第5話 幼なじみの休日
「こらー翔馬。休みだからっていつまでも寝てていいわけじゃないからね」
休日くらいゆっくり寝かせてくれ。
まぁとはいっても葵の事だ。起きるまでこのままだろう。
さぁ重い腰を上げるか。.....。あれ?起き上がれない。
そこでようやく目の焦点があった。
目の前には俺の上に馬乗りになった葵が鎮座していた。
「起きたいので退いて頂けませんか?」
「退いて欲しいのから今から言うことを聞くこと」
オーマジカ。こういう時の葵のお願いって大体面倒なんだよなぁ〜。とりあえず内容だけは聞くしかないだろう。
「お願いとは」
「ちょっと〜お買い物に行きたいので〜付き合って✩」
「お断りします」
だって女の子の買い物って長いんだよ〜。
今日は家にいたい気分なのです。
「じゃあずっとこのままね」
「それはそれで困るな」
わかってはいたが俺に選択肢はない。
「で、何を買いに行くの」
「お、乗り気だね。そうこなくっちゃ。今日はね〜これです」
そういってスマホの画面を見せてきた。
「フリマ?」
「そう」
画面に表示されていたのは電車で10分行った先にある総合公園で開かれるフリーマーケットの広告だった。
「付き合って欲しいなぁ〜」
「わかったよ」
「やった〜」
嬉しそうな顔だな。朝からその笑顔を見れてよかった。
「準備するから退いてくれ」
「うん。下で待ってるね」
スキップしながら部屋を出ていった。階段は危ないからゆっくり降りてくれよ。
電車に揺られること10分。フリマが開かれる総合公園に着いた。かなり大規模なイベントの様で出店数も50は超えていそうだ。
「まぁゆっくり見て回るか」
「そうだね」
さぁ行ことしたら葵が着いてこない。どうしたのかと思い振り返ると、もじもじしながら指を絡めている。
「どうかしたのか?」
「いや〜その〜」
なんだかはぎれが悪いな
すると葵は顔を赤らめて
「て......つなぎたい」
そんなかわいい顔でしかも上目遣いでそんなことお願いされて断らない男などこの世にいるのか。
「ほら、」
「うん。」
満面の笑みで俺の手を取って指を絡めてきた。いわゆる恋人繋ぎだ。
心臓ちょっとうるさいぞ。鎮まりたまえ。
最初からこんな調子で最後までもつのか、まぁなんとかなるさ。
そう思っていた時期が俺にもありました。
葵は目に止まった物に直行。それに引っ張られた俺は息の根があがり今ベンチで休憩中。
「はい、お茶」
「あ、ありがとう」
「大丈夫?」
顔を覗き込んでくる葵。こいつ改めて近くで見るとかわいいよなぁ。
って見とれてる場合か
「大丈夫」
「なんか間があったけど?」
「気のせいじゃないかなぁー」
「ふ〜ん。そういうことにしといてあげる。」
た、助かった〜。
「もう全部見終わっちゃったね」
「そうだな。どうする?このまま公園散歩でもして帰るか?」
「そう来ると思ってました。はい、今日もお弁当あるよ〜。」
「あ、もうそんな時間か」
休日まで弁当作ってきてくれる幼なじみ。よくできたやつだ。
「さぁ、たべよ.....う?」
「え、雨?」
「そんなの聞いてないよ〜。」
「葵、とりあえず屋根ある所まで走るぞ」
「うん。」
なんとか雨の被害を最小限に抑え雨宿りできる所まで着けた。
「すぐ止むかな〜」
「通り雨っぽいけどなぁ〜。」
周りにも何人かの人が雨宿りしていた。
みんな雨降るって思ってなかったんだろうな。
「とりあえず雨止むのま」
「あ、そういえば!」
「うわぁ、急に横で大きい声出すな」
「私カバンの中に傘あった!」
「それは早く気づけ!」
カバンの中から折りたたみ傘を取り出した葵
「翔馬が持って」
「なんでだよ」
「背が大きい方が持った方が良くない?」
「まぁ確かに」
「じゃあよろしく」
そのまま傘を受け取り2人で並んで入る。
「ほら、もっと寄って」
「お、おう」
もう肩と肩が当たってるんだよ。
横から女の子特有のいい匂いしてくるし。
ダメだ。俺どうにかなりそう。
「と、とりあえず駅まで戻る?」
「そ、そうだね。」
あれ?葵顔赤いな。
「葵大丈夫か?熱でもあるのか?」
「え、なんで?」
「いや、顔赤いから」
「だ、大丈夫」
「無理することないぞ」
「ほ、ほんとになんでもないから」
「そうか。無理なら早く言ってくれよ」
「わかった」
「で、なんで俺の部屋にいるの?」
「だってお弁当食べなきゃ」
あの後駅まで戻ってからもう家に帰ることになった。
そして今に至る訳だ。
「あ、この漫画新刊出てたんだ」
葵が取ったのは少女漫画。俺はなんでも読むのでこの部屋には少女漫画がある。葵は自分では買わず俺の部屋で読んでいる。
漫画も終盤横で葵が顔を赤くして固まっている。
あ、そういえば最後の方キスシーンあったな。しかも大人の。
葵はそういうのにあまり耐性がない。
「おーい。生きてるか?」
顔を覗き込んだ。ますます顔が赤くなってるな。
ん?なにか引っかかるな。
あ、この漫画のキスシーン今と状況同じだったな。
それをわかった瞬間俺も顔が赤くなったのがわかった。
潤んだ目で俺を見つめる葵。
え、待って
何そのいつでも来ていいよって顔。
葵は目を閉じている。
目が唇にしか向かなくなる。
それ以外が全てボヤけて体の全てが唇へと吸い寄せられていく。
「.......。」
「っ!」
俺はギリギリのところで理性を取り戻した。
「ご、ごめんね。私何してんだろ」
葵も正気に戻ったようだ。
「わ、私帰るね」
顔を真っ赤にしたまま部屋を飛び出した。
「いくじなし」
ん?なんか言った?
聞こうにも葵はもういなかった。
まぁ大したことじゃないだろ。
翌日からも葵は普通だった。
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