山生活5年目


今日は久しぶりに鳥を焼いている。別に毎日でもいいのだが周辺環境をなるべく変えたくないので偶に食べるようにしている。

捕まえ方は簡単だ。

鳥を見つける、気配を殺して近づく、気配を全力で出す、鳥ビックリして一瞬硬直する、捕まえる。

な?簡単だろ?

ポイントは3メートル圏内に近づくことと、一瞬の硬直を見逃さず素早く跳躍して捕獲することだ。まぁ、たまに失敗して飛び立たれるけど飛び立ってすぐならまだ追いつけるから問題じゃない。


そういえばちょっと前に大きな地震があった。今までに経験したことのないような凄い揺れだった。家の周辺は無事だったが、少し離れた所ではかなり大規模な土砂崩れなんかも起きていた。


そこから少し環境が変化したらしい。いつもなら見ないような動物が家の周りをウロウロしてたり見たこともないような生物を見かけるようになった。新種?みたいな生物も見かける。


その地震のあとからだが修行の方にも変化があった。

日課の巻藁1万回をしていたらいつもより力が漲っていて速さも力もこれまでより向上していた。

もしやと思い気に集中すると全身から力が溢れてきた。

座禅の方も今までよりはるかに気をコントロール出来ていて技のイメージも今までより遥かに鮮明にできるようになっていた。


これはもしやと思いこの前できた技(気拳)を水辺へ行き放ってみると、前はかすかに水面に少し波がたった程度だったのに対し、今では大きな石を投げたかのような水しぶきが上がる。

毎日川にやってきては気拳、気拳と叫びながら一心不乱に水面に向かって拳を突き出していたかいがあった。



技はいくつかできていたのだが、そのすべての技の威力が上がっていた。



治癒術も覚えた。と言うよりこれが覚えたかった一番のメインの技だったりする。気のコントロールがより鮮明になったあの日から怪我を治すイメージも追加した。

大きな怪我はまだ無理だが、小さな怪我程度なら掌をあて気を送り込むよう集中することで、10秒ほどで治るようになった。



俺は竈横の収穫物を貯める貯蔵庫から山菜とネギを取り出し焼き鳥に付け合わせて食す。

やはり焼き鳥は美味い。タレなどはないが素材の味が生きている。

焼き鳥を食しながら俺は確信めいたものを感じていた。

ついに仙人の入口にたったのだと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る