6-4


「誰とも交換なんかしねぇよ! 俺はエルと暮らしたいって言ってるじゃねぇか!」

「うふふ。それがどのような後悔を産むか分からなくてもですか?」

「はぁ、なんでエルと一緒に暮らすことが後悔になるんだよ!?」

「それは、私達が分かるのも改ざんすることが出来るのも現在及び過去だけだからです」

「つまり、エルを選べば、俺が不幸になるとでも言いてぇのか!?」

「その通りですね。ふふふ。だって不確定な未来よりも、確定した過去の方が幸せを味わえると思いませんか?」

「分かった、やっぱりエルでいい!」

「うふふ。分かりました。では不確定な未来を存分に味わって下さいませ」



「で、でた~~~~~~~~~!」


 なんか、よく分からんが姉ちゃんの叫び声で目が覚めた。

 おかしいなぁ。暴れたり、わめいたりするのは俺の役割だったはずなのだが……

 それに、なんかお腹の上に重さを感じる。


「驚かせてしまって、ごめんなさい」


 えっ! この声って!


 俺の腹の上には別れた時と同じ――地味な赤いワンピースをきたエルが馬乗りになっていた。


「エル~!」


 衝動のままに抱きしめた。


「パパ。ですか?」

「あぁ。俺だ! 俺がエルのパパだ!」

「良かったです。私が、ただの検体だと教えられた時は、もうパパには会えないと思っていました」

 

 ほれみろ! やっぱり後悔なんてあるわけない!

 エルが俺に会いたがっていてくれて、俺も同じ気持ちだった。

 それだけで十分だ! これ以上なにを望むって言うんだよ!



 状況が状況だけに、またしても俺は――正確には、俺達は研究施設にある特別室で、しばらく過ごすことになった。

 なにせ、それなりの職員が見守る中でいきなり人が一人増えたわけだからな……

 その理由は、きちんと話したんだが。それがかえって混乱を招いてしまったと言うのが現状である。

 わけが分からんだろうが、要約するとどっかの天才が不完全なタイムマシンとやらを作り。

 その二号機を姉ちゃん達に作らせて遊んでいたって落ちでいいと思うんだが。

 やはり、それなりに頭がいいと、かえって悩みの種になっちまってるんだろう。

 それに、エルの扱いをどうするかでも、もめているって話だったし。

 俺としては、メイドさん付の素晴らしい、我が部屋にエルを案内してあげたくて、うずうずしているというのに。


「早く、帰れねぇかなぁ」

「私は、パパが居てくれるならどこでもいいです」

「そうだな、それは俺も同じだ」


 こうして頭をなでてやれる距離にエルがいる幸せをかみしめていた。



 数時間が経過し、ようやく俺達は本当の意味で自分の部屋に帰る事が許された。

 なんかメイドの美月みつきさんに会うのもずいぶんと久しぶりな気がする。

 もっとも、彼女からしたら、それほど時間は感じていないだろうけど。

 俺が、美月さんを選んだ理由は、主に一つ。

 親友から誰でも好きな娘を選んでくれと言われた時に見せられた評価表で最低だったからだ。

 眼鏡をかけていて、見た目も地味。

 明らかに、他では通用しないような気がしたからだ。

 つまり、良くも悪くも同情からである。

 それでも、年上な彼女は俺に代わって数々のコレクションアイテムを手に入れてくれていた。

 感謝しても、しきれないほどである。


 三星家が所有するマンションの一室を開け、自慢の自室にエルを案内すると――


「パパ? どうしてパパの部屋は、裸の女性の絵がたくさん飾ってあるのですか?」

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