第20話
学者お爺ちゃんはそれぞれの分野の
魔法
魔道具
宗教と俗世
帝国院での実務などは全て後進に道を譲り、今はこうした調査の指示が国からあればその時だけ動くという
便宜上分かりやすく魔法爺
「もし、遺跡探索で死んだとしても貴族老齢年金の口減らしという意味もあるのじゃ」
魔道具爺
「いや、縁起悪いぞ、まだ見たい物や触りたい魔道具もある」
信仰爺
「そうじや!こうして歳をとり知識は得た、しかし未だ神の元に辿り着くには早いでな」
マテ爺
「そうじゃ!そうじゃ!早よ死ぬのは嫌じゃ!あ、そこの壁に埋まってるのは紅玉(ルビー)じゃな」
昼の食事のステータス回復の恩恵か色々な事を喋りながら道を行く。それぞれ面白い杖をつき腰は曲がっているが健脚、健脚。御老公よろしい限りで。
「ほほほ!先程の食事で体が軽いわい!」
「あんまり急いだらダメですよー」
「そうじゃな!よしよし、飴玉をやろう」
苦笑しながら歩いていると気温がさらに下がる。いつの間にか緩い坂道を下り深いところに来ていたみたいだ。
「…… これは…… 」
新発見区画の奥に辿り着いて見上げる。
「デケェ扉だな」
7階建てのビルぐらいの高さの扉がそこにはあった。
まだ崩されていないみたいだけど…… どうなんだこれ?人の往来を阻害しまくりじゃね?
「そうじゃヒロ君。ここが行き止まりと報告を受けている石扉(いしど)じゃわ…… これは…… 確かにフェイクかのぉ」
パカーッと口を開けて眺めていると魔法爺が髭を撫でながら話す。
フェイク…… 偽物か。
権威を示す為の見せかけなのか?ホントに?
とりあえず、荷物を出してくれという事でストレージから爺ちゃん達の研究道具を取り出す。
「しかし…… ヒロ君のストレージはたくさん入るのう…… どうじゃワシの弟子にならんか?」
「いえいえいえー自分は学がないので遠慮しますよーえへへ」
馬車いっぱいに積んでいた道具をストレージに入れたのは失敗か?…… あ、ストレージ内にも今出したのと同じ爺ちゃん達の研究道具あるわ。こんどメモとか読んでみよう!
そこから数時間、現地調査が続いているんだけど…… どうやら芳しくない。
確かに、あの扉って岩を削った石工(いしく)職人か芸術家の技っぽいもんなぁ…… あれだロダンの地獄の門みたいな感じ?
「おつかれ様です。少し休憩して下さい甘いの出しますからね。」
テンションが上りきりヘトヘトになり出した爺ちゃん4人をストレージから取り出したテーブルセットに案内する。
砂だらけ埃だらけだからさ…… 絨毯がダメになるからね!
へコーってな具合でお爺さんたら気落ちして可哀想な感じに。
「甘いのはいいのぅ」
「ほほ、久しぶりの体力仕事じゃな」
「うむうむ、糖分が実に良い」
好好爺なんだよなぁ。ホントに有名な偉いさんなのかというぐらいまろやかな爺ちゃん達だ。
あらあら、お髭にクリームつけちゃって…… 寝ちゃダメよお爺ちゃん。
「ねえ!爺ちゃん達、どれぐらいここにいるの?」
「リーナちゃん、そうじゃなー…… 2日はせめて、ここで調査したいのぅ…… 」
「いいんじゃない!?ヒロ!泊まる用意とか大丈夫?」
俺は
「むぅ、なんならあの石の扉を破壊してみましょうか?」
「筋肉さん、それには及ばんよ。今回は調査じゃてなホホホ、破壊しての侵入は次回になろうて」
「む、筋肉さん…… 」
「しかし、それでも少しは成果を出さねば皇帝陛下に合わす顔が無いのう…… 」
笑い爺ちゃんからしょぼーん爺ちゃんへと急降下。
ちょっと可哀想…… 。
「ヒロ、なんとかなんない?」
「ん?
…… あ、ストレージ内にこの遺跡の全ても入っているわ。ちょい調べてみるか…… あれ?
学者4人と
「ヒロ君…… 旅人ワールの旅の日記を読んだのかい?」
「え?ええ、暇な時に…… 読んだ事ありません」
魔法爺は目を細め、魔道具爺はすかさず俺の後ろに回り込む。フーッと大きく息を吐くマテ爺、天を仰ぐ信仰爺。
「むう、ヒロ…… 嘘と話をはぐらかせるのが下手…… であるな」
「そうじゃのう…… ヒロ君。さすがにワールの名前を聞いて大人しくできんのじゃよ…… 学者に旅人ワールの旅の日記の事を隠すはな…… 誣告(ぶこく)は罪じゃぞ?」
誣告(ぶこく)って何すかー!?
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「…… こ、これがワール氏の…… 」
「凄い…… 目次(コンテンツ)からして恐ろしい情報量じゃあ」
「女神様の考えや生活まで…… 」
「まてまて!ナゼに最近になって発見された鉱物の仕様がここに書かれておるのじゃ!?」
えーっと、夕食の後に爺ちゃん達にたかられて出しましたよ旅人ワールの旅の日記。
ちなみに何冊かあるうちの一番に汚れているヤツね。綺麗なのは俺が使っているから!
まぁ、アレだよ騎士さん達は皇帝直轄の部隊だから他のテントに入ってもらい、爺ちゃん4人が泊まるテントの中でバサってあの大きな本を出したわけです。
「ちょ!騒がないで!旅人ワールの旅の日記はナイショにしたいんだから!」
「おお、おお、そうじゃった。皆よ静かに我ら知識の父、ワール氏の善知識を楽しもうぞ」
「「「うむ!」」」
だから静かにって…… 聞いちゃいねぇな爺ちゃん。
しゃあないので、そっとしたまんまでテントを出る。
「ヒロキ、どうなっているだろうか?」
「うん、オモチャに群がる子供みたいになっているよ」
「
「うむ、我らのテントでもう寝ておる」
「はは、子供か」
ずずーっと茶をすする。
すんません行儀悪いっすね睨まないで下さいよ
ライチのような果物を乾燥させたフレーバーティーなんだが…… 少し渋いな。失敗した。
パチリと焚き火が跳ねる。
この遺跡は風が通る…… というか墓荒らしで穴だらけになっているから酸素は大丈夫。大丈夫だよね?うん、
「ヒロキ、あのだが、私もその」
「大丈夫だって、まだ何冊かある」
「う、うむぅ、何冊かあるのであるか。ここまでくると恐ろしさすらあるな」
旅人ワールの旅の日記を読みたそうにしてたもんな。てか、そんなになの?
「ふーっ…… 騎士2人は寝ているのか危機感がない…… まあ良い。ヒロキ、旅人ワールのどこまでを知っているのか?」
「ふぇ、いや知りたい事を書いている本の作者としか」
はぁ…… と息を吐く
あれ?馬鹿にされている?
まぁ、馬鹿にされるのは当然でした!
旅人ワールの旅の日記…… それはエルフの中でも
まず、世界には女神があり、それを補佐する為に寿命を極端に長くもつ種族エンシェントエルフを作った。
神はこの世界を作る全てをエンシェントエルフに見せ考えを共にして、そしてよくよく対話をした。
世界が形になると女神は人間やエルフなどを作り出し地上に送り、エンシェントエルフは女神と共に神界に残った。
ただ、変わったエンシェントエルフもいた。
─────それがワールだった。
ワールは世界を何千年と旅をして、それを日記としてまとめた。
…… 女神がこの世界で初めに作ったエンシェントエルフの寿命はエルフより遥かに長い、しかしながら地上に降りた生物はエンシェントエルフでも寿命をもつ。現世での永遠の命を女神が認めなかったからだ…… そんなワールが死せる前に女神が迎えに来たのだ。
「マジかよ」
「うむ、ワールは老いた時に教会に保護されている。女神様のお迎えも記録に残っている事実である」
あの女神さんやるじゃん。
…… というか、お菓子や食べ物の事をワールさんに調べさせていただけとかじゃないよね?…… まさかね?
「うむ、うむ、それでワールは女神様に言った「この日記は人にも知るべき事があります」とな。女神様はその場で魔法によるかは分からないがワールの日記を本にして教会に預けたのだ」
ああ、あの女神様だもんなテンパっちゃったんだろうな旅人ワールの旅の日記とか『旅』の字が重複しちゃってるもんな。
「ヒロキ、なぜ持っている?」
「まぁ、いいじゃん」
「むう、で、あるか…… 」
とりあえず、
騎士2人…… 仕事しろよ。
しかし…… ワールめ!
お前のせいで俺は隠密で恥をかいたんだからな!
…… とワールのせいにして忘れられない恥の思い出をフラッシュバックさせるのだった。
いや、俺のせいなんだけど…… いや、いや、あぁ……
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