第10曲 シリウスの心臓
タイトル:「シリウスの心臓」 作 傘村トータ 歌 ヰ《い》
ジャンル:J-POP
URL:【 https://www.youtube.com/watch?v=UKZt1vq8bKI 】
曲構成:A-S-A-S-※/S-※/-S あるいは A-B-A-B-S/B-S/B
皆さんはYoutubeをよく見るでしょうか。私はめちゃめちゃ見ます。
そんなときに、絶対立ち塞がってくるのが「広告」です。
私の場合、
しかし、ごくごくたまに、広告によって新しい曲と出会えることがあるのです。私の経験上、それは二回ありました。
一つは
そして、もう一つが今回ご紹介するこの曲でした。
①シリウスの光
この曲は傘村トータさんが作り、ヰ世界情緒さん(?)が歌っています。彼女はお情という呼称もあるようで、花譜さん同様「神椿スタジオ」に所属していらっしゃるようです。
傘村さんは第2曲目で紹介した「晴天を
というより、私的には「晴天を穿つ」のようなアップテンポの曲の方がレアなんじゃないかと思うくらいです。
さて、そんなこの曲、最も言及すべきであろうところは、聞いたことのある方なら「あそこね」と察しが付くことでしょうが、もう少し基本情報を見直そうと思います。
シリウスは星の名前で、ベテルギウス、プロキオンとともに冬の大三角形を構成しているらしい。おおいぬ座の一等星で、太陽を除けば地球で見える最も明るい星です。以前紹介させていただいた、「カノープスが落ちた夜」のカノープスよりも明るいとか。曲中には出てこないですけれど、一応そういう星です。
②明かりになったあなたの心臓は
この曲のサビ(あるいはBメロ)は「明かりになったあなたへ」から始まります。そして途中に言葉を
この部分に注目したいと思います。
一番では、あなたの心臓は「点滅するかしら」。
二番では、あなたの心臓は「凍らずいるかしら」。
三番では、あなたの心臓は「赤く光るかしら」。
最後には、あなたの心臓は「点滅するかしら」。
この曲においては、後述する理由で「点滅」という現象が大きな意味を持ちます。
この曲に一人称はありませんが、ここでは私としておきます。
この私は、「あなた」を思っているわけですが、恐らく「あなた」はここにはいない。遠くにいる存在だと想定されます。解釈次第だと思いますが、ここではこの世にいないとした方が自然かもしれません。「明かりになったあなた」と繰り返されていますからね。タイトルも考慮して、あなた≒(=)シリウスとしてもいいかもしれません。
さて、そんなあなたの心臓は「~するかしら」と問うているわけです。
ここの意味については、結構難しいと思っています。とくに「赤く光るかしら」ってなんなのか……(ここについては④を参照ください)。
そこは各々の解釈にかませるとして、次に一ブロック目(「明かりになったあなたへ~」の部分)を考えると、段々と距離が近づいて言っているようにも思えます。
一番では、
二番では、
三番では、
「会う」ためには、あなたに「届く」ことが大前提となりそうですし、「届く」ためにはあなたの方へ「飛ぶ」ことが前提となりそうです。
もしだんだん近づいているとするのなら、最後の最後に一番同様、「会えるまで待っていて」としているところが悲しく思えます。まるで全てが夢物語だったかのような。そんな気持ちにさせられます。
では、会うことも、届くことも、飛ぶこともできない私が、「あなた」に何をしているのか。
それが、曲構成であげた※の部分です。
③他に例はある? モールス信号の出現
この曲が変わっているのは、曲中にモールス信号が使われているということです。
それも楽器や旋律として使うんじゃなくて、歌唱部分として使われているんです。
それが何を表しているかは、実際動画のコメント欄などを見ればわかるので、ここでは
(https://www.benricho.org/symbol/morse.html)
↑はモールス信号の解読が出来るサイトです。動画のコメント欄を見たくないという
さて、さきに「点滅」が重要になってくると言いましたが、それはこういう理由からです。
「崖の上のポニョ」で宗助がお父さんの船に信号を送っていた場面を想像すればわかりますが、モールス信号は、点滅(トンとツー)によってやりとりをします。だからこそ、私は「あなた」の心臓が点滅するのを切望しているのです。
こんな曲、他にあるんでしょうか。モールス信号を歌ってしまうという曲が。
作詞した傘村さんの技量には頭が下がりますし、違和感なく歌い上げたヰ世界情緒さんの歌唱力も驚きです。
④シリウス再考
ここで話を終えようと思っていたのですが、シリウスについてもう一度確認したところ、興味深い事実が分かったので、付記して終わりにします。少し長くなっていますが、もう少しお付き合いいただければ幸いです。
シリウスは、どうやら二つの星からなっているそうなのです。
明るすぎてか遠すぎてか、肉眼では一つに見えますが、シリウスAとシリウスBからなる星です。
で、このうち、シリウスBは先に寿命を迎えて、現在は
一方のシリウスAはまだ主系列星、若いと言っていいのかわかりませんが、少なくとも終わりの姿ではない。
この歌、もしかしたら、この二つの星の歌かもしれません。
「凍らずいるかしら」という部分については、今後のシリウスBが辿っていく未来を表しているように見えます。というのは、シリウスBは内部に熱源がないため、今後は長い時間をかけて冷やされていくらしいのです。
「赤く光るかしら」という部分については、赤色巨星という、主系列星と白色矮星の間にある期間を表しているかのようです。
Bはもうこの時期を超えてしまいました。一方Aは、これから突入していくことになります。
それらを踏まえるとこの曲はまた別の見方が出来ます。
例えばシリウスAが、死に向かうBを思う歌に。
例えばシリウスBが、自分と同じ未来を歩んでいきそうなAを思い遣る歌に。
例えば「私」と「あなた」の関係を、 AとBとの関係に仮託した歌のように。
いずれにしろ、両者を結びつけているのは星の点滅です。
こういう曲をエモいというのかもしれませんね。
今回は感動のあまり、3000字になってしまいました。
ここまでついてきたいただいた方、ほんとうにありがとうございます。
ただ、いつもと同じですが、あくまで一つの解釈なので、鵜呑みにはしないでください。
この曲を聞くと、星空の見え方が変わるかもしれません。そんなことを感じた次第です。
今回はここまでとして、また次の曲でお会いしましょう。蓬葉でした。
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