「新版 歎異抄 現代語訳付き」:自力と意思

 「新版 歎異抄 現代語訳付き」を読了した。

 訳者は千葉乗隆さん。角川ソフィア文庫から出ている。

 いま、國分巧一郎さんの「中動態の世界 -意思と責任の考古学」(医学書院)も読んでいるのだが、個人と世界の関係を考えるうえで重なる部分がある。


 人は自らの意思で善悪を行えうるのか。

 世間一般はイエスと答えるであろうが、親鸞の考えはちがう。

 私たちは、思い通りにならないつながり、過去の行いの結果により、善行を積み、悪行に走る。

 これは、スピノザが意思の力を認めないとの同じ理屈だ。

 意思は突然降ってくるわけではない。その意思が生じた原因がある。

 ある意思により行動の大きな転換を行うと、それまでとそれからの生が、断絶された感覚に襲われる場合がある。

 しかし、そのようなことはなく、私たちは、生まれてから死ぬまで、それまでの積み重ねから導き出された行動を取りつづける。

 人生は複数の道があるように見えて、常に一本道である。

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