第14話 元おじさん・・・走る、滑る、跳ぶ。



「スキル:高速思考を使用、それに伴い思考系、脳内系スキル発動、領域拡大、マップ更新、状況予測、マスター! 思考のみですが時間を作りました、この間に対策を考えましょう」

「了解助かる、時間はどれ位ある」

「約5分、視界片隅に表示します」


 ピ!05:00


「確認した、先ずは現状把握が先だ、自分を中心に周囲の地形を教えて欲しい」

「了、マスター正面が北で平原、西も同じ平原ですが約1km先に街道在り、さらに道なりに北西約3km街が在ります、南と東は緩いカーブを外側にえがいての森林地帯です」

「了解、次は此方の今出来る行動確認、希望的観測は無しで、正面から挑む」

「解、勝率3%」

「了解、昔の消費税かよ!街道まで走り街に逃げる」

「解、成功率5%、ただし、街にレッサードラゴンを引き寄せるのでその後捕縛される確率96%、被害によっては公開処刑されます」


 ピ!04:00


「了解、どのみち街に着く前にバテて捕まるだろう、北は障害物も何も無いから論外、東の森林に逃げるのは、あ!それ以前に相手のステータスが解っていない、あ~最初でつまづいてる」

「マスター!落ち着いてください、東の森林への逃走確率53%、森林内での逃走確率64%、ステータス表示します」


____________________________


【種 族】 レッサードラゴン


【年 齢】 86歳


【性 別】 ♂


【状 態】 飢餓状態


【レベル】 36


【心体力】


H  P:671/940


M P:105/222


S P:75/110


筋 力:217


攻撃力:217


体 力:253


防御力:253


知 力:9


精 神:102


速 度:42


器 用:13


魅 力:3


幸 運:12


【スキル】


・咆哮:Lv5 ・身体強化:Lv3 ・魔力感知:Lv4 

・気配感知:Lv3 ・竜撃:Lv1 ・逆鱗:Lv1


__________________________


「非常に若い個体です、ですが現状のマスターでは物理・魔法どちらの攻撃もほぼ通用しません」

「これ、逃げ切ったとしても街に向かわないかレッサードラゴン」

「解、飢餓状態ですので73%の確率で襲撃すると思われます」

「七割さんかぁ、自分の時には仕事しないけど相手の時は働くんだよなぁ」


 ピ!03:00


「ラヴィ、頭が冷えて来たから思い出したけれど逃げ切る方法あるよな」

「解、確実に逃げ切る方法は在ります」

「・・・提案しなかった理由は?」

「解、マスターが必ず後悔して引きずるからです」

「・・・たしかにそうだな、ラヴィ ありがとう」

「了、どういたしまして」

「ラヴィ、考える時間をくれ!」

「了、こちらもスキルの再調整をしておきます」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 ピ!02:00


「ラヴィ、今自分の考えた方法だとどうだろう」

「解、良い方法であると思いますがまだ足りません、不足分をこちらで付け足しますのでマスターは私の指示に従って下さい」

「了解、任せる」

「・・・」

「どうした、ラヴィ?」

「簡単に私を信じるのですね、不安にならないのですか?」

「・・・不安は常にある、後悔もだ、でもこれからずっと一心同体の相棒を信じない程ひねくれてはいないよ、おじさんは!頼りにしてるよラヴィ!」

「了、任せて下さい、マスターが指示道りに働いて頂ければ成功率は99%です」

「そこは、100%じゃないのか。」

「解、世界には必ず不確定要素が付き纏います、そんな簡単には100%は出せません」


 ピ!01:00


「これより、〈打倒レッサードラゴン!死のチキンレース作戦〉を開始します!」

「了解!」

「概要説明、レッサードラゴン視認後、脳内マップのルート指示に従い移動速度、魔法使用のタイミング及びスキル使用のタイミング、使用範囲の指示などマップに赤く表示します、要所要所で私が指示をしますのでマスターはその通りに行動して下さい」

「了解」

「ルート指示・補助スキル使用・タイミングのカウント・レッサードラゴンの状況報告・その他補助は私が、実際の行動はマスターがお願いします」

「了解」

「作戦中の使用魔法の種類と順番はこちらに成りますので確認して下さい、魔法使用はスキル:並列思考で役割分担して下さい」

「了解」

「南方面約100m先地点到達で森林を抜けたレッサードラゴンを視認できます、敵もこちらを視認後に行動する予測パターンは2種類、そのまま直進かスキル:咆哮によるスタン狙いのどちらかだと思われます、どちらにしても私がスタートとスキルの指示をしますので慌てず速やかに実行してください」

「待て、ブレスは無いのか?」

「解、レッサードラゴンはまだブレスを吐けません、正式なドラゴンに成長して初めてブレスが使えます、今はただの大きなトカゲです」

「了解、なら少しは安心だ!」

「間もなく接敵、高速思考停止、カウント 5 4 3 2 1 目標視認!」


 バキッバキッドドーン ズン!ズン! グルルルルルゥ~~ッ


 周囲の木々を倒しながらソレは現れた、ここからでも判る異常な大きさ中型のトラックはゆうにある、アレで若い個体!おいおい異世界ってすごいな!

 少しテンションがおかしい、恐怖でなく高揚感を感じるおそらく耐性スキルと精神系のスキルだろう、ラヴィさんいい仕事です。

「当然です、抜かりは在りません!マスター、咆哮によるスタン狙いです、息を吸うと同時に突進してきます、距離を詰めながら咆哮を放つつもりです、こちらは耐性が有るので無視して、マップの指示道りお願いします」

「了解!しかし、走りながら咆哮って良く息が持つな?」

「根本的な体の構造が違います、マスターの常識はここルドラガでは通用しません、息の吸引を確認しました、スタートして下さい!」

「了解、クロウ・クローバー行きまーす」

 ラヴィの号令と共に走り出した、脳内マップの指示を注視して走り出して気付いた事が有る、体が軽い今までに感じた事がない位軽い、これが新しい体の性能とスキルの恩恵か、・・・もうなにもこわ げふんげふん、頭無くなりそうだからやめよう。

 などと馬鹿な考えをしていると、マップに表示されたレッサードラゴンとの距離が近ぁ!こちらもスキルで強化されてるから若干速い筈なのになじぇ?

「解、速度は同じでも体格と歩幅が違いますし足の数が違います、向こうは4足こちらは2足」

「!咆哮来ます、レッサードラゴンの速度が少し落ちます、魔法の準備をして下さい」

「了解!」


 GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!


 うるさい!近所迷惑だ!通報するぞ!

「解、誰も来ません、マップ表示、マスターの後方赤い表示範囲に魔法を使用して下さい、スキル:移動詠唱発動 カウント 3 2 1 今!」

 指示された場所に並列思考のもう一人の自分が意識を集中し、呪文を唱えた。 「㋮法:摩擦軽減大!」

 こちらからは直接は見えないがマップの表示が青に変化していた。

「効果の発動確認、東の森林に進路を変更して下さい!」

「了解!」

 すぐさま、東へと方向変えるする。


 レッサードラゴンは、自身の咆哮にも反応せずに東へと方向を変えた獲物に、苛立ちを覚えながらも追跡をしようと体を東へと向けた途端。


 ずぅるりぃ!


 大きく体が横に傾いた!急いで立て直そうとするが踏ん張りが効かない滑る!

 自身の自重と突進の推進力で大きく横に流される、一旦停止しようとしたが既に遅く体が横向きのまま宙を舞った。

 そして、勢い良く地面に衝突するとその勢いのままゴロゴロと転がった。


 ズルッ、ズザッ  ドッシイィ~ン ズザザザァ~ゴロゴロゴロゴロ・・・・


「転倒を確認、スキル:挑発・思考誘導を使用して下さい」

「了解、ざっまあみろぅ~~ば~か、ば~~か!」

「挑発を確認、思考誘導を確認、子供ですか!」

「おじさん、挑発って苦手なんだよ~、口下手だし」


 何が起きたのか判らない、だがこのままでは獲物に逃げられる急いで追わなければ、? 獲物が何かを叫んでいる。

 ! なんだろうこれは、獲物から目が離せない、そして奥底から湧き出るこの感じ・・・そうだ怒りだ!あの獲物は俺を侮辱した!弱いくせに俺を下に見た!

 許せない!許せない!許せない!許せない!!!

 アレは俺の獲物だ!絶対に喰う!意地でも食う!

 喰う食う喰う喰う喰う喰う食う喰う喰う喰う喰う喰う喰う喰う喰う

 

 Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!


「スキル:逆鱗の使用を確認、レッサードラゴンのステータスが跳ね上がります」

「最後の仕上げです、マップ表示、マスターの正面赤い表示範囲に魔法を使用して下さい、スキル:移動詠唱発動 カウント 3 2 1 今!」

 新たに指示された場所に並列思考のもう一人の自分が意識を集中し、呪文を唱えた。

「㋮法:摩擦増加大!」

 マップ表示の正面方向が青に変化していた。

 その範囲に足を踏み入れると一気に加速した!

 足裏の感覚が違う力が逃げない!

 気を抜くとここで転ぶ訳には行かない!


 Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!

 ズン ズン ズン ズン! ズシン ズシン ズシン ズシン!


 どんどん近づいて来るのが判るマップ表示からも背後の殺気からも少しでも気を抜けば終わる死ぬあと少し!

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「マスター!ポイント到達までのカウントを開始します」

「スキル:移動詠唱発動 カウント 3 2 1 今!」

 最後の仕上げと並列思考のもう一人の自分が意識を集中し、呪文を唱えた。

「ゲートオープン、マヨヒガ!」

 ヴォン! 前方に楕円形の白い空間が現れた、自分は咄嗟に跳んだ!

 普段なら大した距離ではなかったが、今は違った遅い!遅すぎる!

 後ろからはレッサードラゴンの熱い息遣いがががががg


 そんな、走馬灯を見ていると目の前の風景が変わった!

 地面だ! ぶつかる! バン! バッ!

 咄嗟に前回り受け身をし、急いで身をひるがえしゲートを確認した。


 そこには、先程と同じ楕円形の空間が在った、ただ違うのは向こう側が見えた。

 レッサードラゴンの首がおかしな方向に向いていた。


「マスター、レッサードラゴンは瀕死状態です、すぐにとどめを刺しましょう、幸い完全に気絶していますので仕留めるのは容易です」

「了解した、でもどうやって仕留める?」

 そう言いながら警戒してゲートを出る、レッサードラゴンはヒュー、ヒューと明らかに首の骨が折れ曲がり呼吸もままならない状態だ。

 しかし、本当見事に上手くいったな、出来過ぎな位だ・・・レッサードラゴンの最大限に引き出した突進力とゲートの侵入者排除の弾く力・・・本んん当に上手くいって良かった!しばらくはもういいです!

「マスター、黄昏るのは構いませんが、さっさと仕留めましょう、グズグズしていると他の魔物が寄って来ます!」

「すまん、始めようそれで攻撃方法は?」

「水魔法を使い窒息させます」

「異世界魔法モノとかでも良く使う方法だな」

「マスターの今の魔法レベルですと元気な内は無理ですが、瀕死の今でしたら問題無く倒せます」

「分かった、魔法の注意点はあるか?」

「呼吸器官を満遍なく水で覆って下さい、それと決して情を掛けないで下さい。」

「情を掛けるとどうなる?」

「魔法自体に影響が出ます、魔法は精神に左右されます、情を掛けるとコントロール出来ない事も在ります」

「了解した、どちらにしろ喰われそうになったんだし今さら情なんて掛けないよ。」

 イメージとしては水で抑え込み覆う様な感じと。

「ウォーター・フォール」


 呪文を唱えレッサードラゴンの呼吸器管を水魔法で覆った。


 ごぼっごぼぼっ!ごぼっごぼごぼ!ごぼぼぼぼっ!ごぼ・・・・・・


「鑑定確認・・・HP0、死亡を確認しました」


「はあぁ、やっと終わった、生き残ったぁ~」


「お疲れ様です、ですがまず先にレッサードラゴンをストレージに収納して下さい」


「そうだった、収納!これで良し」

 レッサードラゴンを収納し一挙に気が抜けた、疲れたぁ。

「マスター、休むのでしたらここでは無くマヨヒガで休んで下さい」


「そうだった!ゲートはまだ開いてる、良しマヨヒガで御休憩だ!」

 

 ああっ、もうねぇ体が重いのなんのおじさんもう寝たいです!


















 ピコーン!

 緊急試練「レッサードラゴンから生き残れ!」がクリアされました。


 総合評価:S 


 これにより試練クリア報酬Sランクを贈呈

 宝箱をストレージへ収納します。


 クロウ・クローバー様おめでとうございます。

 これからの御活躍に御期待しております。



 

 

 

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