第71話 元おじさん・・・投げる。



 25階層でウッドゴーレム狩りをしつつ、階層主部屋を目指します。

 今回の相手は外傷をあまり気にしなくても問題無いので少し遊んでみようと思う。


 では目前のウッドゴーレムに向けて体のひねりと遠心力を加えて放つ!


「黒魔鋼戦斧〇-メラン!」(技名が少し長い)


 勢い良く放り投げられた戦斧はウッドゴーレムの胸の辺りに激しい音と共に命中した。

 ドゴォーーン! 

 ウッドゴーレムは其のまま戦斧の勢いに負けて仰向あおむけに倒れ来む。


「確、対象のHP0を確認しました、直ちに回収します」


 ふむ、上手い具合にコアに当たった様だ、良し次へ行こう。

 迫り来るウッドゴーレムを戦斧で叩き割りながら進むおじさん達、ここ最近魔法ばかりで攻略して来たので物理攻撃もたまにはしないといけないかなと戦斧を投げ付けているけれども、外れても戻っては来ないんだよね〇ーメランとか言いながら・・・まぁ戻ってこられても怖くて受け止められないけど。


 おっと! マップに反応だ、騒ぎすぎたかな冒険者パーティーが此方に向かってくる・・・こんな時こそこのマジックアイテムの出番だ。


 『妖精の衣』~! 通路の隅でチャチャ達を抱え込んで妖精の衣を羽織る・・・う~んモフモフが気持ちいい~♡ ついでに『浄化』も唱えておこう。



「どうだ、何かいるか?」

 軽戦士の男が話し掛ける。


「いいえ、何も異常無いわ」

 ネコ系?の獣人の女性が周囲を警戒しながら答える。


「気のせいって事は無いのよね?」

 後衛職風のメイスを持った御立派なモノを御持ちの女性。


「・・・索敵と感知にはウッドゴーレムは認識出来たけれど戦って居る相手までは認識出来なかった・・・それにこの辺りで戦闘が在ったはずなのに痕跡が綺麗に無くなっている、臭いが完全に無いなんて明らかにおかしい!」


 おや、やり過ぎたかな?


「痕跡を追えないのか?」

 カイトシールドを持ったタンク職かな?男が追跡が可能か聞いている、いや追跡しなくて良いよ本当に!


「そもそも痕跡が無いのよ、これ以上はお手上げよ!

 それにこれだけの事が出来る相手を敵に回したくないわ! 恐らくだけど、ここ迄あからさまに痕跡を消しているのは警告も含まれていると思うわ」

 あれ? 変に深読みし始めた。


「あん! 警告ぅ?」

 あっ何だかガラの悪そうな剣士がイラ付き出した。


「おい、少し落ち着け、それで警告って?」

 軽戦士の男がなだめている彼がリーダーか?


「あくまで憶測なんだからイラ付かないでよ! 明らかに技量は相手の方が上なの! それを私にも分かる様にわざとこんな綺麗に痕跡を消しているつまり!

 『これ以上深入りするのならお前達を気付かせる事無く始末して痕跡も残さず消し去るぞ!』って警告しているのよ!」


 ・・・な、なんだって~~! し、知らなかったおじさんそんな警告を出していたなんて。


「上等だ! そんなもん返り討ちだ! 出て来いコラ~!」

 剣士の男がヒートアップして来た・・・ダンジョンで騒ぐのは不味くない?


「よせ! 何をやっている敵を呼び寄せるぞ!」

 タンクの男が止めに入る。


「そんなもん倒せば問題無いだろう! それよりもどうせその陰険野郎達は余所者なんだろ! なら此処ここで稼ぎたいんなら俺達に挨拶するのが筋だろうが!」 

 え? そんな決まり在るの?


「解、その様な決まり事は在りません! チンピラの戯言ざれごとですので半殺しにして放置するのが良いでしょう」


 ラヴィが物騒な事を言っている。


「私達にそんな権限無いでしょう! 何を馬鹿な事を言っているの!」

 メイスを持った女性が𠮟り付けている・・・お〇さんかな?


「そいつ良く余所者相手にたかって居るからな、いつもの癖だろ。」

 今まで喋らなかったポールアックスをかついだずんぐりした男がいきなり暴露した。


「お前何やって居るんだ!」

 軽戦士の男が怒鳴り出す、おーいそんな大声出すと。


「こんなもん暗黙の了解だろうが、バレなきゃ問題無いんだよ! 一々文句言うな!」

 剣士の男も怒鳴り返す、だからそんなに騒ぐと。


「告、マスター手遅れです、通路の双方からウッドゴーレムが向かって来ます、このままですと挟撃されます」


 もぉ~! 何でこう何とも言えないおバカな冒険者達が多いの! まだ言い争っているし、馬鹿なの死ぬの? ・・・え~と片方を片付ければ自分達で如何どうにか出来るだろう?


 先ずは妖精の指輪をはめてパックル似の疑似妖精を作り、姿を消して此方こちらと反対側の通路に向かわせてそこで姿を現せてから。


「キャハハ アソボ アソボ!」


 !!! 良し気付いて固まった。


「な、何でクソ妖精が25階層に居るんだ!」

「え? 階層越えて来たの? そんな話今まで聞いた事無い!」

「! そんな事よりも奥からウッドゴーレムが来ているわ!」

「まさか、妖精が呼び寄せたのか?」

「あんな大声出せば呼び寄せるも何も無いだろう!」

「考えるのは後だ! 先ずは切り抜けるのが先だろ!」


 良し、一方に注意が集中した! これで逆をおじさん達が片付けてそのまま移動しよう。


「良し一気に駆け抜けて行くから遅れない様にね!」

「ニャ!」「ミャ!」「キャン!」


 ではおじさんは通路の奥目掛けて、戦斧を思いっきり投擲した!


 『ごうぅ!』 空気を裂く轟音と共に戦斧が凄まじい回転で直進してウッドゴーレムに迫る!


 おじさん達も投擲と同時に奥へと走り出す、冒険者達にはまだ気付かれてはいないはずだ。


 ドガァン! ズゴォン! バキャァ! あれ?複数に当たった様な音がするけど。


「解、此方こちら側には3体のウッドゴーレムが居ました、一投で全て討伐されました流石マスターです。」


 ああっきちんとマップの表示を見ていなかった・・・次は気を付けよう。


 冒険者達も片方からなら問題無いだろうし疑似妖精も回収しておこう。

 今は兎に角、誰にも冒険者会わない様に階層主部屋に向おう。


 何度かウッドゴーレムを討伐しながら階層主の扉の前に来た、幸い順番待ちも挑戦中でも無かったので階層主の討伐に向おうと思う、ラヴィ階層主の情報ある?


「解、通常ですとストーンゴーレム1体が常時常駐していて挑戦者2人に付きウッドゴーレムが1体増えます。

 ですので、6人パーティーですとストーンゴーレム1体とウッドゴーレム3体との戦闘に為ります」


 中々シビアな戦いに為るね、でもおじさんはストーンゴーレム1体との戦闘で済みそうだな・・・・・・。


「告、今までの傾向から高確率でレア個体に遭遇すると思われます」


 はいはい、分かっています! 少し現実逃避しただけです。

 はあ~、開けるか。


 階層主部屋の内部は今回は明かりが全体に行き渡っていた、部屋の中央に階層主が此方こちらを待ち構えている。


 一見してストーンゴーレムが1体だが、見た目からしてレア個体だ!

 何せ、彫刻の様に細かに彫り込まれた筋肉ムキムキ全裸の男性像型のストーンゴーレムだからだ!

 しかも、金属製の盾とナックルガードの付いた棍棒を装備している。


 此処ここのダンジョンマスターは頭可笑しいだろ!

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