第22話 初体験
午後五時になると、夕食の支度が始まる。
咲は俺の作る夕食をジッと見つめ、子供の様に隣について離れない。
「ノンの必要な人間になりたいの。あたしはその為なら何でもするわ。」
咲が目に涙をため半ベソになり懇願している。
俺は、咲に夕食を作る仕事を全て任せる事にした。咲との絆はどんどん強くなって行く。重い責任がのしかかっている気がした。
夕食を済ませ、咲が後片付けを終えると、珍しくマチルダに戻らない。発情期が来ると言う。咲にも性欲があるらしく、大人びた女の色気を醸し出す。
俺が自叙伝を書き出すと、咲はどこから買って来たのか、透けた白いネグリジェを着ている。ノーブラで下着だけ履き隣に座っている。
「ノン、あたしの心の準備は出来てる。早く一人前の女になりたいの。ノンに抱かれる運命なのよ。あたしに女の喜びを教えて。そして二人で……」と言い泣き出した。
以前、咲が俺を見捨てるのでは無く、俺が咲を見捨てるのだと言っていたのを思い出した。俺は覚悟を決め、咲を抱く事にした。
俺の心を察知した咲は全裸になり、先にベッドに横たわった。俺の心を咲は聞いている。ベッドに入ると咲の肌は、まるで絹の繊維みたいにきめ細かく触れるとサラサラする。ドクドクと心臓の高まる音が伝わってくる。
咲の顔を見ると、目をパッチリと開け俺を見ている。目が合うと、にこりと微笑んでいる。どうやら俺の方が緊張している様だ。
優しく愛撫すると、咲の声が大きくなり二人は一つになった。初体験は無事終わった。
そして咲は自分の運命を話だした。
「ノン、あたしは天の神様のお告げで寿命は三十年らしいの。ノンが今、五十二歳だから生きていれば、八十二歳になるね。普通の猫だと、十歳で人間の六十歳に相当するみたいだけど、あたしは特別みたい。人間の三倍の速さで年老いていくと言われているの。だから三十年後の咲は、九十歳を超えるわ。年齢を重ねる度にノンに近づくという事になる。最後はノンの歳を追い越してお姉さんになるのよ。そしてノンに看取られて死んでいくの。それからノンにも死が訪れ、お互いに聖霊となり再会する……」
咲の話は突飛過ぎていて俺にはよく分からない。要するに咲が俺より早く歳を取り、先に死ぬと言う事か。それにしても三十年で九十歳とは凄いな。
話を終えると咲は、透けたネグリジェと下着を着けた。俺もトレーナーを着て二人は布団に潜り込んだ。咲は満たされた顔をしている。
「どうだった?」と聞く俺に、「痛く無かった。恥ずかしいよ。」と答えた。
明日の日曜日は、久し振りの桜田教会で、初めて咲を連れて行こうと決めていた。
俺は目を閉じ眠りについた。
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