第25話 消えない自殺願望
麻雀が終了すると、俺は家まで歩いて帰る。
体がきつく、歩くのがつらくなる。死にたいと考える。俺の自殺願望は消えない。咲が言っていた俺より先に年老いて死ぬという言葉が頭から離れない。
死後の世界の存在も気になる。永遠に一緒だと咲は言うが、霊力など無い、生まれつきの「みつくち」と統合失調症と言う障害を持つ俺には何も理解出来ない。ただ自然に身を任せ生きるしか無いのだ。
家に帰ると元気に咲が出迎えてくれる。「麻雀楽しかった」と、笑っている。二人が出会い、どれくらいの日を過ごしてきたのだろう。
いつも通り風呂に入ると、夕食が準備されている。咲は俺の嫁さんでも無いし、恋人とも違う。俺は夕食を済ませ、自叙伝の続きを書きながら咲の存在意義を考えていた。
咲は時々、ドキッとする言葉を話す。今日も俺が自叙伝を書くのが行き詰まり筆を止めると咲が話出した。
「ノン、自分の責任には臆せずに真正面から立ち向かうの。ノンは自分の人生の書を、自分の筆で書いているのよ。書いたものは消せないの。ごまかす事は出来ない。自分で自分を裁くのよ。摂理は決まっていて、改められる事は無いの。あたしはノンを愛してる。だからノンもあたしを愛して。寿命が尽きて魂だけになってもあたしはノンを愛してる。」
俺はセックス=愛だと考えていた。いつもマイナス思考で、いまだに自殺願望がある。俺の心の方程式は常に、生きる=苦、だ。
そんな俺を見て咲は語り続ける。
「ノン、首をうなだれてはだめ。後ろを振り向いてはいけないわ。前を見るのよ。過去のページはすでにめくられ、二度と元へは戻せないの。生命の書は常に新しいページをめくる事なの。その日その日の為に生き、昨日の為に生きてはいけないわ。明日刈り取る収穫の種を蒔くのは今日なのよ。」
咲の言葉が俺の心に痛いほど突き刺さる。
午後九時になり就寝時間になった。咲は寝巻きを着ている。今日はこのままマチルダに戻らず咲として寝るらしい。初体験以降、俺は咲を抱いていない。
今日はまだ月曜日だ。明日も気合を入れて作業所通いだ。
部屋の灯りを消して二人でベッドに入ると、咲が自分の腕を差し出して、それを枕にして寝ろと言う。言われるがまま寝ると、咲の胸が俺の顔に当たる。左手を伸ばし、寝巻きの下から咲の乳房に触れるとドクドクと鼓動が響く。
「赤ちゃんみたい。」と咲がつぶやく。
目を閉じると俺は眠りについていた。
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