超能力少年の憂鬱
赤緑あんず
第1話 おかしな友人
「よ!エトウ!」
「いやいやいやいや……『エトウ』じゃないし……」
「だって、『エトウ』って書いてあるやん」
彼は実は超能力者である。
しかし過去にその事でトラウマを被った彼は、自身の能力の事を隠し一般人として生活を送っていた。
元々人懐っこい性格と人当たりの良い彼はすっかりクラスにも溶け込んで入学時からいたんじゃないの的な存在になっていた。
そしてここに来てまた新たな転校生がやって来た。
西の方から来たという彼は話し方が特徴的であった。
「いやこれ、『く』って読むんだぜ?『く』って」
「『く』?どうみてもカタカナの『エ』やん!」
その彼がたまたま勇太の隣の席になり挨拶がてらに自己紹介を交わしたのだが、どうも勇太の苗字を間違って覚えたらしい。
「ばっか!苗字にカタカナ付く人いるか!?さてはお前俺よか馬鹿だな!?」
「苗字にカタカナなんてぎょうさんおるやろ?ジョンベルト・作太郎とか」
「誰だよそれ。つーかそれ、ハーフだろ!片親日本人じゃないんやろ!?……あ、移った」
「それにしても今さりげにあんた自分で自分の事馬鹿って宣言したなぁ。おもろいなぁエトウは」
「だ・か・ら……『エトウ』じゃないって……っ」
「じゃあ、なんて呼べばいい?」
「てゆーか、最初にも『くどう』だって言ったろー?もう名前でもいいよ、名前で……」
この新しいクラスメイトの物覚えの悪さに少々根気負けしていた
「よし、わかった。それじゃあ改めて宜しゅうな、勇太」
そういうとニヤリと勇太の顔を見る。
(あ、れ……?名前の方はすんなり覚えてた、のね……?)
(まさか名前で呼びたかったからこんな真似したのか……?いやまさかこんなまどろっこしいこと……)
「ところでさー、俺転校生で売店の場所知らんのやけど、ちょっと昼用の焼きそばパン買うて来てくれへんかなー?勇太」
「なんか俺パシリにされてる!?」
「頼むでー、早くせえへんとなくなってしまうのやろ?ほら、勇太、GO!」
「な、なんでやね~~~んっ!」
半ば強引すぎる頼み事にもなぜか断り切れぬものを感じ、売店にダッシュする勇太。
走りながら勇太は思った。
(そういえば友達に名前で呼ばれた事、なかったかも……)
クラスの親しい友人もそういえば皆苗字で呼び合っていた。
「……」
(……まったく変な奴だな、あいつ。……ってあれ? あいつ名前なんて言ったっけ? たしか……)
「……やべ。忘れた」
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