頼まれたものを買い忘れても言い訳するな!
人は愛ゆえに信じる事ができるが、愛ゆえに疑う事もある。
買い物完了。今日はカレー。
生卵をつけたいが先日マナー違反であると指摘されたので本日は我慢。未購入。トッピングなしのスタンダードな食べ方でいただく事にする。しかし卵……卵……卵つけたいなぁ……
っと、後ろ髪引かれつつ帰宅である。スーパーまで五分。往復十分。近いけど割としんどい。休日の買い出しってなんか、ね? でもまぁそれでも、作った料理を美味しいと言ってくれるのであればなんでもないですよって。さぁ玄関がちゃり。リビングの扉を開けますよっと。
「ただい……」
「下妻氏」
「うわぁ!?」
背後から声掛け案件! なんや!? っと、なんだ……彼女ちゃんじゃないですかやだなぁもう。脅かさんといてーや。
「どうしたの。そんな所につっ立って」
「買い物」
「え? あぁうん。してきたけど。買い物」
「買い物。頼んだ。私。頼んだ」
「……」
「カビ取りスプレー。頼んだ。部屋用カビ取りスプレー頼んだ。下妻氏。確認してほしい。そのエコバッグの中に、私の頼んだ部屋用カビ取りスプレーがあるかどうか」
「……」
ない。
そんなものはない。
そう。忘れていた。すっかり忘れてしまって、買い損ねてしまったのだ。いやぁやらかしたやらかした。
だが、馬鹿正直に「忘れてしまっタンバリン。許しててクレーメル」なんて言った日には恐らくエラい事になるだろう。なんとか言い逃れねば……よし、あの手で行くか。
「ごめん! 売り場に無かった!」
たった一つの冴えたやり方。なかったものは買えない。こればかりは仕方ない。俺自身に落ち度はないのだから責めても仕様がないという心理に持ち込む初歩的なテクニック。初歩が故に効果は絶大。なにせ売ってなかったという証拠がなければどうしようもないんだからなぁ! さぁ。許してもらうぞ!
「下妻氏。これ見て」
「うん? スマフォ? 写真か。なにこれ」
えーっと、なになに……室内用カビ取りスプレー。ホワイト忍者……
「下妻氏が出ていった後、私も後をつけて観察していた。商品はあったのに、下妻氏はカレーの食品をカゴに入れ、卵のコーナーで十分程度悩み、そのまま会計へいった。スプレーのコーナーには足を運ばず。食材だけ買っていった。この事実について問いたい、いや、先に述べた虚偽についても併せて聞かせていただくたく」
え~~~~~~そんな事ある~~~~~~~~~~? 彼氏をつけるとそんな事ある~~~~~~~~~?
やないどうしよう。怒ってる感ある。えぇ~~~~~~誤魔化しきれない~~~~~~~腹くくるしかない系~~~~~~~~~? やだも~~~~~~~~~でも悪いのはおれだしなぁ……しゃあない。素直に謝ろう。
「……ごめんなさい。忘れてました」
「はぁ~~~~~~~~~~下妻氏~~~~~~~~~そういうとこ~~~~~~~~~~~~そういうとこやぞ~~~~~~~~~~~~~? 忘れるのはいい~~~~~~~~~しかしそれを隠すなど小賢しいにも~~~~~~~~小賢しいにも程がある~~~~~~~~~~お主~~~~~~~~それでも日本男児か~~~~~~~~~~~~~?」
「すみません……あの、そのスプレー使って今から掃除するんで、許してください」
面倒だが、機嫌を直してもらわないと厄介だ、仕方ない。ここは俺がカビを取ろう。
「え? ないよ? スプレー」
「え? 買ってこなかったの?」
「うん、ネットの方が安かったし」
「……じゃあ俺、忘れててよかったやつじゃ……」
「結果論で許しを請うな!」
「すみません……」
本日のQ&A
Q.買い物忘れたくらいで起こらないでほしい……
A.怒っているのは忘れた事ではなくちゃんと謝らなかった事だと思うぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます