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パラパラとめくってみる。どうみても、ライダースの注文書じゃないものも混じってるけど。
「それにしても、今思い出しても腹が立つわ! 自分勝手にも程があると思わない!?」
どうやら、青いファイルが【にオカ】の余計な記憶を呼び覚ましたらしい。
「良かったじゃない。そのおかげで新歓の目玉が決まったんでしょ?」
「それでも、感情は釣り合わないのよ!」
ライダースの注文書を見つけると、私は携帯を取りだし、メモ帳に入力しておいたリストの名前の一覧を開く。
「座って」
「ありがとう」
青い丸椅子を勧められて、腰を下ろす。【にオカ】は私の向かいにわざわざ移動して、座った。
リストの中に、同じ名前がないか確認していく。
「何? 個人的なものなの?」
「委員会活動ね」
「校紀委員会ってほんと、なにやってるか分からない委員会よね」
「それを売りにしてるからね」
「もう。説明がややこしいだけでしょ?」
「そうね」
面倒臭いだけとも言うけどね。
「それで? これは何かのヒントになりそうかしら?」
「さあ? まだ分からないけど」
リストを下へ進めながら、五十音順に入力すれば良かったと後悔した。記憶に間違いがないか時おり注文書を確認しながら、数分。同じ名前を見つけてほくそ笑んだ。
「ねぇ、どんなやつだった?」
「別にパッとしないヤツよ! 他の人と同じような茶色の髪に、平均よりちょっと低い身長に、肉つきも普通で、しょうゆともソースとも言えない顔つきの子よ!」
詳細ではないにしても、全体を見渡していたことは分かった。
「全く同じ形にしてくれって口酸っぱく言われたのよ! 一緒に勲章みたいなものも何個か作れるか? とか色々言ってきたくせに、ドタキャンよ! 最悪! もう本当に信じられない!」
どうやら顔を思い出して、怒りが再熱したらしい。さっきの怒りも収まってなかったんだろうけど。痰を切ったように捲し立てる【にオカ】をよそに、私は発注書を写メに納めた。
「それからライダースの発注はないのよね?」
【にオカ】が息をついたその瞬間を逃さず、質問を挟む。
「ないわよ! 1つもね!」
さっきまでの勢いをそのままに、答えは返ってきた。
1年間。鈴木 良成とは同じクラスだったけど、ライダースって見たことないのよね。まあ、たまたまかもしれないけど。上着はそうそう取り換えるものでもないだろう。オシャレして出掛けるところもないから、勝負時にとっておく必要もないだろう。いや、今がそのとき? だとすれば、アイツは入学前から狙ってたのか? ありえない。
ならば、どうやって手に入れたのか。
この学校での他の入手方法といえば、親からの仕送りくらいだ。寮母さんのチェックは入るが、ライダースが没収されることはないだろう。その他部活動と提携している業者は、それも教師が受取・検品しているし。あとは、調達屋か。情報屋以外にも、取引しているヤツがいるのか?
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