ネズッチ視点~舞踏会・後編~

ネズミの姿の際には、月の光しかない薄暗い部屋で会っていたので、俺はシンデレラの容姿をボンヤリとしか把握していなかった。


明るいシャンデリアの元で、シンデレラは彼女の瞳と同じアイスブルーの煌めくドレスをきて、どのご令嬢より輝いて見えた。


あの屋敷の階段を昇り降りして、鍛えられて足腰がしっかりしているせいなのだろうか。シンデレラのカーテシーは、一切の体幹のブレのない見事な動きで、見とれてしまった。


そんな見惚れていた俺の様子を見抜いた国王が、シンデレラをダンスに誘えと言う。

俺は『シンデレラに嫌われる作戦①』を思い出し、無愛想に「手を」とだけ言った。


すると、なぜかシンデレラはお縄になる犯罪者のごとく、両手首を俺に差し出してきた。


「いやいやいや、この流れでなんでそうなる!手錠しねぇから!」と内心で盛大にツッコミ、吹き出して笑いそうになるのを俺は必死に耐えながら、シンデレラをダンスフロアにエスコートした。


ダンスが始まり笑いはおさめることが出来たが、シンデレラと密着している状況にまた頭に血が上ってきた。

シンデレラの白いうなじとか、華奢に見えて実は筋肉質な所とか、目に入る度に鼻血を吹き出しそうになっていた。

途中でようやく『シンデレラに嫌われる作戦②』を思い出し、ダンスのステップを間違えたフリして足を踏もうと頑張ったが、シンデレラには華麗なステップでかわされてしまった。


シンデレラ、久しぶりのダンスって、絶対嘘だろ·····と思いつつ、躍起になって1回くらい足を踏もうとしてるうちに曲が終わってしまった。


シンデレラは曲が終わると共に駆け出して行ってしまったが、俺は無意識に彼女の後を追いかけてしまった。

人気のない部屋で追いついた瞬間、『シンデレラに嫌われる作戦③』を決行しようと思いつき壁ドンをした。


すると、シンデレラは上目遣いで少し震えながら「申し訳ございません。お許しください」と言った。

俺は、その可愛さにノックアウトされ、とうとう鼻血を出してしまった。上目遣いは反則だろ。上目遣いは!

鼻血をおさえる俺に気付かず駆け出すシンデレラに、俺は「待ってくれ!」と声をかけるのが精一杯だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る