不用意に推すな!

 推しを公表していれど不用意な発言は慎むべきである。






「ないわーなさすぎるわーなんなーん? なんで彼女の目の前で女優べた褒めするーん? ありえんわーありえなさすぎるわー」


 テレビに出てた推しに「いやぁ可愛い」と言っただけで咎められるとかありえなくない? それともこれが普通なんだろうか。だとしたら男女交際とはなんと窮屈だろう。そりゃ少子高齢化も進むわけだ。

 しかし如何に異性といえど同じ人。語ればきっと分かり合えるはずである。ここは話し合いにて解決をしたい。そうだ。言葉を交わそう。本来であれば相手にするのも馬鹿らしい事案だが、寛大な心をもって対処しよう。あぁ、俺はなんと理解のある彼くんなのだろうか。


「ごめん。何度も言ってるけど彼女は推しで……」


「推しであればー彼女の気持ちを無視してー他の女を褒め称えていいというのかー否ーいいわけがないーあり得ぬ所業ー本来であれば考慮すべきー心推し量るべきー兎にも角にも彼女が1番であるべきーにも関わらずーなんたる無神経ーデリカシーなさすぎて概念が崩れかけているー愛という名の概念がー崩れ去りつつあるー愛ってなんだー分からないー愛が分からないーくだされー私に愛をくだされーなにとぞーなにとぞー」


「そうは言っても推しと彼女は別カテゴリだし……」


「はー私と推しとは次元が異なると仰るーディメンションーアナザーディメンションー比べる事もおこがましいとーそう申すかーなんたる冷血漢ーこれは紛れもないDVー精神的DVに他ならないー」


 駄目だ話にならん。不本意だが仕方がない。さっさと謝っちまお。


「分かった分かった。ごめんごめん。今後は表立って推すのはやめるから勘弁してくれ」


「それは浮気ー卑劣なる裏切り行為ーはーなーんにも分かってない。下妻氏。貴方はクソだ。いい加減にしてほしい」


 うわ、結構マジなトーンになってきた。正解が分からんまま拗れそう。面倒くせぇなぁ。いいやもう。丸投げしよ。


「じゃあどうすりゃいいんだ」


「自分で考えていただきたい」


「……」





 どうすりゃいいんだ。









 本日のQ&A


 Q.彼女の前で女優を推すのは駄目でしょうか。


 A.駄目に決まってんだろ。

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