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ったく! どんな理由でこいつらが変な感じになっちまってるのかさっぱり分からんが。
初見で感じ取った相思相愛って部分だけは当たってそうだ。
それでも、二人とも良いヤツっぽいし。
元々少ない交友関係からバッサリと切り離された身からしたら、気の合いそうな連中が近くに居たのは幸運と言えよう。
「なぁ。よかったら、二人とも携帯の番号交換しねぇ?」
「「……は?」」
ったく! どこまで息ピッタリなんだよ!
二人して、『お前何言ってんの?』ってな顔しやがった。
「や、だから! 携帯だって! ……って! あれっ!?」
ありとあらゆるポケットから始まり、絶対に無いと分かっていながらも机の中まで確認したが……
俺のスマホはどこにも無かった……
――って、ゆーか! 今朝から見てねぇぞ!
「やべぇ……」
「おい、大丈夫か?」「ちょと、大丈夫?」
よほど落ち込んだ顔を見せちまってるのだろう。
二人とも、ものすごく心配そうな顔をしている。
しょうがねぇだろ。だってさ、スマホ無しじゃまともに生きてけねーんだから!
特に待受けなんて、大好きなエロゲーのヒロインだったし……ってぇええええ!
なんてもんを女子に見せようとしてんだよ! バカか俺は!?
じゃなくて! んなことよりも……
あれ? なんでだ?
やっぱり、親の顔がおかしい。
ぼやけていると言うか、重なっていると言うか。とにかく誰が誰なのか判別できないのだ。
まるで、複数の両親が存在しているかのようだった。
混乱する思考を止めたのは、か細くて弱々しい声えだった。
「え。と……。その、お……。おは、よう、ご、ざいます……」
まるで想い人に再会したかのような期待感に鼓動が高鳴った。
だからこそ、無理やり笑顔作りながら隣の席に向け――
「あっ! 俺、相場勇気! よろしくなっ! ――っ!?」
彼女を見て固まった。
えっ? なにこれ? どゆこと?
小柄ながらも、女の子らしい体つき。
肩にかかる栗色の髪を少しばかり内側にカールさせた髪型。
口元にある小さなほくろまでもが
それに声色――
そうだよ! これ胡桃の声じゃん!
やや幼い感じはあるが、とても良く似ている。
よもや、エロゲーのヒロインとリアルに会える日が来るとは思わなかった。
「あっ、っと、えと、その……うん……」
どう対処して良いのか分からず。それでも、とりあえず笑みを浮かべてから席につく仕草とか。
おどおどしながらも、佐藤達と挨拶を交わしてるとことか。
も~~~~何から何までが可愛らしくって!
無性に頭を撫でたくなる衝動に駆られた。
子犬や子猫を見るとついつい頭を撫でたくなっちまうアレと一緒だな。
実に可愛らしい!
彼女の名前が
なんか、もう。さっきまで悩んでた事がどうでもよくなっていた。
だってさ、大好きなヒロインのそっくりさんに逢えるとか、超レアだろ!?
こうなったら、なにがなんでも好感度稼ぐしかねぇって!
「いや~! まいったまいった! スマホ家に忘れてきちまったみたいでさぁ~!」
無理やり明るい雰囲気を作ろうとしたのが、そんなにもまずかったのだろうか?
三人そろって、不思議な生き物を見る目で俺を見つめていた。
しばらくすると、佐藤と如月さんがアイコンタクトで意思疎通を交わし。
佐藤が口火を切った。
「なぁ。相場……。その、けーたいとか、すまほって言ったっけ? そりゃ、なんの事だ?」
「やっ! だからさぁ!」
俺は、普通に説明した。
なかなか分かってもらえなかった。
そこで詳しく説明した。
説明すればするほど、相手の頭上に?マークが増えて行く。
あげくの果てに……
「がはははははは!」
佐藤は、俺の机をバンバン叩きながら思いっきり笑い。
如月さんも、お腹を抱えながら笑っている。
「も~! なにそれ~! SFじゃないんだからさぁ~」
江藤さんにまで、「くすくす」と笑われてしまっていた。
「いや~! お前、面白れー! っつうか、最高だよ! 俺も、それなりにネタ考えてきたつもりだったが。お前にゃ負けたは!」
完敗だ、完敗とか言いながら溢れ出した涙を拭っている佐藤は、すごく満足そうだ。
はっきり言って面白くない。ってかムカつくわ!
なんで、俺が笑われなきゃなんねぇんだよ! わけわからんわ!
「相場君ってもしかすると、作家志望だったりするの?」
「んなことあるか! 俺は純然たる消費者であって創作者じゃねぇんだよ!」
「あ、あの……、も、もしかしてなんだけど……」
「え?」
江藤さんが小さく手を揚げていた。
「そ、その。相場君の言ってるのって……無線の事だったりするのかなって?」
「無線って何?」
「えっと、だからね……」
小さい声ながらも精一杯、説明してくれた内容を取っ掛かりにした俺は――
今度こそ! と、ばかりに思いつく限り言葉を並べた。
それなのに……
何一つ間違った事を言ったつもりは無いのに……めっちゃ笑われた。
「いや~! お前、ホント。さっちんの言う通り将来作家になるべきだって! なぁ?」
「えぇ。設定も悪くないし、発想だって面白い。後は書き方覚えればいいだけじゃない」
「だからっ! 俺は、書く方じゃなくて! 読む方専門なんだよ!」
ったく!
どんだけ仲良いんだよお前ら!
楽しそうに笑いやがってさっ!
ちっくしょー!
めちゃくちゃ悔しいが、客観的に今の自分を見ると……
自分が間違っているようにしか感じないのも事実。
「以上が、今朝見た夢の内容でした!」
全てを夢落ちで片付けると――
みたび、笑いの渦が起こっていたのだった。
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