その1 ここから、はじまる
公開中の作品『
【登場人物】
・
営業部員。
・
員。
・
静かで落ち着いた、
大人の男性。
この作品は、化粧品メーカーのコンテスト
参加作品として、過去に制作したものです。
(コンテスト参加日:2020年6月10日)
──────────────────────
① 劇場・外観
──やや仰角で。
劇場と商業の複合施設。オフィス街の
喧騒。
② 同・接客スペース(中)
パーテーションで囲まれた接客スペー
スに、テーブルを挟んで
談中。潮、女性らしいスーツ姿。将之、
ネクタイを締めたスーツ姿。
──将之の視点で。
書類を見乍ら話している潮。
× × ×
じっと(潮を)見つめている将之。熱
い眼差し。
扉の前に潮。ノブに手をかけて、
ざいます」
将之「(落ち着いて)
潮 「はい?」
将之「(落ち着いて)私と──お付き合いし
ていただけませんか?」
扉の前に潮。真面目な顔。
潮 「(真剣に)私、お取り引き先の方とは、
個人的なお付き合いはいたしません」
瞠っている将之。
③ 同・接客スペース(外)
潮のM「ところが!」
潮(手)、バンッと接客スペースの中
から勢いよく扉を開ける。
扉に立ち、目をきつく閉じて歯噛みし
ている潮。その扉の前、盗み聞きをし
ていた男女の営業部員(五~六人)。
慌てふためいている。
潮のM「コレ! 盗み聞きされて、一気に広
まり!」
④ 同・営業部(中)
座っている
──────────────────────
社外恋愛も、禁止してはいないが」
葦原の傍に潮。前で手を合わせて、き
つく目を閉じ、歯噛みして立っている。
潮のM「じゃなくて! じゃなくてね!」
⑤ 同・外観
シーン①同様。
⑥ 同・接客スペース(外)
はっと息を飲む潮。
潮(後ろ姿)の視線の先、立っている
将之。
互いに礼をする二人。
潮、接客スペースのノブを取り──
⑦ 同・接客スペース(中)
ゆっくり扉を開けていく潮。その後ろ
に将之。
テーブルを挟んで、商談中の二人。
潮のM「これは言いたくない」
机上を見乍ら話しをしている潮。
机上から視線を上げる将之。熱い眼差
し。
──将之の視点で。
机上を見乍ら話している潮。将之と視
線を合わさない。
× × ×
潮のM「言いたくなかったんだけど……」
と、書類をゆっくりと机上に置く。
俯いている潮。暗い顔。
潮 「あの……先日のお話しですが……」
そのままP.Dしていって潮の手。膝の
上で重ねている。潮、両手にぎゅっと
力を込めて、
潮の声「私……男の人とお付き合いした事が
ありません」
潮の声「だから……」
と、同時に、差し出される将之の左手。
将之の声「なら」
──────────────────────
テーブルを挟んで、優しい笑みの将之。
身を乗り出し、左手を差し出したまま、
将之「試してみませんか。私と」
──将之の視点で。
潮の前に差し出されている左手(将之)。
将之の声「恋愛の可能性を」
差し出された左手をじっとみている潮。
潮のM「(呟いて)私が──男の人と付き合
う──」
潮、我に返って、
潮のM「(強く)そういや、お付き合いって
!?」
⑧ マンション・潮の部屋(夜)
真っ暗なクローゼットの中。勢いよく
開く扉。その先に潮。シーン⑤の通勤
服のまま。
潮のM「服が無い!」
玄関。靴箱を開けて、中を見ている潮。
潮のM「靴が無い!」
鏡の前。潮、通勤鞄を手に取って、
潮のM「鞄、コレしか持ってない!」
はっと前を見ている潮。
鏡に映っている潮。真剣な顔。じっと
自分を見つめている。
潮、四つ這いで鏡に迫る。
前髪をかき上げている潮。その額にニ
キビ。
鏡の中の潮。髪をかき上げたまま、驚
愕の顔。
鏡の前に潮(後ろ姿)。ぐっと鏡に向
かって、
潮 「(わなわなと)この歳で」
⑨ 同・外観
──やや仰角で。
各戸に温かい灯りが点いている高層マ
ンション。夜空に月。
潮の声「(
──────────────────────
⑩ 劇場・外観
シーン①同様。
⑪ 同・営業部
デスクの潮。その後方、潮を見ている
後輩A(男)。
⑫ 商業施設とオフィスを交互に
歩いている潮(足元)。歩調を緩めて
止まる。と、P.U。見上げている潮
(このシーン、全て女性らしいスーツ
姿。但し、カット毎に違う服)。
ショーウィンドーの中。外からマネキ
ンが着ている服を見上げている潮。
× × ×
デスクの潮。パソコンに向かっている。
× × ×
洋服を選んでいる潮。
× × ×
デスクの潮。その隣に後輩A。二人、
着席。後輩A、潮の話を聞いている。
ふと見る後輩A。
書類を見乍ら話している潮。
× × ×
試着室の中。鏡の中、洋服を試着して
いる潮。壁、ハンガーに二着かかって
いる。
× × ×
会議室。ちらと視線を上げる後輩A。
ホワイトボードの前に潮。発言中。
× × ×
試着室の前。鏡の前に潮、くるっと後
ろを向いて、鏡の自分を見ている。
× × ×
オフィスの廊下。「お疲れ様」と声を
かける潮とすれ違う後輩A。
歩いて来る潮、Fr.OUTする。と、後
ろ姿の後輩A。ちらと振り返る。
× × ×
沢山の鞄が並んでいる棚。その奥から、
──────────────────────
鞄を手に取る潮。難しい顔で品定め。
× × ×
劇場の前。着ぐるみと並んでいる潮。
手に沢山の風船。大勢の子供達に囲ま
れて、笑顔で風船を渡している。
着ぐるみの中に後輩A。
後輩A、笑顔で風船を渡している潮を
見ている。
眩しい笑顔の潮。
× × ×
鏡の前で靴を試着している潮。くるっ
と後ろを向いて、鏡の自分を見ている。
⑬ マンション・外観(夕)
シーン⑨同様。但し、夕暮れ。
⑭ 同・潮の部屋(夕)
潮 「疲れたーッ!」
と、どたっと倒れる潮。両脇に服、鞄、
靴が入ったショップの紙袋。
潮、仰向けになって、
潮 「男の人と付き合うって、準備だけで、
すっごい疲れるーッ! なんなのよーッ!
もーッ!」
潮の鞄。聞こえて来る着信音。
潮の手にスマートホン。画面、将之か
らのメール。
「土曜日、お会いするのを楽しみにし
ています」
腹ばいのまま、スマートホンを見てい
る潮。
潮(口元)、口元が緩む。
⑮ 同・浴室(夜)
聞こえている潮の鼻歌。浴室をPUNし
て鏡の前に潮。機嫌良くフェイスケア
をしている。
⑯ 同・外観(夜)
シーン⑨同様。聞こえている潮の鼻歌。
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⑰ 劇場・外観
シーン①同様。
⑱ 同・営業部(夕)
壁面に時計。時針「四時五十分」。
書類を確認している潮。手を止めて、
見上げる。と、
潮 「(後輩Aに)ありがとう。これでいい
わ」
潮の傍に後輩A。ぽーっと潮を見てい
る。潮、気づいて、
潮 「? 何?」
後輩A「……
潮 「はあッ!?」
後輩B(男)、勢いよく手を挙げて、
後輩B「あ、俺も思ってましたーッ!」
葦原、潮を覗き込んで、
葦原「(冷静に)どら?」
潮 「え、ちょっと!」
⑲ 同・廊下(夕)
営業部から出て来る潮。きつく目を閉
じて、
潮 「そんな事言っても、手伝いませんから
ね! お先に失礼します!」
見えている営業部内に後輩Aと葦原。
後輩A「(潮に)えッ!? そんなつもりじゃ」
「お疲れ様」「お疲れー」と笑い声。
⑳ 同・エレベーターホール(夕)
チン、と開くエレベーター。降りて来
るサラリーマン達。その最後に潮。き
つく目を閉じて、むっとしている。
㉑ 同・商業エリア(夕)
歩いている潮。はたと立ち止まる。
ショーウィンドーに並んでいるマネキ
ン。スタッフが新しい服に着せ替えて
いる。そのガラスに映っている潮。自
分を見つめている。
──────────────────────
ショーウィンドーの前に潮。前髪を少
し上げて、ガラスに映っている自分を
品定めする様に見ている。そのままP.U
して夕暮れ空→夜空。すっと一筋の流
れ星。
㉒ 天保山・マーケットプレース前広場(朝)
㉑の夜空から朝。極上の天気。
コンパクトミラーに映っている潮。お
でこ、頬、鼻等、品定めする様にチェ
ックしている。無くなっているニキビ。
パチンとコンパクトミラーを閉じる。
と、その少し離れたベンチに私服の将
之。文庫本を読んでいる。
マーケットプレース前広場をPUNし乍
ら、潮(横顔)。
後輩A「(OFF)岬さん、綺麗になったなっ
て」
潮、ゆっくり顎を上げて、ぐっと顎を
引く。と、
潮 「(小さく気合いを入れて)よし」
そのまま潮をP.D。女性らしい可愛い
ワンピースに鞄、靴。同時に潮、深呼
吸。一息ついたのち、ゆっくりと一歩
を踏み出す。
気づく将之。(潮を)見る。少し嬉し
そうな顔。
──俯瞰になり乍ら。
立ち上がって、潮に歩み寄って行く将
之。歩いて来る潮。小走りに駆け出し
て──
× × ×
透過光の中。
差し出されている将之の左手に、伸び
て来る潮の右手。二人の手が近づき乍
ら、透過光最大──。
T『キレイの第一歩──それは、あな
たの勇気から』
番外編その1『ここから、はじまる』終
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