第10話 紙媒体が変わった。お次は?

 女は、毎日SNSを訪れては、確認をしながら諸先輩マンデラー様方の情報を得たり、アドバイスを受けたりしながら、なぜこうも違和感たっぷりで、ここではないへ帰りたいのか、頭がおかしくなってしまったのか、毎日の様に考えていた。


 どんなに大先輩マンデラー様方に素晴らしい為になるアドバイスを頂いていても、なかなか腹に落ちてこない。


 それより、このムクムクと湧き上がる苛立ちは、一体全体何なのだろう?帰りたいのだ、異体字や二点しんにょう等が存在しなかった世界に。


 ここではないのは確かだ。が、元の世界線が消滅したか、こちら側へ融合されて、吸収されてしまったなどの意見も聞いた。職場環境や周囲の状況は殆ど以前の世界線と変わらないと感じた。


 願えば叶う。引き寄せで今よりもっと素晴らしい世界線へ移れる。


 そんな意見も聞いた。

 が、女は、ただひたすら以前の世界線へと戻りたかった。

 毎日毎日、朝起きて、戻れたか否かを期待を込めて確認していた。


 ……二点しんにょうが無くなる日は来なかった。


 家にあった百科事典や職場にあった字典や辞書が違う。

 SNSでは、内蔵の位置まで変わっているという情報があちこちに見受けられた。

 女は、起床時から、何か行動を起こすタイミングがズレまくり、朝からイライラするようになった。

 まさか体が自分のものではない、などとは、夢にも考えていなかった。


 (あの日は、本当に気持ち悪かった。今よりももっと、違和感が有った)


 本人が躰ごとこちら側へ来たのだろうか?衣服や持ち物もそのまま?

 持ち物は変わりない。自分のだ。仕事にしたって、今のところ不都合は無い。(四ヶ月後に発生するが、マンデラエフェクト当初は支障なかった)

 

 だんだん月日を重ねるにつれ、どうも躰の動き方や、順番と言うか、習慣、行動がおかしいと感じる妙な気持ちになっていた。


 違和感と絶望感、そしてイライラ。帰りたいのに帰れない。自宅に帰っているのに、である。この矛盾した気持ちにイライラが重なり、コロナ騒動も手伝って、何処へぶつけて良いか分からずに、無意識にSNSへと吐き出していた。

 

 そうこうするうちに、老母と女のそれぞれの病院受診や健診の日程が近付いていた。

 マンデラエフェクトをした月の下旬になっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る