エアゾ ~ITの洗礼~1話

@Toyota_dayo

黎明期

「んーーー!」


この一言で始まる一日。倦怠感が体の中をループする。憂鬱な心を差し置いて僕はリビングにいく。テレビは毎日スマホを淘汰するようなニュースばかり。スマホに完全にシェアを奪われたことによる成れの果てなんだろうな。それもそう、AbutZ社が新たに出した通信媒体、「Airzonё」略して「エアゾ」 2ヶ月後に販売開始となり、国民が湧き立つ中、あの日の何かが僕の中には湧きだっていた。さて、もうそろ証券会社に着くか。




~2021年11月~


盛大に終わったオリンピックも去ることながら、こちらはまだ白熱した争いが続いていた。新たな通信媒体の覇権争いだ。日本では次世代通信5Gの基地局作りが難航し、4Gと同様なネットワーク網が作れないことが総務省の会見によって明らかになり、新たな通信媒体の開発を自社とAbutZ社が同時期に発表したことも相まって注目を集め始めた。もちろん5Gの基地局作りの難航を知っての開発だ。当初は未来のSF映画に出てきそうな空間パネルタッチを構想していたが、現実的でないことを理由に銀行から融資を断られ、クラファンもなかなか集まらず、やむを得ずスマホの形を踏襲することとなった。一方、AbutZ社はその空間タッチパネルを開発することができ、銀行からの融資を受け、クラファンも着々と進んだ。


「どうなってるんだ!」


いや、あんたのおかげで開発が進まんかったんやろ


心の奥でそう思いながらzuumでの会議の進行をしていた


というよりは上司の愚痴吐き会だ。つくづく思う、AbutZ社は


今この時にも開発を進めてんだろなと


早く終わってくれないかとぶつぶついいながら会議を終えた


「ほんまこの会社終わってんなwww」


そうチャットで呟くのは、有名私立N大卒で元AtbutZ社に勤めていた森本だ。新卒で20年目になる俺でもわかる。


ただ、森本が言ったほうがもっと響く。


幹部は昭和思考な50代が中心。精神論中心で暴言、女性社員に対してのセクハラ発言はもはや定番 まさにブラック企業を絵に描いたような会社だ


「お前俺と一緒にこの会社やめよーぜ」


俺には大事な家族がいるんだよ!てかここ退職届なかなか受理してもらえないんだぜ ネタだとは分かっててもマジレスしてしまう自分がいた


「そこは俺に任せろてw」


俺には訳が分からなかった。なぜAbutZ社を辞めてここに来たのか


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