ソシャゲをしているだけなのに、なぜか学園の女神様に崇拝されています

つくも/九十九弐式

第1話 オフ会の誘い

『団長、ってどこに住んでるんです?』


「ん? ……」


 それは俺――菊池光星がやっているソシャゲ『グロンブルー・ファンタジー』のゲーム内での出来事だった。ゲーム内にはDM機能というものがあって、プレイヤー間で直接やり取りする事ができた。


『〇〇市だけど……』


 俺はそのグロブルのトップ団『結盟騎士団』の団長をしていた。そして、突如団員とのDMが始まったのである。


『わー……私が住んでいるところと同じだ』


 へー……。くっすっす。妙に可愛い言葉遣い使いやがって。このネカマが。俺の目の前には可愛らしいニャルメアさんのアイコンがあるが、キモオタ程こういう可愛いアイコンを使うものなのだ。


『仕事は何をやっているんです?』


『仕事は……高校生だよ』


 俺は現役の男子高校生だ。ただし、勉強、運動もできない。その上コミュ力も低い、ひねくれた陰キャ学生だ。


『へー……私も女子高生なんですよ』


 嘘乙! ……へへっ。そうやって、男性プレイヤーの心を揺さぶるのがこの手のネカマプレイヤーの狙いなのだ。


『今度会いませんか?』


『え? ……いいけど』


 マルチビジネスの勧誘か、宗教か、あるいは中年のおっさんが現れて『ドッキリ大成功!』か。ワンチャン本当に女子かもしれないが、ものすごいデブスの可能性はあった。


『わー……団長とリアルでお会いできるの嬉しいです。この前の団体戦、団長の闘いっぷりはすごかったです! もう一騎当千って感じで、本当頼れました!』


『はは……ありがとう。君たちの貢献もすごかったよ。おかげで我が団も少数精鋭ながらトップ団まで上り詰める事が出来たじゃないか』


 勉強もせず、部活にもソシャゲをしていただけなのに褒められる。このギャップが陰キャである俺を猶更ソシャゲにのめり込ませるのだ。


『そうですね。だから、今度二人でお祝い会しましょう。私も団長の事もっと知りたいですし』


 こうして俺達は待ち合わせ場所と時間を決め、その日のDMでの会話を終えた。


「ネカマ乙……まったく、男心からかって楽しいのか、こいつら」


 十中八九、こいつは待ち合わせ場所に現れない。現れたとしても腹の出た中年だ。それかネットワークビジネスの勧誘。それくらい疑ってかからないとだまされた時のダメージが半端ない。


 それでも待ち合わせ場所に行こうとしたのは淡い期待があったのだ。友達ゼロのぼっち、ソシャゲが友達の俺でも友達ができるんじゃないかなー、って。リアルの友達。俗にいうリア友だ。


 男だっていいんだ。友達がいれば俺の退屈な高校生活も少しは充実するんじゃないか。


 俺はそう思い、団員『RIN』さんとのオフ会へ向かうのであった。


 ――だが、その時は俺はまだ、あんな事になるなんて夢にも思ってもいなかったのである。








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