第2話 初めての別れは幼稚園で
それは、ユウトくんが幼稚園に入園した頃のこと。一人っ子だったユウトくんは、同年代の子供達とどうやって遊べばいいのかわからず、話しかけることもできない内気な子でした。先生はそんなユウトくんの性格を理解して、
「みんな、ユウトくんも一緒に遊んでいいかな?」
とグループの輪の中に入れてくれました。
幼稚園くらいの子供達はとても素直で優しい心を持っているので、すぐにユウトくんと仲良く遊び始め、ユウトくんが友達を作るのに然程時間はかかりませんでした。
ユウトくんは、おうちでもひとりで遊ぶので、みんなと遊ぶことが楽しくて仕方がありません。積み木遊び、鬼ごっこ、お絵かき、折り紙、いろいろな遊びをみんなと楽しみました。
そんな様子をお母さんも見て、安心していました。
「ユミ、仕事で異動が決まった。転勤になる」
ある日、ユウトくんのお父さんがお母さんに告げました。突然、転勤が決まったというのです。
「転勤? ユウトはやっと幼稚園でお友達ができたんですよ」
「仕方ないだろう」
仕方ない。こればかりは仕方のないことでした。お父さんが仕事をしないと家族みんなが生きていけないし、お父さんが仕事を続けるためには今の家を引っ越さなければならなかったのです。
ユウトくんが幼稚園に入園して、半年しか経っていませんでした。
お母さんは申し訳なさそうに、ごめんねと謝りながら、幼稚園が変わることをユウトくんに告げました。
「ユウト、ごめんね。お父さんの会社が変わるから、お引っ越ししなきゃいけないの。せっかくお友達ができたのに、幼稚園も変わっちゃうの。我慢してね」
ユウトくんは、本当は嫌でした。せっかくみんなと仲良く遊べるようになったのに、そのみんなと離れ離れになることが嫌でした。
「ぼく、またひとりぼっちになっちゃうの?」
自分から友達を作ることが苦手なユウトくんは、心配そうにお母さんに尋ねます。
「大丈夫よ。ユウトならすぐにお友達ができるわ。前のお友達もユウトのお友達なんだから、たくさん増えちゃって大変ね」
ユウトくんはお母さんのその言葉に励まされました。お友達が増えて、楽しくなるな、と思いました。
「わかった。ぼく、またお友達たくさん作る!」
「良い子ね。お母さん、良い子は大好きよ」
そう言って、お母さんはユウトくんをギュッと抱きしめました。
引っ越しの日、ユウトくんの家にはお友達がたくさん集まりました。みんな手を振ってくれます。ユウトくんも、手が痛くなるくらい振ってお別れしました。
「また遊ぼうねー!」
本当は悲しくて泣きたかったけれど、ユウトくんは涙を我慢して笑って手を振りました。だって、ぼくにはこれから新しい友達ができるから。
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