下妻氏と彼女のQ&A
白川津 中々
同じ話を二度するな!
雑誌によると同じ話をされた際、初めて聞くようなリアクションを取ると人は喜ぶらしい。
なるほど確かに「もう聞いたよ」というより「さすがしらなかったすごいせんすある」とベストグッド愛想スマイルを返した方がコミニュケーションは円滑に進む気がする。機会があったら試してみよう。
翌日。
「ねぇ聞いてよ下妻氏! この前オフ会した金剛力士像君がさぁ……」
あ、この話前に聞いたな。金剛力士像くんの前科の話だ。はっきりいってそんなに面白い内容でもないので「2回目です」とノーセンキューを突き付けたいところだが、しかし。他ならぬ彼女ちゃんのスベらない話である。聞きたくはないが聞かねばならぬし、何よりいい感じでシクヨロしたく候。ここは前日読んだあの雑誌のテクニックを使う他ない。
「と、いうわけでロシア大使館から追い出されてゲームオーバーってわけ。下手すりゃ国際問題だよね。ウケる」
よし終わった。
「へっえぇぇぇぇぇえ!? なにそれバカウケなんですけど! フォカヌプゥ!」
決まった! こんなん誰がどう見てもファーストイヤー。まったく自分の演技力にたまげてしまうな。主演男優賞まったなしだ。
「……ふーん」
「……うん?」
なんだその反応。まさかバレた!? 俺の演技!?
「この話するの、2回目なんだけど」
なんだ違ったよかったバレてなかった。いやよくない。なんか怒ってるぞ。なんでや。
「下妻氏って、私の話ちゃんと聞いてくれてないんだね。なんかガッカリ」
「いや、ごめん。俺も実は覚えてて……」
「はっあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあ!? なにそれ!? じゃあなんで初めて聞いたみたいな反応するわけ!? 騙すつもりだったの!?」
「いや、そんなつもりじゃ……だいたい騙したのはそっちじゃ……」
「騙したんじゃないですぅ! 測ったんですぅ! 下妻氏の愛の深さを測量したんですぅ! そしてはい結果はっぴょぉぉぉぉ! 判定は! はいドン! 出ました愛情不足! ぴえん。もう無理別れよ……」
「え〜……」
こいつ本当にこういうとこ! が、ここは俺が折れねばなるまい。正論の刃で叩き斬るは容易いがそれでは問題の解決にならん。クソメンドイが対話せねばならぬだろう。とりあえず、正直に伝えるか。
「ごめん。実は雑誌に、好きな人が同じ話をした時は初めて聞いたようなフリをすると愛情が深まるって書いてあって……」
好きな人とか愛情云々とかいう部分は嘘だが、ま、方便である。
「……」
「……俺、もっと好きになってほしくて……一緒に愛を育みたいなって……」
「……」
「ごめん。許してほしい」
「下妻氏……」
お、手応えあり。ちょろいわこいつ。
「いや、雑誌に影響されるとか女子中学生か。だいたい愛を育みたいってなんだよプリキュアか?」
「……」
「お前は愛の前にまず人生とリアルな女心を学べ!」
「……すみません」
その後、なんやかんやで仲直りしたが、財布から英世が5枚消えた。たっけぇなぁピエール・マルコリーニ。
本日のQ &A
Q.彼女が同じ話をしてきたらどうしたらいいですか?
A.笑って流せ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます