エピローグ
来賓室にて一息ついたとき、SPの一人が近づいてきてこう言った。
「先程の軍法会議での検察二人と弁護一人、計三人の軍司法官がお見えです。ボディチェックは完了しております。お通ししますか?」
「検察も?それは意外だね。いいよ、お通しして」
「先の会議では失礼を重ね、申し訳ございませんでした、先生もさぞお気を悪くされたかと思います。お詫び申し上げます」
「大丈夫、検察ってそういうもんだと理解してるよ」
「そう言って頂けるのはありがたいことです」
「ところでVIP待遇での終身刑ってどういうつもりだったの?」
「VIPとして、監禁ではなく軟禁に近い形で王宮に留まっていただくつもりでした」
「なるほどね、今みたいにSPに守られながら監視されながら王宮で生活を続けるようにってことかな」
「左様でございます」
「というか、そこまでかしこまらなくてもいいと思うよ?元部下だし」
「そういうわけには参りません、MIP先生は既に文民、しかも既に公務員ですらいらっしゃいませんので、軍人としては殊更丁寧にお話させていただかないといけません」
「いろいろあるんだねぇ…」
「はい、軍人は、気を抜くと威圧感の塊に見えてしまいますゆえ」
「まあね、確かにね。わかる気はするよ」
「元弁護人はどう思った?」
「はい、こちらからの死刑求刑までは上手くいったかと思いますが、果たしてこのような方法がお気に召したかどうかが気がかりです。深麻酔下での薬殺などを想定しておりました」
「そうだね、そういう方法は頭にあったよ」
「あとは、王様に抱かれて新上席王宮獣医官に見守られて王様の手をペロペロと舐めて─」
「いや、だからそれは冗談だよね?」
「はい、冗談です。しかしまさか老衰ということまで再現して死刑が執行されるとまでは思いませんでした」
「今後どうなるかわかんないけど、弁護してもらって本当に助かったよ。ありがとう」
「恐れ入ります。どうかご無事に老衰でお亡くなりになることをお祈り申し上げます」
「変な祈りだなとも思うけど、それが王様の意思だもんね」
夜、SPの当番が交代した。新たなSPが配置に着いた後、元々いたSPたちが一礼の後に引き上げていった。
こうして、老衰で死ぬまで死ねない生活が始まった。
─了─
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