名前のない女の子

不明

名前のない女の子

お話よりも、こちら側

お話よりも、こちら側

これはあなたたちとはちがう時代、わたしたちの時代のお話です。

わたしはあなたと手をつないだ人です。

わたしと手をつないでくれてありがとう。

これからあなたに『あるお話』を見せます。

わからないことがあれば、わたしになんでも聞いてくださいね。



こんな言葉をわたしはいつか、あなたに言うつもりです。

でもその前に、わたしが思う『あなたがわからないかもしれないこと』について、わたしは話しておきたくなりました。

あなたが本当にわからなくなるかどうかも、わからないのに。


だからこれは、わたしのおせっかいです。

わからないままでいるのも、すてきですよ。

だってそのほうが 「これってもしかして、こうなのかな?」 って考えられるんですから。

それは合っていることよりも間違っていることよりも大事なことだと、わたしは思います。


でもね、先に答えを知りたくなっちゃう気持ちも、わかるんです。

考えなくても良い答えが、そこにあるなら見たくなっちゃいますよね。

だって考えることって、とってもおなかが空くんですもの。

だからわたしは、あなたのおなかが空かないように、ここに『答えのようなもの』を置いておきます。


ただ、答えを知ってから考えるのも、おもしろいですよ。

ある答えは、別のおもしろい考えの扉を開ける鍵になります。

どちらかと言えばわたしは、あなたにそうしてほしいと思って、先に答えを言うのかもしれません。


あなたには、たくさんの鍵を持って行ってほしい。

開かない扉の前に立ったら、ここで拾った鍵が合うかどうかをためしてほしい。

でも鍵はきっと、途中で足りなくなります。

全部の鍵は、ここには置きません。

残りの鍵は、お話の中に置いておくつもりです。

それは、とってもわかりにくい場所にあることもあります。


あなたがどんなに探しても、見つからない鍵もあるでしょう。

それはわたしが鍵を置き忘れたか、わざと置かなかったからです。

それとも別の誰かが見つけた後だから、かもしれません。


あなたより先に、あなたとはちがう鍵を見つけた人。

わたしは、あなたがその人に会えることを楽しみにしています。

あなたがお話の中で見つけた鍵は、その人が持っていない鍵かもしれませんしね。

みんなでたくさんの鍵を見つけてくださいね。

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