第9話9

(ヤべ!)


恒輝は、青ざめた。


田北が、教室だという事を忘れ絶叫した


「なっ!なんだよ!この大スキ♥って?

!まっ!まさか!やっぱり!恒輝!お前

、花菜ちゃんとお付き合いしてたんだろ

?!」


(ほらな!こう言う事言われると思ったわ!くっそ~~~!花菜のヤツ!)


恒輝は、呆れた後大きな溜息を付いた。


そして、チラリと、自席に座る明人の方を見た。


明人は、恒輝をただただじっと見詰めてくる。


その視線が痛くて、恒輝は明人から目を外らせる。


そこに、短気な田北が恒輝の襟元を掴んで揺さぶり、恒輝につっかかってきた。


「テメー!俺が花菜ちゃん好きなの知ってて、知ってて、隠して付き合って、俺の事バカにしてたんだろう?!」


恒輝も元々が短気なので、場所を忘れヒートしだす。


「んな訳あるか!この弁当はな!花菜の嫌がらせなんだよ!花菜の推しのアイドルのドラマ一緒に毎週見るって約束してたのに、昨日は俺が先に寝ちまって起きなかったから…見ろよ!おかずなんか一つもねぇし、花菜はな、俺が困んの承知でやってんだよ!」


しかし、一度頭に血が登ると、田北の怒りは収まらない。


「お前…お前…一緒にドラマ見るとか…やっぱ仲良すぎだろ?前から思ってたんだ。お前本当は!本当は、花菜ちゃんの事!」


「あんだとーーーごらぁっ!」


恒輝も田北の首元を掴んだ、


「西島君!」


そこに明人が、睨み合う2人の体の間に入ろうとした。


「お前は、どいてろ!」


恒輝は、田北が手荒いのを分かっているので、明人をただどうしても巻き込みたくなくて、


護るつもりで明人の体を手で軽く押したつもりだったが、回りには少し乱暴に見えた。


そこに、


「西島!!!」


佐々木の声が、教室に響く。


佐々木は、明人の顔を心配そうに見てから、恒輝を睨んだ。


そして次には恒輝と田北を、教師の顔で見て言った。


「西島!田北!いい加減にしろ!」


恒輝と田北は、闘犬が睨み合うようにお互い不満気に、お互いから手を離した。


「特に西島!お前は田北と違い勉強にも身が入って無い。こんな事ばっかりやってたら、アルファのくせにちゃんと高校すらも卒業できないぞ!」


佐々木が、恒輝にキツく言った。


だが、そこに明人が、佐々木に抵抗するような声を上げた。


「先生!!!」


佐々木は、さっきまでの高圧的な態度から、犬が飼い主の顔色を伺うようにして明人を見た。


「チッ!」


恒輝は舌打ちし、ズカズカと歩き出し、開いていたドアを思い切り右足で蹴って教室を出て行った。


その後…


空きっ腹を抱えながら恒輝は、今は使われていない教室で、机を沢山集めその上で寝っ転がる。


たまに…


恒輝は、もう、何もかもどうでもいい時がある…


学校も、アルファである自分も…


今は、高校にちゃんと行って卒業する約束で、花菜の家に居候させてもらっている。


なら、もし高校を中退したら、今度は何処へ行けばいいだろうか?


そして…


元々、完全な大人の佐々木と高校生の恒輝を比べるのもアレだが…


又、完全無欠アルファ佐々木とポンコツアルファ恒輝との格差を見せつけられた


(流石に彩峰も、いい加減俺に失望すんだろ…まぁ、別にいいけどよ…)


腕を頭の下で組み、足も組み、


灰色のセメントの天井をぼんやり眺めながら、恒輝はそんな事を思う。


さっきから、長く締め切っていた教室独特の匂いが、恒輝の鼻孔に絶えず入ってくる。


そこに、ガラッと音がした。


恒輝が、顔を右に向けその音の方を見ると、恒輝のいる教室のドアを開けた明人がそこに立っていた。









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