第3話、麻也の母 友人からの忠告

人目につきにくい場所に移動した。


といってもここはちょっと田舎の病院なので元々あまり人が来ない。

一日に来たとしても10人ぐらいだろう。


だから少し狭い部屋に入るだけで、もう回りには干渉されない。



「一応大学病院など大きい病院で診察を受けた方がよろしいかと思います。」


「まさか、病気でも?」



薄々感じていた。


麻也が私にちょっとおかしいと言ってやっと確信した。


麻也は気づいていなかったと思うが、歩き方や何かをする動作だ無意識的にどこかをかばっているように見えた。


それが病気の症状と言うならば、気づいていながらも麻也が自分で言ってくるのを待っていた私のせいだ。


私の仕事柄、いち早く気づけたはずなのに。



「いくつか基準より大幅に減っているところがありましてね・・民間の病院であるここだけの診断で病名を確定させるのは少し不安がありますので国立の病院をおすすめしているだけです。」



その言い方に少し不満が募る。


私の今の立場は、患者の母親。


だから余計なことは言えないのだろうけど・・でも・・



「・・詳しいことは教えてくださらないんですね」


「患者の不安を煽るようなことはしたくありませんので」


「本当は面倒なだけなんじゃないんですか。白川先生」



白川先生は同じ大学の医学部で面識がある。


気づいたのはさっきネームカードを見たときだが。


彼女なら私が看護師であることだって知っているはずなのに。


そんなに詳しいことを教えたくないの?


「・・ではこれは友人としての忠告です。絶対に病院に行きなさい。できる限り早く」


友人のその一言は重い。


彼女は元々人様の家の事情にはあまり関与しない。


よそはよそうちはうちタイプだ。


彼女の忠告、その単語がどれ程強力なものなのかを知るのはごく一部の人だけだろう。


「・・分かったわ。ありがとう」


そう言って私は部屋から出た。

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