一話・魔法の1歩④
ウィッチマ国は真ん中に大きな建物があり、外側は大きな壁に囲まれた国になっている。出入口は、二つあった。それも左右にではなく、上下だ。下は両商人や旅人が通る出入口となっており、上はホウキに乗った魔法使いや魔女が通る出入口となっているらしい。下の出入口より上の方が通行量はすごく多かった。流石は魔女と魔法使いの国、普段の移動はホウキをよく使うのだろう。それにしても、三角帽子を被った女性…いや、魔女をよく見るな。
僕たちは、入り口の門をくぐる。もちろん、下の出入口からだ。僕たちは少し歩き、門の近くにあったカフェで一休みをする。
「すごいね!本当にホウキで飛んでいる人がいるよ!」
ウィッチマ国内にも多くの魔女がホウキで飛んでいた。ホウキの後ろに大量の荷物を置いて運ぶ魔女や肩掛けカバンに手紙を詰めた郵便の魔女までホウキを使って空を飛んでいる。
ウィッチマ国の情報は、本である程度調べてきたつもりだ。しかし、実際に見るのは初めてだ。大体のホウキは、ゲームの主人公のレベルが10くらいになると貰えるようなホウキだ。けれどたまに、きれいな柄にワックスを塗られた穂先と、主人公のレベルがマックスになると貰えるようなホウキを使っている魔女もいる。
「あの高価そうなホウキはお金持ちだけが使えるものなんですか?」
アンライトはクスクスと笑いながら、首を軽く振って話す。
「違いますよ…。多くの魔法使い、魔女はデフォルトのホウキを使うのです。でもあれは、ウィッチマ・マジックという魔法大会専用の性能がいいホウキなんです。あのホウキを運営側が大会の数日前に選手に渡すんですよ。より、早く慣れるために。」
ウィッチマ国にはそんな大会があるのか。それにしても、本には魔法が日常茶飯事飛び交っていると書いてあったが、そんなことはないんだな。道は石畳できれいにされており、道の左右には石造りのアパートみたいな縦長い家がずらりと並んでいる。家の上空にも道路にも魔女はたくさんいるのに、キラキラした魔法を使っている人は見る限りいない。
「この国は、魔女と魔法使いの国なんでしょう?それにしては、魔法らしい魔法を使っている人を見かけませんね。」
「それは、そうですよ…。魔法は、体のエネルギーとなる魔力を使って発動するものです。必要のない魔法を使うと、体がもたなくなってしまいますよ。」
魔法を使うには魔力が必要なのか…。僕にも魔力はあるのだろうか…。
僕は少し果実ジュースをすすろうとカップを取ると、手を滑らせてしまった。カップが割れる音が怖くて目をつむる。しかし、いつまで待ってもカップが割れる音は聞こえない。恐る恐る目を開けると、カップが地面すれすれで止まっている。いや、浮かんでいる。そして、目の前には机に身を乗り出して杖をカップに向けているアンライトがいた。アンライトは、一息つくとカップを持ち上げて机に乗せる。僕は助かったと思い、アンライトに一言お礼をした。僕たちはしっかりとお支払いを済まし、改めて出発する。
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