~幕間~
次回談「桃髪の少女」
いつもと変わらない平凡な日常。
そんなありふれた日常の中に、一人の少女の姿があった。
幼くも賢いその少女は、憧れた人の背をいつまでも追い続けていた。それが叶わぬことだと知っていても、ずっと——
周りは少女を冷たくあしらったが、それでも少女はめげずに頑張り続けた。
——弱かった自分が許せなくて。あの時の自分が憎たらしくて。
だが、力を付けようと頑張っても、それはいつも良い方向へは行かない。どうあがいても無駄に終わってしまう。
そんな居た堪れない心情の最中、彼女はマントを身に着けた数人にその身柄を拘束され——
目隠しをされた真っ暗な世界。彼女はただ、どこかへと運ばれていった。助けを求めることもしなければ、暴れることすらもしない彼女に、彼女を連れ去った連中は一切危害を加えることがなかった。
彼女自身、この世界で起こったかつての惨劇を踏まえ、もう生きることそのものを諦めていたのかもしれない。辛く苦しく、そして耐え難かったかつての戒めを、もう忘れてしまいたかったのかもしれない。
そう、思われていたところ、ふいにどこかに止まった。
「只今より、逆召喚を行います」
そして、彼女の身がまばゆい熱に包まれはじめ————
「エリクおにいちゃん————」
その時、彼女の脳裏に一人の青年の姿が浮かび上がった。
その後、この世界で彼女の姿を見た者はいない。
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