろん、多少の疲れはある。だが、些細なものだ。別に、苦しくはない。
「それより、よく眠れた?」
「あ、うん。自分でも驚くくらいぐっすりと眠れたよ」
「それなら良かったわ」
イルディンは、ぐっすりと眠れていたようだ。
先程の言葉も、それを表している。長い時間眠っていた気がするというのは、眠りが深かったということだ。
それなら、本当に良かった。これで、イルディンの疲れが少しでもとれたら幸いである。
「姉さんの膝の上は、本当に落ち着くよ」
「それは当たり前ね。小さい頃から、慣れ親しんだ膝だもの」
「……そういえば、小さい頃もよくこうしてもらっていたね」
「ええ、随分と久し振りだったけど、嬉しかったわ」
イルディンに膝枕するのは、これが初めてではない。
小さな頃に、疲れた弟を癒すために、よく膝枕をしていたのである。
その頃に慣れ親しんでいるので、イルディンが安心できるのも当然のことだろう。
「最近は、膝枕して欲しいなんて言わなくなっていたものね」
「それは、そんなことは簡単に言えることではないし……」
「別に、遠慮しなくてもいいのよ。私の膝が空いている時に言ってくれれば、好きなだけしてあげるわ」
「いや、それは流石に……」
私の言葉に、イルディンは困惑していた。
少し大人になった弟にとって、姉に甘えるようなことを言うのは少し恥ずかしいのだろう。
それなら、私から誘うことにすればいいのかもしれない。今度から、イルディンが疲れているようなら、声をかけてみよう。
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