美容の話を適当にするな!

 殊、美容については彼女の心理を隅の隅まで読み切らなければならない。


「下妻氏―下妻氏―髪を切ってきたのだけれど―」


 知ってるよ。美容室行くって出ってたんだから。


「本当にー!? どれ、俺の美人ちゃんはどう変身したかなー!?」


 正直相手をするのも面倒くさいがテンションで誤魔化そう。こんな事で一々関係を悪化させたくはない。


「下妻氏の美人ちゃんはーこう変わりま・し・た! どう? 似合う似合うー?」


「うん! もう最の高! 傾国の美女とはまさにこの事だなー! いやぁ前漢じゃなくてよかったー滅びちゃうもんなー国が」


 教養のあるナイスな褒め殺し。これで機嫌よく今日という一日を過ごしてくれるだろ……え? 何その顔。めっちゃぶーたれてる。めっちゃぶーたれてる!


「はー下妻氏はー私の心を分かってくれない―」


「え? 何? どういう意味?」


「この髪型は失敗―できれば直したいがもう長さ的に無理―テンションがガチしょんぼりの状態なので慰めて欲しかったのだがー下妻氏は似合うというー。なんなん? なんなんそれ? それなんなん? なんなんなん? それそれなんなんなん?」


 えー……だったら悲しそうに帰って来いよ……といっても仕方がない。とりあえず挽回を試みよう。


「いや、でも! ほらさ! 元が! 元がいいから! 元がいいから何でも可愛く感じちゃう! もう凄い! 凄い素敵! 素敵さの権化! いやぁ美っ人やなぁ! もう日本代表! 美しさ日本代表に任命しちゃう! よ! ナショナルグッドルッキングガール!」


「下妻氏」


「はい」


「適当言うのも大概にしとけよ?」


「すみません……」




 とりあえず愚痴を聞いて、一緒に別の美容室を探した。









本日のQ&A




 Q.彼女が散髪に失敗したようです。どうしたらいいでしょう。




 A.無暗に肯定すると逆効果だが「似合ってねーな!」なんて死んでもいうなよ? 空気を読んで臨機応変に対応しろ。

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