第23話 咲の礼拝初参加
翌日、俺が目を覚ますと咲は朝食を作っていた。あの透け透けのネグリジェのままだ。
「おはよう、ノン。朝はベーコンエッグとご飯だよ。今日は桜田教会に初めて連れてってくれるんだね。楽しみだよ!」
何だか新婚カップルみたいで、新鮮な感覚だ。俺は、顔を洗い歯を磨き、咲の作った朝食を食べた。服を着替え、二人揃って桜田教会に向かった。教会に着くと咲が怯えだした。
「参加者の邪念が凄く強く感じるの。それを受け入れている牧師さんを尊敬してしまうわ。あたしを見る目が怖いの。まるでレイプされている気分だわ。」
実際に体験すると、俺を通じて感じるモノとでの違いが明らかになったらしい。「帰ろうか」と、言う俺を制して咲は受付を済ませ教会の中に入った。プログラムと献身の袋を受け取り席に着いた。
献身は二百円ずつ入れた。時間になり礼拝が始まる。
すると、怯えていた咲が急に元気になり賛美歌を一緒に歌い出した。牧師の説教に耳を傾け、うんうんとうなずいている。咲にとって、イエス・キリストは愛そのものであり、尊敬する師であり、聖書は生きる教科書だと言っていた。聖霊を体で感じ、礼拝は弱い人達を導こうとしている。
咲は、キリスト教会は初めての体験だ。咲は強くなりたいと願った。短い人生を天の神様に捧げ、自分を神様の道具としてお使いくださいと祈った。
この日は、聖餐式が行われた。キリストに見立てたパンとぶどう酒を頂くのだ。
最初にパンが一人、一切れ渡された。俺と咲の前に来ると何故か素通りしてパンを頂け無かった。俺の後ろと横の椅子に座るホームレスらしき人たちもパンを持った女性が素通りした。牧師の合図でパンを一斉に口に運んだ。
次はぶどう酒を配り出した。これも俺と咲の前を素通りした。牧師が祈りを捧げ、ぶどう酒を受け取った者達は一斉に口にした。俺も礼拝に参加するのは五回目だが、聖餐式があるのは初めてだった。
俺は、何だか除け者扱いされた感じがして気分を害した。牧師からは何も説明が無く、次の献身に移った。
俺は納得出来なかった。洗礼を受けていないからだろうか?それともお金が無いからだろうか?聖餐式は礼拝のメインだろう。
礼拝が終わり、食事会の準備に入ると、咲が俺の気持ちを察して「ノン、食事会は出ないで帰ろう。」と言い手を引き出口に向かった。
帰り道で俺が落ち込んでいるのを見て「聖餐式なんて、ただのパフォーマンスだよ。パンとぶどう酒なんてキリストの代わりにはならないわ。桜田教会だけじゃなくて、他の教会にも行ってみようよ。きっと良い教会があるはずよ。」
俺は咲の言葉にうなずくと家に向かった。
桜田教会は入信を無理に勧める事も無く、献身の要求をすることも無く俺は気に入っていた。後から調べると、桜田教会の聖餐式はキリスト教信者以外受けられない事を知った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます