第5曲 夜撫でるメノウ

タイトル:「夜撫でるメノウ」 Ayaşe 

ジャンル:ボカロ 初音ミク

URL:【 https://www.youtube.com/watch?v=2sHKKjeKfVM 】

セルフカバー ver 【https://www.youtube.com/watch?v=ZLBUxmIWTa0 】

umi さんver 【 https://www.youtube.com/watch?v=hpqnu4dOmLk 】

柘榴 さんver 【 https://www.youtube.com/watch?v=uU4oiwTsANA 】


曲構成:(In)-C/A-B-S-A'-B'-S/C-S-Ou


 Ayaseさんは、今となってはとても有名な方ですよね。YOASOBIの作曲・作詞を行っている方です。そういう意味では、今までで一番有名な曲かもしれません。

 超有名曲「夜に駆ける」に、半年以上先行して公開された曲です。あくまでAyaseとして出されたもので、YOASOBIとしてではありません。

 なお、ここで、「夜に駆ける」の曲名を出したのは、客引きのためではありません。


 私は、この「夜撫でるメノウ」は「夜に駆ける」の原型だと思っているのです。



①概要

 曲のテーマは、ざっくり別れの曲でしょう。

 遠距離恋愛なのか、その点は判然としませんが、二人の間には距離があるような印象を受けます(別れの曲なので、心理的な距離があるのは間違いありませんが、物理的ニュアンスが入っているのかどうかは不明です)。少なくとも住居を同じくはしていない(冒頭「終電はもうないよ」、2番最後のサビ前「終電前のホーム(にいる)」と言っているということは、終電で帰る場所があるという事)。


 しかし、それなりに昔からの間柄であるとは言えるでしょう(1番Bメロ「あの頃は子供だったねと……」より)。ただし、言葉通り子ども時代からの関係とは言い切れません。上の歌詞は、「あの頃は若かった」という、大人の方の常套句に非常に近いものと想像できるためです。

 そうなると、高校生とか、大学時代とか、それくらいからだって別に構わない訳です。ただ、一つ確かといえそうなのは、ここからはのニュアンスが感じ取れるということでしょうか。


 どのように聞くかはもちろん人それぞれと思います。

 私自身は、次の部分が核になっていると思っています。


 すなわち、「さよなら」の前に、「ありがとう」と「ごめんね」を伝えることです。

 

 2番Bメロ(サビ前)にて、その部分についての言及があります。ありがとうとごめんねを伝えられなかったことによって「こんな」結末を迎えた、と。どう見てもいい意味ではなさそうですよね。


 この直後に「ごめんね」が出てきますが、「遅すぎた」と言っています。


 そしてもう一つの「ありがとう」に関しては曲の最後に出てきます。「最後の言葉になるけど」ありがとうと伝えて、曲が終わります。


 

②終電の意味

 ここでは、やや蛇足感は否めないものの、終電の意味を記しておこうと思います。

 

 終電があることはあまりいい意味で使われることは少ないでしょう。

 文学部らしく、以下に類例を記しておきます。


 もう終電に間に合うように送るようなヘマはしない 

               back number 「世田谷ラブストーリー」

 最終便きみは乗る ぼくを置いてって 

               想汰「いかないで」

 

 あるいは、みきとP「東京駅」などもそうです。

 

 終電があるということは別れを示します。つまり、相手(あるいは自分が)家に帰ってしまうわけですから、当然です。


 では、「夜撫でるメノウ」の場合はどうか。

 実は、両パターンあることがわかります。

 

 冒頭では「終電はないよ」といって始まります。一方、最後のサビの前では「終電前のホーム」が出てくる。つまり、「終電がある」わけです。 

 

 そうなると時間差を想定しないといけないかもしれません。

 上記の終電原則(終電がある=マイナス、終電がない=プラス)から行くと、冒頭部分は曲全体の別れのニュアンスとは逆行していると想定できるためです。

 終電がなく変えることができないから、自分の家に誘い、ともに過ごした夜があった。「二人で」「迷い込んだ」過去を示唆しているように見えるわけです。


 ただし、時間軸がどう動いているかは、とても難しい問題ですので、少なくともここでは言及は避けたいと思います。

 

 

③タイトルの意味

 そしてもう一つ、この曲の難しい所はタイトルでしょう。

 

 メノウというのは、石の名前です。漢字だと「瑪瑙」。石の断面が馬の脳に似ているからつけられたとか。

 で、石にも石言葉というものがあり、概ね人間関係を修復するような意味があるようです。

 が、別れの曲であることを考えると……ちょっと違うようなという気もします。

 

 例えば歌いだしが現在で、それ以降を全て過去とするような曲、つまり、失恋の危機を乗り越えた曲という解釈であれば特に問題はないですが、ちょっと無理があるような気もします。

 

 それに、メノウに関連するような、あるいはそれを示唆するような言葉(指輪とか、石とか、宝物とか)が歌詞中に見られないような。

 とするなら、あまりメノウに結び付ける必要はないのかなあ……と思いますね。


 RADWIMPS「me me she」(そのまま読むと「女々しい」に見える)の如く、メノウを「me now」として、「夜 撫でる me now」なんてしてみても面白いですが、流石に飛躍している気がします。


 なんなら、「夜撫でる」の方もなんとも難しい感じですし。語呂はいいですけどね。「よるなでる」。メノウと併せて母音だけ取り出すと「ou aeu eou」で言葉の全部が「u」で終わるわけで、頭には残りやすいかもしれません。

 

 

 一番考えられるのは何か小説をもとにしているということです(「夜に駆ける」も「ハルジオン」も、小説を曲にしているものです)が、それならもう解釈の余地はないですね。


 

  




 さて、最後に私が「夜に駆ける」の原型と思っている理由ですが、簡単に言うと、曲を聞けばわかります。


 特に2番のAメロ。タイトルにした「わざとらしく萎れた空気 少し息が震える」のところです。


 まだ聞いたことのない人は、多分びっくりすると思います。

 

 

 Ayaseさんの曲は、「なんか似てるけど新しい」という印象を強く受けます。

 ファンがたくさんいるというのは、そういうところもあるのかもしれませんね。

 

 少し長くなってしまいましたが、今回はここでやめたいと思います。


 また次の曲でどうぞ。


数時間後の自分より。Ayaseさんの新曲が出ましたよ。



  

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