第5話 話し合うべきこと
婚約破棄が決まってから数日後、私とイルディンは、お父様に呼び出されていた。
この数日、お父様は婚約破棄についてエーデイン家と話し合っていたはずである。恐らく、その話し合いに何か動きがあったため、呼び出されたのだろう。
「……今日お前達を呼び出したのは他でもない。アルメネアの婚約破棄に関することだ」
「ええ、わかっています」
私が予想していた通り、呼び出されたのは婚約破棄に関する話をするためだった。
お父様は、少し浮かない顔をしている。ということは、婚約破棄に関する話がこじれているということなのだろう。
「ガルビム様は、自身の浮気については認めているそうだ。元々、他の人間にもばれていたらしく、隠すのは難しいと思ったのだろう」
「そうなのですね」
「だが、それでも、婚約破棄はしないで欲しいと言っているようだ。一度でいいから、アルメネアと話す機会を設けて欲しい。そう言って聞かないようなのだ」
「なるほど……」
どうやら、ガルビム様は私と話したいようだ。
もしかして、そこで謝れば許してもらえるとでも思っているのだろうか。だとしたら、とても愚かなことである。直接会っても、私の意見は絶対に変わらない。何を言われても、許すつもりなどない。
「お父様、私がはっきりと断ってきます」
「お前なら、そう言うと思っていた。向こうの空いている日程は既に聞いている。お前が望む日に行って、決着をつけてくるといい」
私は、ガルビム様の元に行く決意をした。
話したいなら、存分に話させてもらおう。はっきりと断り、決着をつけさせてもらえるなら、こちらとしても望むところだ。
「姉さん、僕も同行するよ。彼が何かしてくるかもしれない。姉さんを守れる人が傍にいた方がいいだろう」
「イルディン……」
「イルディン、お前ならそう言ってくれると思っていた。アルメネアのことを頼む」
「任せてください、お父様」
イルディンは、私に同行することを申し出てきた。
確かに、ガルビム様が何か変なことを考えているかもしれない。誰かに同行してもらった方が、より安全だろう。
それがイルディンなら、猶更安心だ。この頼りなる弟は、私にとって一番信頼できる人である。一緒に来てくれるなら、とても心強い。
「さて、話はまとまったな。アルメネア、かつて反対していた私が言っても信じられないかもしれないが、どんなことがあっても、この婚約は破棄する。だから、安心していていいぞ」
「ええ、わかっています」
お父様の言葉に、私はゆっくりと頷く。
こうして、私とイルディンは、ガルビム様と話し合うことになったのである。
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