第22話
「おお…… 結構な経験値だな」
「うん、私もレベル上がったのか分からないけど力が強くなってきた!」
「お…… おぉ…… マジか…… 」
俺もだけど
しかし、
…… 俺、
「ヒロ!私ちゃんと倒せたかな?ふふふ」
おふぅ…… ゲップ…… あぁ緊張してゲップ出たわ胃酸がヤバい。
返り血を浴びニンマリ笑う幼女…… 周りにはグチャグチャなトロール…… あ!あ!ギュッとしようとしないで!?レベル上がってるんでしょ怖い!心の準備を!準備…… ぎゃーーっ!
撫でて?いやいや!腕が曲がったらダメな方に曲がっているから撫でられないよ!ヒョコー…… ヒョコーヒョコー…… 助けてまた息が…… 確かにレベル上がってるね。助けて。
「…… リーナちゃんは回復魔法まで使えるのかえ?」
現実に戻った爺ちゃん4人はトロールの遺骸をヒョイと避けながらこちらに歩いて来た。
その質問に俺の治療をしながら笑顔で
「うん、キミら3人はちょっと規格外かのぅ」
「魔法に力に回復にアイテムにおかしな事がありすぎて解剖したいぐらいじゃ」
おい!ちょっとヤバい事を言うなよ魔道具爺!
…… しかしどうしようか。
「…… 動いてないし立ちながら死んでるんじゃね?」
「む、いや動いている。ただ体が大きすぎて息をしているのが分かりにくいだけである」
うーん、今の戦闘でも動かない事あるのか?魔物だろ?…… なんだろ?カバかサイみたいな魔物だな…… もちろん、顔はめっちゃ怖いし体はやたらと大きいけど。
しかしホントでかいな。顔だけでも自動販売機を縦(たて)に3機積み上げたぐらいの大きさがある……
…… 前言撤回、なんだあれ怖い。見れば見るほど怖くなってきたぞ。
自衛隊の大きな船を見た時のような怖さがあるな。巨像恐怖症(メガロフォビア)が少し入っている俺としてはスグに逃げるべきと脳内にアラームがガンガン鳴りだしたわ。
「うむ…… 」
「たしか文献にも…… 」
「見た目も伝承の通りじゃ…… 」
「しかし…… 神話レベルの話じゃぞ」
おー、爺ちゃんは何か分かるみたい。
さすが知識人…… てか、この爺ちゃん達って話し合いの時に円陣組むよなぁ…… 甲子園球児みたい。
「話し合い終わったみたいですし、逃げますか?」
「…… ヒロ君、逃げの一手で進めると後々の災難になるやもしれんぞ?」
「いやだって…… あれデカすぎますもん」
「ヒロ君、厄災が外の世界に放たれたら逃げても意味がないんじゃよ?」
え?世界に厄災?
あの超怖いカバかサイか分からないのが世界を終わらせるの?
狼狽(うろた)える俺に対して魔法爺は、あの巨大な魔物の名前を言う。
「あれは…… ベヒモスという神が作りし存在である」
陸のベヒモス
海のレヴィアンタン
空のシズ
信仰爺ちゃんが言うには、その三体が神話にある怪物だという。
あれ?ゲームで聞いた名前だな…… ひょっとして地球で使わなくなった魔物や生物を女神様もらってきてるとか?
なんか考えるのをめんどくさがりそうな女神さまだったもんな……
しかし…… ベヒモスか…… あれはさすがに倒せないんじゃね?
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『いやーおばちゃん助かるわぁ』
「さ…… さようですか」
えっと…… あの、ベヒモスさんって凄く温和でした。
地球で人は顔で判断したらダメだと教わってきたんだけど、程度があるでしょ?と心の中でツッコミを入れる。
…… 時間を遡るんだけど俺たちは恐る恐る、ベヒモスに近づいたんだよ。俺なんかスグに逃げられるように[隠密]使って殿で歩いていたよ。笑うがいいさ!
自分大事!命はあと二つ!
でさ、風化した都市を歩いてたどり着いたわけ。
ベヒモスのいる辺りだけ都市区画がまるまると湖沼(こしょう)に変異していて葦(あし)やら雑草に覆われていた。
もともと、湖畔があった所にベヒモスが住み着いて地盤が沈下したんだろうか?
とにかく、ベヒモスはそこでヌボーっとしていた。
お湯に浸かるカピパラのように、それはそれはヌボーっと。
地下だし、太陽の光っても擬似だから全然に寒いんだけど…… 水の中にいて大丈夫なのかよ?
「…… あの、水に濡れて寒くないっすか?」
「!?ちょっ!ヒロ君!?」
なんか目の前に来ても悪意がないベヒモスに毒気を抜かれたから、普通に話してみた。
『あら?あらあら!トロールじゃなくて、ちゃんと人間じゃない』
「う…… うっす。人間です」
俺の声を聞くとパッと目に光が灯るベヒモスさん。
信じられないという俺たちの顔を、ギロリとした目で見つめベヒモスは朗らかに会話をし始めたのである。
…… 怒ってないんっすよね?めっちゃ顔怖いんですけど…… あ、すみません傷付けるつもりは…… はいすみません…… 痛っ!
ここでベヒモスさんの考察だけど数千年前の話…… この都市でバカな召喚術者連中が戦争の為か、何かの欲の為か、ベヒモスさんを[彼方の場所]から召喚したそうだ。
もちろんベヒモスのサイズを考えて広い場所をとっていたらしいけど…… ほらベヒモスさんってメッチャ大きいから。
集団で魔力を出し合い召喚!
想像以上にベヒモスさん大きい!
召喚用の施設キャパシティオーバー!
ベヒモスさん、施設を突き破り召喚完了!
…… というケアレスミスが発生。バカだなぁ……
バカな召喚術者達はベヒモスが顕現すると共に押し潰されて爆裂死。
ベヒモスさんは急な呼び出しと、急な召喚術者の死という不具合に挟まれて元にいた場所に還れなくなっちゃったらしい。
ついでに、ベヒモスさんがいた彼方の場所にはベヒモスさんに依存していたトロールもいて巻き込まれてこの場所に召喚され……
トロールは狩りやすい人間を殺しては食べてを繰り返して廃墟になったそうだ。
ぐるるるる……
え?怒ってるの?ベヒモスさん?いきなり喉を鳴らさないでと焦っていたらバタバタとベヒモスさんが焦り出す。
うっわ質量が凄いから地面が揺れてるわ……
ぐるるるる…… くきゅ〜……
『わ!わ!恥ずかしい!』
ベヒモスさんのお腹が鳴る音だった。
召喚されたはまあ仕方ない、けど、ここにはベヒモスさんが食べる物が無かったようで冬眠のようなスリープモードでボケーっと無為に過ごしていたそうだ。
何千年も無為に生きるって凄いね!
「ねぇ、ヒロ可哀想だよなんとかならない?」
「え?えぇ〜っ……
まさかベヒモスさんのケアまでするとは……
お前の肉だぁぁぁ!とか言われないかドキドキしていたけど、これも肩透かし。
聞いてみるとベヒモスさんったら草食動物でした。
『あぁ〜彼方の場所…… 私が住んでいた所ね。そこの沼地に育つラランツの草がまた食べたいわぁ…… 魔力をふんだんに吸い上げて育つから美味しいし、あまり食べなくてもお腹い〜っぱいになるねよねぇ』
…… ストレージにありました。ラランツの草
[ラランツの草]人の踏み入れられないほどの場所
そこに生い茂る雑草
ベヒモスの糞で成長促進する。
ある意味、自給自足ですねー。
自分の糞で育つ飼料…… これはベヒモスさんには言えないな…… 。
咳を一つ。気を取り直しドサドサっとラランツの草をストレージから取り出す。
山盛りになってるけど…… 食べられるよね?
「…… はい、ラランツの草ですよー」
気分は飼育員!
『わ!わ!ラランツの草だぁ〜!」
喜びながら食べるベヒモスさんを微笑ましく見る俺と
もちろん学者爺ちゃんと
目の前のベヒモスさんのせいで脳の処理が追いつかなくてフリーズしているだけです。
しかし……
「ヒ…… ヒロ様…… 」
「な…… 何ですかいきなり?」
さてベヒモスさんに水でも用意してやるかとしていると信仰爺ちゃんから様付けで呼ばれる。
「ベヒモスを従える…… つまりヒロ様は聖人様であられるのでは…… とこの爺が愚行しましたが」
「いえいえ!ちゃいます何でですのん!?」
これには
どうやらベヒモスは神話では[選ばれた者・聖人]の供物…… つまり食事になるらしい。
え?って顔しないベヒモスさん
「俺、ベヒモス食べない!」
「いやしかし…… 」
「だいたいおかしいでしょ?ベヒモスを食べた文献もないのに何で決定してるんですか!?」
全く馬鹿馬鹿しい…… つまらない憶測でいらん事になったらいよいよ逃げないといけないじゃん!
とりあえず疑いは晴らすべき!ベヒモスさんを[鑑定]!
ベヒモス [豊穣の加護あり]
神の作り出した地球の怪物であり傑作。
選ばれし者の食べ物。
…… あわあわわわわ…… マジで食べ物じゃん!
あと女神様…… やっぱり地球から攫(さら)って来てるじゃん!なにしてんの!?
一応…… 俺、女神様と地球の神様にお目通りしてるから…… 選ばれし者のカテゴリーに入るのか…… ?
チラリとベヒモスを見る。
うん、無理!これは食べられないよ!なしなし!
「俺は選ばれるとか全く無いので!そこはよろしくお願いしまーす!!」
精一杯、そう叫んだ。
おいおい信仰爺、膝をつくな!
ベヒモスさん『少しなら食べても』とか言うんじゃありません!
全く!散々だ!
筋肉・幼女・爺ちゃん・ベヒモスとホントなんなの!?
俺は美人のお姉ちゃんと知り合いたいだけなのにー!!
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ベヒモス
<i538178|25380>
カクヨムでは画像挿入出来ないみたいです。
ロールプレイングゲームでよく登場するベヒモスですが、ドラゴンで描かれる事がたまにあります。
旧約聖書ではカバなんですよね。とても大きな。
これはウィリアムブレイクという有名な人が描いたベヒモスを見ながらダラーっと描いたものです。
こんな感じかーと思って下さい。
食べるとかありますが、ガチでベヒモス食べるらしいですやだー
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