Big Bad Bingo

 「サッカー部の様子見にいってたんでしょ?」


 ドアを開けると、長机で文庫本を読んでいた茜が訊いてきた。


 「そうだよ」


 「やっぱ、まだ未練あんだ」


 「人付き合いで行っただけだよ。未練なんてない。原博実になれないのは、もうわかったからな」


 僕は鞄を適当に床に置くと、パイプ椅子に跨った。


 「ふーん……"アジアの格納庫"だっけ」


 「"核弾頭”だよ。てか、そっちこそまだあんじゃないの? 俺と違って将来……」


 「忘れた?」


 突き刺すような声だった。 


 「なに? 何を忘れたって?」


 「だって前に、その話はもうしないって、自分で言ってたじゃん」


 「そうだったっけ……ごめん……」


 少し気まずくなった僕は、椅子から立ち上がり、部室の窓を開けた。ボールを蹴る音と掛け声が、よりハッキリと聞こえてくる。


 「いま読んでんのって、また難しい小説?」


 「難しくはない。三毛猫ホームズだよ、ていうか難しい本なんて読まないし。そんなイメージあったの?」


 「うん……まあ、なんか……いつも難しそうな顔してるし……」


 茜は何も答えずに読書を続ける。生温い風が入り、その短くなった後ろ髪を揺らした。


 「なあ、怒ってない……?」


 「は? なにが?」


 「いや……また怒るかと思ったから」


 「別に怒ったことないけど……たぶん。あ、これ、今度の予選のインタビューのこと書いてあるから……卓球部の」


 手渡されたプリントを見ると、箇条書きが四つ、十分過ぎる間隔を開けていた。


 「これだけでいいんだっけ?」


 「いいんじゃん。先輩が書いたんだし」


 「そうか……いいか……。てか、あの先輩達って」


 まだ、放送部に関わっていたのかと訊こうとしたとき、茜が戸棚を指差した。


 「そこの引き出し、開けてみなよ。おもしろいの入ってるよ」


 「今度はなんだよ?」


 「"心の声の録音機”の話、覚えてる? あのときさ、やけに興味を惹かれてたよね」


 「はあ? くだらねえ……何を言い出すかと思えば……。そんなもん、今の今まで忘れてたよ……つうか、どうでもいいしそんなの……」


 「ハズレか……そういうの好きそうだと思ってたんだけど」


 茜の声色は、それでも無機質だった。そしてそれが、その日ふたりが交わした最後の会話だった。


 僕は、部室から出た茜が廊下を曲がり、下駄箱に向かうのを確認すると、戸棚の引き出しを開けた。




 「この人、若草物語のエイミーでしょ? リズって名前じゃないんだ……」


 「それは愛称だな。本当はエリザベス、縮めてリズってことか」


 「ふーん、今度この映画やるんだ」


 「うん、だいぶ先だけどな。美味いな、天ぷら」


 今晩は珍しく、父が自宅で夕食を食べている。


 「で、茜は中学……何部に入るんだ?」


 「まだ決めてない。でも、陸上には入らないかな」


 「そうか。じゃ、いっそ父さんみたいに……いや、なんでもない」


 「うん、放送部もいいかもね」


 父が半笑いのまま、私の顔を見つめている。


 「お父さん、この前もその話したよ」


 「そうか……そうだったな……」


 「綺麗だね、やっぱり」


 「なにが?」


 「リズだよ、エリザベス」


 「ああ……綺麗だ。綺麗だな」


 そうだ。こんな綺麗で素敵な女優さんだから、あいつにリスなんて呼ばれても怒る気にならなかったんだ。リスとリズ……響きが似ているだけとはいえ。


 「母さんは、もう町会から戻ってくるかな」


 「うん。そういえばユカのお父さん、また部署変わったんだってね」


 味噌汁の椀を取ろうとしていた手が止まり、少し悲しげな目が私を見た。


 「よく知ってるな……母さんが言ってたのか?」


 父の声は、弱冠震えていた。


 「うん、こないだユカのお母さんと会ったときに聞いたって言ってたかな……どこに移ったの?」


 「そうか……ああ、ちょっと国外にな」 


 「え……それって、もしかして海外特派員とかいうやつ? すごいじゃん!」


 「いや……そういうのとは、少し違うんだ」


 そう言って、父がまた椀を取ろうとしたとき、ガラガラと戸が開く音がした。


 「帰ってきたね」


 「ああ、帰ってきたな」


 母を迎えに玄関に行くと、式台に見慣れない郵便物が置かれていることに気がついた。


 「ああ、ただいま。父さん食べてる? あ、そうだそれね、さっき届いたの。あんた宛ね」


 厚みのある封筒を手に取り裏を返すと、そこには"彼女”の名前が書かれていた。




 「ううん、そこは大丈夫だよ。女子でも入部出来るし」


 「だから、そういう意味じゃないって。私、陸上部辞めるつもりないから」


 「そう……」


 よく響く声と、大きく開いた目は迫力満点だった。


 「それにさ……どうせ下心でもあるんでしょ。他の男子じゃなくて女の子入れようなんて」


 「いや、ちゃんとした理由だよ。三枝さん、ヘディングとか上手そうじゃん、俺より背高いしさ。て言っても、俺がチビなだけかもしんないけど……あと足だって速いじゃん」


 「だから、それなら男子でいいわけでしょ」


 「うん……そうなんだよね」


 それ以上言葉が出なかった。完敗だ。これなら早く次の候補に声を掛けるのが賢い選択だろう。


 僕は適当に話を終わりにして、三枝に背を向けると、早足で教室に戻った。


 「どうだった?」


 席に着くなり、武史が後ろを向いて聞いてきた。


 「全然駄目だよ。茜にも断られたら諦めよう」


 「そうか駄目だったか……期待してなかったけど残念だな」


 「なんだよそれ」


 「え?」


 「だって、おまえから言ったんじゃん。女子が入れば色々と……なんだっけメリットだかがあるって……おまえは誘い方が上手いから大丈夫だって……それなのに期待してなかったのかよ」


 武史は僕の顔をまじまじと見たあと


 「うん……そうなんだよね」


 と、さっきの僕と同じ台詞を言った。


 「うん……そうなんだけどさ……おまえも乗り気だったじゃん」


 「違うよ。俺はそういうんじゃなくて、ふたりの親がテレビ局で働いてるからだよ。俺テレビ好きだしさ。会えるかもしれねえじゃん有名人に……原博実とかさ」


 「原博実って……人間爆弾だっけ?」


 「"アジアの核弾頭”だよ! どんな間違いだよ、つうかサッカーやってんなら覚えとけよ!」


 チャイムが鳴り戸が開くと、ゴンゾー先生が教室に入ってきた。


 「でも浜島なら来るかもな。おまえら仲良いじゃん」


 と言って武史は前を向いたが、自分が茜と仲良しと思ったことなんて一度もない。苗字でなく名前呼びなのも"浜島”が、なんとなく呼びづらいからだ。


 「なんで、そう思うんだ?」


 小声で訊いたが返事はない。もう授業が始まっていたからだ。


 僕は先生の叱り声が届く前に、急いで教科書を開いた。




 「ああ、私もいま行こうと思ってた。どうしたの?」


 教室の戸を開けると、ユカが廊下に立っていた。


 「うん、たいしたことじゃないんだけどさ……ほら、茜のこと栗鼠みたいだとか言ってた奴いるでしょ。例のちっこい子」


 「ああ……サッカー部の」


 「うん。その子にさ、部活の勧誘受けたんだよ、さっき。なんか女の子入れたいからって。断ったけどさ、今度は茜が声かけられるよ」


 「は? なんで私が?」


 「"次の候補”なんだって……ほら、噂をすればだ」


 ユカが後ろを振り返る。


 一番奥の教室から出てきた"ちっこいの”が、こちらへ歩いて来るのがわかった。


 「どうする? また私が追い払おうか」


 「ううん、大丈夫だよ。そんな悪い奴でもないし、向こうもひとりだしさ。よくわかんないけど、話だけ聞いとくよ」


 「そう……じゃ、また放課後ね」


 ユカが自分の教室に戻っていくのを見計らったように、奴が速度を速めて近づいてきた。


 「やあ……ちょっと久しぶり……つうか元気?」


 なんだか白々しい笑いを浮かべている。


 「ねえ、私も陸上辞める気ないから無理だよ」


 「え!」


 「じゃ、戻るね。変な噂たてられても嫌だし」


 「待った!」


 引手に掛けようとした私の手を、奴が掴んだ。


 「あ、ごめん……。でも、そんな、なんつーの……冷たいっていうか……」


 「素っ気ない?」


 「そう、それ! あれ……もしかして、こないだ栗鼠って言ったの怒ってる?」


 「怒ってないし、普通の態度のつもりだけど」


 「そう……なら、良かった。わかったよ、じゃあ、ごめん……」


 肩を落として戻ろうとする奴に、ちょっとだけ気になっていたことを尋ねた。


 「ねえ、なんで私のこと栗鼠みたいだと思ったの?」


 「へ? ああ……あれか」


 奴は顎に手をあて、上を向くと


 「あれ、最初は三枝さんに言うつもりだったんだよ」


 と、言った。


 「ユカに?」


 「うん。あのふわふわしたポニーテールが尻尾みたいに思えてさ、目もパッチリしててチップに似てるなぁと思って……あ、『チップとデール』のチップね」


 「それが、なんで私の方に?」


 「それは……茜と三枝さんて顔が似てるって言われてるじゃん。俺も二人が並んでるのを見て、同じこと思ってさ。目のここら辺……目尻だっけ? そこはちょっと吊り上がってるけど茜の方がちっちゃいし。髪もショートだけど、逆にそこが……チップぽいなぁって……やっぱ……怒ってる?」


 そこまで言うと、奴は私の方に向き直った。


 「だから怒ってないって、さっき言ったじゃん」


 と答えたものの、きっといまの私は、それなりにきつい声遣いをしているのだろう。現に奴はまた天井を見だした。


 「栗鼠の件はわかったよ……じゃあ私も戻るから」


 「あ、俺もひとつ聞きたいことあるんだけど……」


  奴が、またまた私に向き直る。


 「なんで、入部の誘いだとわかったんだ? たしか三枝さんには茜のことは話してないし……」


 「そんなの大体検討つくでしょ。でも、もしかしたらアレを使ったのかな……」


 「アレ?」 




 その小型テープレコーダーは、部活で使っていたのと全く同じ製品だった。やはり、小馬鹿にされただけなのかとも思ったが、中には見覚えのないカセットテープが入っていた。


 とりあえず、試してみなければわからない。ちょうど下から、母さんの呼ぶ声がする。僕は夕食中の両親の声をダビングすることにした。


 食事中、二人に会話はなかった。きっと昨晩の喧嘩が尾を引いているのだろう。気まずい雰囲気ではあるが、いまの僕には都合が良かった。


 「ごちそうさま」


 おかわりをせずに、箸と茶碗を洗い桶に入れる。


 「あら、もう食べないの?」


 「ああ、なんか……あんま腹減らないから」


 小走りで二階へ駆け上がり、部屋に入って鍵を閉める。


 期待に胸を膨らませ、ポケットに忍ばせていたレコーダーを机に置いて巻き戻したあと、再生ボタンを押す。


 だが、流れてきたのは知らない男女の声だった。


 「山下の……五時……豆腐……しなきゃ……どうすんだろこれ……」


 意味不明というか、脈絡が無いというのか、そんな言葉が暫く続いたあと、女の声が僕の名を言った。


 一度停止ボタンを押し、心を落ち着かせ考えてみる。


 これは、恐らく録音に失敗したのだろう。だから元々テープに入っていた声が流れてきたのだ。いや、それなら何故僕の名が出てきたのか。それも偶然のうちと片付けるのは簡単だが、やはり事前に音声を確認しておくべきだったのではないか……。


 録音機は本物か? 声の主は何者か? いずれにしても、もう一度試してみる価値はありそうだ。ならいっそ、相手を変えてみるのもひとつの手だ。


 明日、前もって部室に行き、中身を変えた部活用のレコーダーを引き出しに入れ、放課後に決行する。どうせ真面目に出席するのは二人だけだ。何も問題は無い。


 肩の力が抜けた瞬間、一気に疲れがわいてきた。畳の上に大の字になり眼を瞑ると、今さっきのことが頭をよぎった。


 「あ……豆腐だ……」


 そう、夕飯のおかずは冷奴だったのだ。




 その日、初めてテープレコーダーを手にした。


 「へえ、これで録音出来るんだ。でも、広告とかに載ってるのと同じだね。おじさん、これ仕事で使ってるの?」


 「ううん、それは撮影用のでも何でもないから」


 「そうだよね、もっと大きな機材とか使うよね」


 「うん、まあ……あと、それ使ったら結構大変なことになっちゃうらしいよ」


 「大変なこと?」


 校門を閉める音が聞こえてくる。いつの間にか、空も薄暗くなっていた。


 「それ、喋ったことじゃなくて、心の中で思ったことを録音しちゃうらしいよ」


 「心の声ってこと? SFとかのテレパシーみたいなもん?」


 「SFの中だけじゃないよ。ほら、こないだ超能力者がどうのって、テレビで騒いでたじゃん」


 「テレビでやってたっけ? 私、洋画劇場以外はそんなに観ないからなあ……でも」


 あいつなら、きっと知ってるだろうな……。


 歩道の反対側では、サッカー部員達が、燥ぎながら帰り道を歩いている。


 「ねえ、あの子去年、茜と同じクラスだったっけ。頑張るよね、背だって高くないのに何度もヘディングしようとしてるし」


 「うん……たぶん原動力みたいのがあるのかなあ……目標にしてる人がいるとか」


 「じゃあ……茜は、そういう人とかいるの?」


 「うん。ユカだよ」


 私が、なんの躊躇いもなく答えたからか、ユカは少し焦ったように見えた。


 「あ……本当だよ。だって私、ユカと一緒だから陸上なんてやってられるんだもん。ユカが辞めたら、たぶん私も辞める」


 「そうなの……? でも……そしたら私もう……」


 「なに……?」


歩道の反対側で笑いが起こる。ユカは話を逸らすかのように、サッカー部員達に視線を移した。


 「ああやって楽しそうだけど……中学行ったら、もっと大変になるんだろうな……どの部活もさ……でも私は、もしひとりになっても陸上は続けるよ」


 「やっぱユカはすごいな。あ、ねえ……これなんだけどさ」


 私はそっとユカの手を取り、レコーダーを返した。


 「これなんだけどさ、もし本当に、もしだよ……いらなくなったりしたら……私、貰ってもいいかな?」


 「貰ってもって……それ、パパがスタジオの奥で偶々見つけたもんだし……もしかしたら誰かの………ていうか、なんで?」


 「うん……ごめん、なんでもない。ただ……なんか、もし自分が大人になったときに、何回か必要になることがあるんじゃないかなって、いまちょっと思っただけ。あと、試してみたいと思った奴もいるから……」


 ユカは立ち止まると、握っていたレコーダーをじっと見つめた。


 「怖くないんだ……? 茜はこれ使うの。ひょっとしてその相手って、さっきの子?」


 「え……ああ、うん。あいつに使ったら、おもしろいかなとは思う……」


 「うん。たしかにそうだね。おもしろそう」


 ユカがそう言ってクスクスと笑ったとき、生温い風が吹いて、その長く結んだ髪を揺らした。


 「私も髪伸ばしてみようかな。どう思う?」


 「え、うーん。そうだなあ……茜はどっちかといったら……」




 「昔からテレビを観てて、なんだか違和感を覚えるような場面があったんだけどさ、これのおかげでわかったよ」


 そう言って録音機を長机に置いても、茜は反応せず読書を続けている。ここ一ヶ月、変わることのない光景だ。


 「心の声が出てくるアニメとかあんじゃん。エスパー魔美とかさ。でもあれ、聞こえてくる相手の声は、実際に喋ってるときのと同じ声質なんだよ」


 「と、言うと?」


 ページを繰る手が止まる。


 「俺、録音された自分の声を初めて聞いたとき驚いたんだ。喋ってるときに聞こえるのと全然違う声質だったから。きっと、みんなも同じ経験があるはずだ。でも、それが他の人間にとっては普段聞く俺の声で、俺にとってはその逆ってことなんだ」


 「逆……か」


 茜は文庫本を置き振り向くと、僕の顔を見上げた。


 「だってそうじゃん。録音された自分の声を当然のように聞いてるのなんて、それこそ歌手とか、テレビやラジオの仕事をしている人間くらいだろ。だからそれ以外の人間にとって、心の中で出そうとする声ってのは"他の人間が聞く自分の声”にはならないはずなんだ。母さんや父さんの声が違ったのは、そういうことだったんだよ。そして、茜の場合は……」


 「私の場合は? どんな声だったと?」


 「あれは……チップの声に似ていた。前にテレビでやってた"チップとデール”の。俺、テレビ好きだからさ、覚えてたんだよ。あれはわざとだろ……? てゆうか、おまえもあのアニメ観てたんだな」


 茜の視線が窓の外に逸れる。空の色は、少しだけ暗くなっていた。


 「で、他に証拠となるものはあるのかな? ホームズ君」


 「棒読みでそんなこと言うなよ……。そんなの、あの告白を聞けば……あれふざけてたのか……? 最初から馬鹿にするつもりで」


 「本気だと言ったら?」


 「本気だったらって……いや、なら僕も……じゃない! 俺も実は……前から茜のことが……」


 椅子がガタリと音をたてたかと思うと、目の前に茜の顔があった。その俊敏な動きは、まるで栗鼠のようだった。


 「ビンゴ」


 「え……?」


 「ビンゴ!」


 それは、僕が知っている茜からは聞いたこともない、悪戯っ気に満ちた声だった。




 『あの日から気が変わっているのなら、そのまま処分してほしい』


 手紙には、そう書かれていた。


 気が変わったというわけではない。でも、あいつに対して自分で使わなかったのは、違うやり方を考えたからだ。


 その頃、まだ部活に来ていた先輩が、レコーダーの購入を提案したのはラッキーだった。私に送られてきたのと同じ製品を薦めると、先輩も同意してくれた。


 これであとは、機を見て引き出しの中身を入れ替え、適当に理由をつけて、あいつに持たせて録音させれぱいいだけだった。


 それなのに中々決心がつかなかったのは、やはり彼女が言っていた"怖い”という気持ちが、心の隅っこにまだあったからかもしれない。


 そうこうしているうちに、部室には私達ふたり以外来なくなり、自然と部の活動内容も薄っぺらくなっていった。


 「"心の声の録音機”の話、覚えてる?」


 不意に口から出た言葉が、あいつにとっては覿面だった。それだけ最初に立てた作戦が、回りくどかったということでもあるのだろうけど。


 そして私はいま、あの日の彼女と同じように、握っていたレコーダーを見つめている。


 「ユカ……きっと帰ってくるよ……」


 窓の外に顔を出し耳をすますと、遠くから飛行機の音が聞こえてくるような気がした。



(了)

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