第68話 新年を迎えて
元旦の朝、ベーコンエッグを焼く良い匂いで目が覚めた。
「ノン、明けましておめでとう。ご飯を食べたら神社に初もうでに行こう。今年は勝負の年だから綺麗に厄を払って貰おうね。」
「おめでとう。真菜とか『TEAM JAPAN』とは挨拶したの?こういう時って心の声って便利だよね。」
「うん、もう挨拶は済んだよ。真菜が気にかけてるから声をかければ?」
(真菜、明けましておめでとう。)
(はい!ノンさん、明けましておめでとうございます。今年も真菜を愛して下さいね。四日は駅に朝八時に待ち合わせで良いんですね。海鮮丼楽しみです。)
(おすすめは大トロ丼だね。俺もいろんな店で大トロ丼を食べてるけど、この店が一番旨いね。真菜は食べた事ある?)
(無いです。咲さんは有るんですか?)
(あたしも無いんだよね。ノンは食べ物に結構うるさいから、きっと美味しいんだろうね。楽しみだよ。)
(一時間以上待つと思うけど、その価値があるから楽しみにしていてね。勉強頑張れ!じゃあね、愛してるよ、真菜。)
(うーん、嬉しい!受験が終わったら一杯真菜を愛して下さいね!真菜もノンさんを愛していますよ。それじゃあ四日に!)
俺をジッと見つめる咲。どこか寂し気だ。
「何だか良い感じだね。ノンはあたしと真菜のどちらか一人を選ぶとしたらきっと真菜を選ぶんだろうね。あたしは野良猫で歳を取るのも早くて、直ぐにお婆ちゃんになる。お婆ちゃんになったあたしは、ノンに抱いてもらえなくなる。そして捨てられるんだ。」
俺はソファーに座り、咲を抱き寄せた。
「そんな考え咲らしくないな。俺は咲を命の恩人だと思っている。咲と出会えていなければとっくに自殺して死んでるよ。セックスだけが愛情表現じゃ無い。俺は咲がお婆ちゃんになってもそばにいて欲しい。一緒に歳を取り、死んだら一つのお墓に入ろうよ。良いだろ、咲。」
「うぇーん!約束だよ。死んだら一つのお墓に入るって。あたしにはノンしかいないんだからね。」
咳を切った様に泣く咲。俺は咲の頭を優しく撫でた。
一息ついて、二人で神社に初もうでに出かけた。さすが日本で三本の指に入る神社だ。参拝するのに三時間かかった。真菜にあげる合格祈願のお守りを買い、咲とおみくじを引いた。
二人とも「凶」だった。
咲がもう一度おみくじを引きたいと言うのを止めた。大吉だろうと、凶だろうと日々心を込めて生きれば良い。結果は後から付いて来る。
お腹が空いたので、屋台の焼きそばと、たこ焼きを一つずつ買い二人で分けた。今年は良い年にしたい。
咲の予想だと梅雨明けくらいには、世界中に生まれた霊力を持つ命達の動きがあるらしい。そうなれば忙しくなる。
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