山に籠って幾数年世界は変わったみたいです
ロコロコキック
山籠もり開始
突然だが皆はかめは○波を撃ちたいと思ったことは無いだろうか?
他にも螺○丸や霊○、波動○など、漫画やアニメでよく目にする必殺技。
僕は思った。
あのカッコいい主人公たちから放たれる未知の力。
派手で、強く、見るものを魅了してやまないとてつもないまでのエネルギー。
いつまで子供見たいな夢を見ていると笑うだろうか?
でも、少なくとも僕は思ったんだ。この世界にはまだまだ解明されていない不思議な力がたくさんある。だから、必死こいて頑張れば、何か1つ自分だけの必殺技が撃てないかと。
なぜ僕がこんなことをいきなり思ったかと言えば、簡単に言おう。
現実逃避である。
自分で言うのもなんだが僕は恵まれた環境に居たと思う。
父親がいて、母親がいて、妹がいる4人家族。
親父は会社のお偉いさんらしくかなり裕福で、母親もヨガ教室を開くなどアグレッシブで、子供を2人も産んでいるとは思えないスタイルも抜群な近所でも有名な美人ママ。
妹も中学3年ながらにその美貌を引き継いだのか、通う学校のみならず付近の学校でもファンクラブが出来る程の人気ぶりだ。
僕は空手を習っていたが、とりたてなにかあるわけでもなかった。強くもなく弱くもない。大会に出ても順位は真ん中付近。
でも、それでも良かった。
幸せな家庭があり、自慢出来る家族がいて、学校でも普通に友達がいて、何1つ不自由のない生活。
それが僕の全てだったし、今までがそうだったように、これからもこの先もずっとこの当たり前の景色が、未来が、世界が続くものだと思ってた。
人は、幸せであればあるほど、絶望が深くなるのだそうだ。
幸せだった生活の歯車が狂いはじめたのは妹が通う中学で起きた事故だった。
後でわかることだが当時妹は学校では当然のように上位カーストのグループに属しており、それを妬ましく思う女子が多数いたようだ。
その妬ましく思う女子の中に彼氏持ちの子がいたらしんだけど、妹に心奪われたからと別れ話を持ち出されたらしい。
当然その子の怒りは妹に向かい、放課後仲間の女子らと連携し、誰も見てない状況で階段から突き落としたらしい。
最初はちょっと脅す程度のつもりだったらしいが、あまりに派手に転び落ちた妹を見て怖くなったらしく、仲間と共にその場から急いで逃げたとか。
結局妹は階段から落ちて見回りの先生に気づかれるまでの3時間、その場で倒れていたらしい。
その後病院に運ばれて命は助かったものの、脊椎損傷によるダメージが大きいらしく、今後寝たきりの生活を余儀なくされまた、意識が覚めることも無かった。
そこからは早かった。
親父は学校側に対して抗議し、犯人探しと賠償責任を要求。
もちろん警察にもすでに連絡済みだ。
しかし学校側はだれも目撃者がいない事と証拠などが無いことから事故だと断言。
確かにカメラなんかがあるわけでもないし、皆が往来する廊下や階段で証拠なんかが見つかるのは確率が低いのかも知れない。
だけど、その後の学校側の対応や生徒らへ向ける反応などを見るに、大事にしたくないのは明らかに見えてとり親父との溝は更に深まり泥沼化。
親父は一歩も引かず戦い続けた。
仕事や家庭を顧みないで娘の為に戦う親父は見る人にとってはとてもカッコよく映るのであろう。
最初は共に戦っていた母親も連日のように押しかけるメディア、マスコミに段々と疲弊していき、当然のようにヨガ教室も人がいなくなり、更には親父が家庭を考える事も無くなっていった為鬱になったのだろう。
大量の薬を飲みそのまま…
親父はそれでも戦った。
よく、戦ったと思う。
普通の一般人が世の中の理不尽に対してよく戦ったと思うよ。
でもそれは、あまりにも犠牲を払わなくちゃやっていけない事で
戦い続けて、家も、家族も、仕事もなにもかもをなくした男は
力尽き、母親の墓の前で座ったまま、眠る様に息を引き取っていた。
僕はそんな家族を、世の中を、世界を最初から見ていた。最初から見ていたが何も出来なかった。
当時高校1年だった僕はあまりに無力だった。
その後罪の大きさに気づいて耐えきれなくなった女子グループの一人が白状し、そこから芋づる式に出てきた彼女達は泣いて謝っていたが、正直それはもうどうでも良かった。
学校も辞めて、必要な物を買い、大人達の説得も無視して
多額の賠償金と家を引き払ったお金で親戚に病院で寝たきりの妹を任せて
僕は、いや自分は俗世を捨て山に篭もる
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