第83話 エミリーとの交信成功

「ノン、今まで騙してゴメン。隣にいるニコルが本物の『N』なの。真菜はサクラとして死んでもらった。ノンに抱かれるのは、嫌で仕方なかった。


 その醜い顔とお別れ出来ると思うと嬉しくて。もう充分楽しんだでしょ。ノンはこれから死ぬまで精神病院の隔離室で過ごすの。早く死にたければ自殺をすれば良いわ。それじゃあ永遠にさようなら。」


~~~~


「ノン、起きて!!ノン!」


「ウ、ウウッ。」


「ノンってば!コラッ、起きろノン!!」


「ハッ!ワッ!夢?」


「ノンが変な夢を見始めたからドキドキしたよ。あたしがノンを裏切るわけ無いじゃん。悲しくなるから変な夢見ないでね。朝ご飯出来たよ。今日は納豆と目玉焼きだよ。顔洗って、歯を磨いてきなよ。」


「夢か……」


 俺は最悪の夢を見て、咲に起こされた。


 先日のエミリーの会見後、テレビ局の太田さんから続編を撮りたいとの依頼が入っていた。俺達の存在はこのテレビ局しか知らず、独占状態だ。今、咲をマスコミに登場させるのは危険と判断して、太田さんには保留にした。


 咲と真菜は、アメリカにいるエミリーとコンタクトを取ろうとしていた。それは容易い事だった。エミリーに心の声を使い日本語で話しかける人は限られているからだ。アメリカ人に取り囲まれているエミリーに日本語で話す者はいない。


 これはエミリーの作戦でもあった。


 先ずは咲がコンタクトに成功した。自分は黒猫として産まれたと自己紹介をした。突然のコンタクトに、エミリーは大喜びで号泣したらしい。そして真菜もコンタクトに成功した。人間として産まれ、天の神様からの霊力により、三毛猫として啓示を授けてもらっていると自己紹介をした。


 三人はすぐに意気投合した。


 霊力は咲が抜きん出ていた。エミリーは他人に霊力を授けられる事を知らなかった。心の声のルールがあり、男にはオンリーパートナーを除き、霊力を授けられない事を説明した。


 問題はどうやって三人が対面するかだ。エミリーには自由が無く、二十四時間監視されていた。真夜中の祈りもテレビカメラで録画されていた。のこのこアメリカに行けば、確保されそうだ。


 咲はしばらく心の声だけでエミリーと交流を深める事に決めた。


 そして俺の存在が、クローズアップされる事になる。何故エミリーが日本語が分かり、ターゲットの「N」が日本語しか分からない事を知っていたのか?


 そのからくりは天の神様からの啓示だ。日本語の分かる霊力を授けるので、「N」の心の声を聴きなさい、と言うモノだ。そして「N」をターゲットとして地球人類に愛を広めなさい、と言うモノだ。


 咲の思惑通りの展開に、真菜は大喜びだ。世界中に産み落とされた命達も、基本的に日本語と母国語が分かるらしい。咲の懸念していた言葉の壁は、天の神様の啓示により解決されたのであった。


 咲は真菜と共に、俺の家を拠点にして世界地図を広げ、一つ一つの国にアプローチしていった。しかし返事が返って来ない。どの命達も自分が生きる事で、精一杯なのだ。一つ間違えると、命が無くなる。


 死と隣り合わせの中、生きているのだ。


 咲は時期尚早と判断して、「TEAM JAPAN」の活動に専念した。問題はこの俺だ。エミリーの話だと「N」の心の声を聴きなさいと言う事らしいが、俺の心の声を聴いてどうしようと言うのか?咲も真菜も普段通りで良いという。その方が「N」らしく無いし、ごまかせると笑った。


 咲は水晶占いを再開した。毎日、女子達に霊力を授けた。

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