第24話:空塚さんと崔峰さんは大人のカップルな件。

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【前回のあらすじ】


 姉さん! 事件です!


 主人公の幼なじみのイケメンキャタクター〝己由みよし逢眞おうま〟が三次元と二次元に降臨しました。


 三次元の方は、ぼくのコスプレで、みためはちょっとイキッタ中学生にしかみえないんだけど、れんちゃんの妄想力で、見事なワイルド系イケメンに大変身しました。

 キャラクター設定のモデルになってくれた、空塚からつかさんと、崔峰さいほうさんに感謝です。


「ピー!」


 あ、炊飯器がご飯が炊けた事を教えてくれました。

 

 姉さん! ぼくたち晩御飯を食べます。

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 ぼくは、キッチンと言う名前の脱衣所で、とびきりセンスの良いブレザーの学生服をぬいで、とことん無難な普段着に着替えると、炊き立てのご飯をまぜてお鍋に味噌汁を溶いた。


 れんちゃんはスケッチブックにキャラの対比表を書いている。


 至って普通の身長で、至って普通のショートボブで、至って普通のでもとびきり地味可愛い女の子と、その女の子よりもちょっとだけ背の高い、親友の女の子をいる、あざと可愛い男の娘の〝乙姫おとひめみなと〟。

 そして、随分と背の高い、つきあいが長すぎて色々と関係をしまった幼馴染のワイルド系イケメンキャラクターの〝己由みよし逢眞おうま〟。


 一応、主要キャラができた。でも少なくともあと四人の攻略キャラクターの男の子が必要だ。

 主人公は2年生の設定だから、バランスを考えたら、先輩キャラと、後輩キャラ。あと学校の先生と、もう一人同級生……かなぁ。

 後輩くんや同級生じゃなくて、もうひとり先輩キャラや大人キャラがいても良いかもしれない。


 ぼくは、れんちゃんは描いている、まだ随分と空白のあるスケッチブックの余白をみながら、残りの4キャラの設定を考えた。


 でも……。


 なーんにも思いつかない。白紙だ。まっさらだ。ぼくの頭はすっからかんだ。

 そしてお腹もペコペコだ。


 ぼくは、小さなお皿をふたつ出して、賞味期限スレスレの豆腐にかつおぶしと刻んだ小ネギをかけると、お茶碗とカレー皿にご飯をよそって、お椀とマグカップにみそしるを入れた。


 うん、明日こそ食器を用意しないと。とりあえずは100円ショップでもいいから食器をふたそろえ用意しないと。

 でもって、れんちゃんに自転車を買ってあげないと。世田谷線の世田谷駅まで自転車で行けば、会社までは50分足らずで到着する。


 そしてぼくは、昨日の木曜日からずっと自転車を世田谷駅の近くに置いているのを思い出した。世田谷線の近くにある、たこ焼き屋さんに置いたままにしていたのを思い出した。あしたはまず最初に自転車をとりに行こう。あとたこ焼き屋さんのおじさんに自転車をずっと置きっぱなしにしていたのを謝って、ついでにたこ焼きを買って帰ろう。いつもは六個入りだけど、れんちゃんとふたりだから八個入りを買おう。


 そんなことをぼんやりと考えながら、ぼくは小さなお盆でちゃぶ台の上に料理を置いて運んだ。お盆がちいちゃいから、2回往復して晩ごはんをならべた。(おっきなおぼんも買おう)

 ごはんと、おかず味噌汁と冷奴と納豆の、めっちゃ質素な晩ごはんをならべた。


 猫舌のれんちゃんは、ふうふうと念入りにお味噌汁をふいて、そっと飲んだ。


「美味しい!」


 れんちゃんは、ただじゃがいもと玉ねぎをみりんと出汁で煮込んだだけのおかず味噌汁をめっちゃ喜んでくれた。猫舌なのに、ふうふうしながらとっても美味しそうにハグハグと食べてくれた。


 可愛い。


 そのあと、ぼくはれんちゃんの質問に答えながら、なんとなーくテレビをみた。家の周辺にあるお店のこととかをいろいろ質問されたから、ていねいに答えながらなんとなーくテレビを見て、れんちゃんに先にお風呂に入ってもらって、ぼくは気を紛らわせるために長めの筋トレをして、れんちゃんの後に、お風呂に入った。

 昼間、「がんばれー!」って感じのあどけなくて可愛い、でもスタイルのいい身体のにピッタリとフィットしたリクルートスーツと、絶妙な透け感のストッキングのれんちゃんを思い出して、がっつりとのぼせてしまった。


 そして、れんちゃんが敷いてくれたおふとんで一緒に寝た。


 れんちゃんは、ぼくの右腕にぴったりと絡みついてきた。ほどよい大きさの胸の形がはっきりとわかった。ぼくは、体のラインがバッチリでちゃうリクルートスーツを着こなしちゃうスタイルの良いれんちゃんを思い出して、うらやましくなった。


 ぼくは無い物ねだりをした。


 ぼくが絶対に持つことが出来ないモノを、いとも簡単に手にしているれんちゃんが羨ましかった。そして、ぼくがかなり頭の悪い嫉妬をしている間に、いつの間にかれんちゃんは眠っていた。


 そういえば、今日はめっちゃ気なれないスーツ着てたんだもんな、れんちゃん、慣れないパンプスでめっちゃ歩きにくそうにしてたからな……靴ずれができなくて本当によかった。あ、そういえば家に絆創膏置いてないや。


 れんちゃんのリズミカルな吐息が聞こえてくる。そしてその息が、かすかにぼくの頬に伝わってくる。その優しいリズムと淡い感触は、もう最高に心地良くて、ぼくもすぐに睡魔に引っ張り込まれていった。


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 夢をみた。


 ぼくは旅をしていた。小学生くらいの子供になって旅をしていた。同じく子供になっている、空塚からつかさんと崔峰さいほうさんと旅をしていた。


 野球帽をかぶってバットを持った空塚からつかさんと、ピンクのワンピースで、おさげがみの崔峰さいほうさんは、ちょっとレトロなロボットと戦っていた。

 空塚からつかさんと崔峰さいほうさんが、「ぐっ」とにぎりこぶしを作って念じると超能力が発動して、ちょっとレトロなロボットが木っ端微塵に破壊された。

 超能力が使えないメガネをかけたぼくは、それを横目で見て思った。


 いいなぁ。


 空塚からつかさんと崔峰さいほうさんは、きっとぼくの知らない事をたくさん知っているんだ。夢のなかでは子供だったけど、本当は空塚からつかさんと崔峰さいほうさんは、大人の男女なんだ。

 ナイトクルージングや帝国ホテルのバーが似合う、大人のカップルなんだ。


 空塚からつかさんは、崔峰さいほうさんの婿養子になる。つまり……結婚が前提のお付き合いだ。

 きっとぼくの知らない、ぼくが経験したことがない。ぼくもできればれんちゃんと経験してみたい体験を、帝国ホテルのスイートルームで経験しているんだろうなぁ、スイートな体験をしているんだろうなぁ。


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 いいなぁ。

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