第14話 魔法騎士の初陣
「レンドール・ボーフォード選手!闘技場入り口までお越しください」
「とうとうあなたの番が来たわね」
「ああ。俺が1次予選突破をすればいい区切りになるな。いってくる」
「お気をつけて、レムさん」
レンドールは闘技場入り口まで来ると、深く息を吸い、鼓動の高鳴りを抑えるように、深く息を吐いた。
そして光の先の闘技場へ視線を送る。後は自分が1次予選突破をするだけ。まあ…しかし、それは考えないで戦いを楽しもう。
扉が開かれた。同時に風が吹いているのか、彼の長い銀髪が踊るように揺れた。
そして異国の銅鑼が高らかに鳴り響いた。
「試合開始!」
レフェリーの試合開始の声と共にあの青藍の狩人ドンポラススが現れた。鋭い爪、軽快なフットワーク。しかし売りはこれだけだ。
彼は左手に拳銃を握り弾を装填すると、皆を楽しませる為に装填した弾を魔法弾にした。
機械的な拳銃から、空気を凍てつかせる氷の弾を発射した。
「おい!あの拳銃、魔法を撃ったぞ!」
「ただの拳銃使いじゃないね、何者なんだ?」
氷の魔法弾を連発しながら、身体を動かすことを忘れない彼は、そのまま挑発するように撃つのをやめてドンポラススを挑発した。
右手で「おいで?」みたいに手招きする。怒りを覚えるドンポラススはそのまま一気にとびかかる。しかし、紙一重で回避する。そしてまた今度は雷撃弾を撃った。
甲高い鳴き声を上げてドンポラススは倒れる。レンドールはとどめの必殺技を出した。
「トリニティレイヴン!」
3連発のパワーショットでドンポラススを倒した。
すぐさま2回戦に突入する。氷の息を吐く氷結の鳥竜ギスアドノス。
ギスアドノスは檻から解放された途端に、周囲の空気を凍てつかせる氷の息を吐いた。
それを軽くいなすと背中に背負ったままの剣を取り出し、一気に加速装置を使って間合いを侵略した。加速装置イクシード。一説には重力すらも操るという特殊装置だ。
ブラッドクロスはそのイクシードを搭載しているギミック武器である。腕力の低さをテクノロジーで補うのだ。
彼がまるで飛ぶように間合いを詰めると観客は度肝を抜かせる。
「何だ!?あの間合いの詰め方!普通の騎士じゃねえ!」
「あの選手、何者なんだ?!」
周囲の観客は”彼は何者なんだ?”という言葉が出ている。戦いをするレンドールはそのまま剣に炎を纏わせる。しかもテオとは違い魔力で直接剣に火炎を燃やしたのだ。
「フレイムダンス!」
火炎の舞いを披露するように瞬速の速さでギスアドノスを切り刻んだ。まだ彼の顔には余裕が見られる。まるで舞を楽しむように薄い笑みを浮かべ艶やかに剣の舞を披露する。
ギスアドノスが弱点の炎と斬撃で悶える。そのまま左足で蹴り飛ばすととどめに左側の拳銃に魔法弾を装填して焼き尽くした。
「いいものをくれてやるよ!」
ギスアドノスが叩きつけられた壁に火炎の魔法弾を撃つとそのまま壁に焼き跡だけが残って消し炭になってしまった。
真上で観戦する人々は真っ黒な炭になってしまったのを思わず確認する。
「何にも残ってない、炭だけだ」
「すげえぞ。今までの選手よりも」
ラスト3回戦。イーオドススが颯爽と駆けてくる。赤い鱗に毒々しい紫色のトサカを持つ狡猾な猛毒使い。
先制攻撃はレンドールだ。左側の拳銃で魔法弾を撃ちこむ。氷の魔法弾だ。世間ではアイスバーンと唱えられる魔法である。
周囲の空気が一気に凍り付く。イーオドススが氷に閉じ込められて、極寒の寒さにさらされる。レンドールが指をパチリと鳴らすと氷が弾けて刃となりイーオドススを切り刻む。
一気に怒りを覚えたイーオドススが狂ったように毒液を吐きまくる。それを回避するが、だんだんと壁際まで追い詰められてしまった。
チャンスとばかりに逃げ場を失うレンドールにとびかかる!レンドールは壁を蹴りムーンサルトでイーオドススの背後を取ると、背中に収めた剣で抜刀術を披露した。
「
直撃したイーオドススの身体にまるで桜の花びらのように傷口から血が舞いそして瞬間、イーオドススは絶命した。
最後の技のあまりの美しさと残酷さに、目の前で戦うこの選手に皆は魅了されたように闘いに見入ってしまった。
一瞬の沈黙の後、大歓声が闘技場に響いた!
「カッコイイぜ!旦那~!」
「今度の試合も旦那に賭けさせてもらうぜ!」
「すげえよ!ファンになったぜ!旦那!」
早くも1次予選でファンを獲得したレンドール。レフェリーは高らかに宣言した。
「レンドール・ボーフォード選手!1次予選突破とする!」
レンドールは戦いで乱れた長い銀髪を闘技場に吹く風に揺らしながら、観客たちに手を振り、控室へと消えていった。
彼が控室に帰ると仲間と、同じく1次予選を戦う選手たちが寄ってくる。
レンドールはその様子に、少しだけ心構えをする。
「凄いな、旦那。何者なんだ?」
「どこにでもいる
「どこにでもいる?…そうには見えないな。あんたはどうやら少々警戒しないとならないな」
「……?」
「なまじ良い戦いを見せると、運営から酷いカードの対戦を貰う羽目になる。まあ、せいぜい気を付けることだな」
確かに調子に乗り過ぎた戦いだったかな…と思うところがあるレンドール。
だが、そんな不安も仲間のおかげで吹き飛ぶ。
「凄い戦いだったよ!さすが、レム!」
「本当、
「これで全員、1次予選突破ですね!」
「だな。よーし、どうせここにいても仕方ない。さっさとここから出て酒場へ向かおう」
自分達の戦いが無事その日は終わったので、彼らは
レンドールの心にはだが…一抹の不安が確かによぎっていた……。
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