欲しがる物を制限するな!

 物の価値というのは、欲する当人にしか分からないものである。




「下妻氏―オタマトーン。オタマトーン欲し-」


 いつもの藪から棒である。オタマトーンねぇ……確かに可愛いけども。


「楽器弾けたっけ?」


「大丈夫―毎日練習すれば弾けるようになるー日々の積み重ねが大事―」


 あ、これ絶対やらないやつだ。買って三日で飽きる奴だ間違いない。でもそれを指摘すると絶対怒るから言えない。でも無駄なもの買ってほしくないなぁ……服とかならまだしも玩具だろ? そんなもん使わなくなったらどうするんだ。


 よーしここは遠回しに拒否ろう。そもそも今でも部屋が物で氾濫しているんだ。これ以上無用の長物を置いておくスペースなどない。


「いいけど、最初は動画とか見てからにしようよ。それでできそうなら買おう」


 ナイス提案。これはもう完全に理解のある彼君ムーブですわ。


「お前、私に買わせないようにわざとそんな事を言っているな?」


 おいおい瞬殺だよ。勘が鋭いってレベルじゃねーぞ。


「そういうの私分かるー動画見せて、あ、これ無理だ無理無理。って言わせたいのが明白―だが残念だったな! すで遅い! 私はもうに買ってきているんだよ! オタマトーンを!」


「……ならなんで、欲しい。なんて言ったの?」


「お前の愛を試してたんだよ!」



 軽く殴られた。

 ちなみにオタマトーンは一週間で飾りになったが、無事彼女ちゃんの姪が引き取り毎日演奏風景をYouTubeに上げている。




本日のQ &A


 Q.彼女の無駄遣いをやめさせたいんですが。


 A.それくらい許す度量と甲斐性を持て。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る