4-9
客が来たら俺が全部対応しろってことだよな?
まぁ、商品の値段も分かってるし、レジ代わりに使われてる菓子バチのある場所も分かってはいるけど……
あの、パチパチ音がする計算機?
みたいなものの使い方はいまいち理解ができていない。
そもそも、暗算で簡単に計算できるものを、なぜあんな木製の計算機みたいなものを使うのか理解ができなかった。
消費税とかってのもねぇしな。
運がいいのか悪いのか、客が来ちまって、キュウリとトマトを買ってくれたおばさんに、お釣りを渡したところ。
「お前さん、今どうやってけいさんしただ?」
「や、普通に暗算ですけど……」
「ほ~。やっぱ、社様がついとるってのは本当みたいだねぇ」
当たり前のことをしただけなのに、みょうに驚かれてしまった。
「ありがとうございました!」
元気よく頭を下げると、またしても驚かれてしまい。
そんな感じで全ての客をさばいていた。
仕入れは、まったく分からんが……
これって、俺が清算係やった方が早いんじゃね?
まぁ、客またせるほど混むような店じゃないから、いいのかもしれんが……
少なくとも、単純な足し算と引き算ならエルだってできるし。
今後の事を考えると――
店の手伝いとか、積極的に、やらせる方向で考えた方が、いいかもしれないな。
と、まぁ、そんな余計なことを考えながらも、正夫さん達が帰ってくるまで普通に商売をしていた。
「いやー、わるかった、わるかった。ソロバンの使い方。おしえてなかったな」
「や、普通に暗算で、できるんで問題。なかったっすよ」
「ほー、そりゃまた、すごいのー」
「そーなんですかねぇ?」
もしかすると、この物語の住人は、算数が苦手って設定なのかもしれない。
なにせ、俺が普通に清算してるだけで皆おどろいてたからな。
リアカーから降りてきたセツコさんも目を丸くして驚いている。
「いやー、ソロバンの使い方さ教えてねぇって聞かされたときゃ、どうなっちまってるかって思ってたけんども。そもそも、必要なかっただな」
「はい、単純な計算なら暗算で、できるんで任せてください」
「ほー、たのもしいのぅ」
「はー、まったくにもって。社様には、おどろかされてばっかりじゃわい」
「俺って、そんなにも驚かれるようなことしてましたっけ?」
「いやなぁ、何年かに一度。こうして社様がとりついて何かしら町に、役立つことしてくれるんじゃよ」
「へー、そうなんですね」
セツコさんの話によると、今までにも似たような事を経験しているらしく。
何度となく、社様と呼ばれる人を見てきたそうなのだ。
基本的に知的で、時に問題を解決したりもしてきたそうで、地元の人達からは本当に信仰の対象になっているらしかった。
いや~~~な、汗がふき出してきた。
もしかして、この罰ゲームから逃れる方法として――
俺が、この町に対して、何らかの形で、貢献しなければならない可能性がでてきたからだ。
最悪の場合、バッドエンドすらありえるんじゃないのか!
だって、なにすりゃゲームクリアになるのかさっぱり分からねぇ。
エルをなんとかするんじゃなくて、俺が何かをなさなければならないとしたら……
どうしよう。
一般人からのスタートならば、まだ救いがあった気がするが。
残念なことに俺は、最低最悪の空き巣からのスタート。
それなりに俺が、社様って認識もされてはいるみたいだが、風呂場で聞いた陰口からしても――先ずは、普通の人並みに信用を得るところから始めなくっちゃいけないってことだよな?
クソゲーならまだしも、詰みゲーだったらどうすんだよ!
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