第6話 事情聴取
ほどなくして通報で駆けつけた警官に男は身柄を確保された。
ずぶ濡れになった勇太、圭介の二人は警官から借りた毛布を頭からかぶり事情聴取を受けていた。
「あいつら…!突然消えたんだ!そしたら池にいたんだ! 俺は見たんだ!あいつらが……!」
パトカーで連行されていく男が勇太達を見つけて叫ぶ。その声は半ば強引に閉じられた車の扉に阻まれ掻き消えて行った。
「まったく何言ってんだか。覚せい剤反応見たほうがいいな」
男のいう事をまったく信じていない警官がそう他の警官に無線で通じている。それを聞いて圭介が、
「そうなんですよ。俺らあいつがナイフ持って突進してきよったんで急いで逃げたら池に落ちてしもうたんですわ」
被害者の女性はちょうどその時近くの家へ通報をお願いしに行っていて見ていなかったという。
「…………」そんなやり取りを勇太はただ黙って聞いていた。
「ところで君達名前は?」仏頂面の警官が聞く。
「…工藤勇太です」
「真田圭介ですわ」
「ん?真田?真田…… あ!お前真田圭介か!?どっかで聞いた事ある可笑しな関西弁だと思ってたんだ!
なんだ、この事件実はお前もかかわってたんじゃないのか!?ん!?」
警官が圭介の名を聞いた途端何やら火がついたように反応する。
「何言うてますのおまわりさん。俺はこの通り今回は被害者ですよ? ナイフで刺されそうになったんですから」
「お前の事だ。女性のバック。スったのはお前じゃないのか!?」
「たしかに手癖出ましたが、男が盗ったバックをスリ返しただけですよ?もちろん持ち主に返すために」
「ったく…親子揃ってお前らは……。」
「おまわりさんなんでも決めつけよくないですやろ」
「…そうか、この街に越して来たってわけだな?いいか?俺達がいつでも見てるからな。何かあったらすぐにしょっ引いてやるからな!」
「ん?ん?」
そんな圭介と警官のやり取りを何事かと首を行ったり来たりさせる勇太。今度はその勇太に矛先が回ってきた。
「で、君は工藤勇太? 保護者は?」
「えっと…一緒には住んでないのですけど…名前は工藤弦也です…俺の叔父です……」
先ほどの警官と圭介とのやり取りですっかり臆したのか勇太は少々背中を丸め小声で答える。
「工藤弦也?職業は?」
「あ…えーっとその…一応警視庁系列みたいです……」
「何ぃ?勇太の叔父さん警察関係者なのか?」とこれは圭介の声。
「警視庁?ちょっと待て。おい調べて来い」
警官は傍にいた若い部下に調べてくるよう指示。しばらくしてその部下が報告に戻ってきた。
「わかったか? ん?なになに…? !な、何!?」
途中で警官の顔色が変わる。そしてさっきとはうって変わった顔つきになり勇太を見つめる。
「いや~、勇太君! 君の叔父さんには私の部下もお世話になっててだね~。
そっかそっか~、君が工藤教官の甥っ子さんか~。いやいや、勇太君!工藤教官に宜しく伝えてくれたまえ!」
「あ、は、はい…あはは……」
あまりの態度の変わりっぷりに勇太も圭介もたじたじ。
「一体なんなん?勇太の叔父さん」圭介が小声で聞く。
「俺もあんまり詳しく知らないんだけど、どうも特殊部隊?で今、教官してるみたいだよ?」
「……マジかよ…。」
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