第7話7
実は佐々木は、恒輝のクラスの副担任でもあった。
ほんの数日前、今までの副担が急に転勤になり、佐々木が来た。
変な時期に転勤だと思っていたら…
もし明人の為に来たのだとしたら…
どんな手を使ったのか?…
公私混同も激し過ぎると、恒輝は内心呆れながら、その佐々木の英語の授業を4時間目に受けていた。
無論、明人と佐々木が幼馴染みで、佐々木がどうも明人に気があるとは、恒輝のクラスメイトは誰も知らない。
佐々木は、男前で頭脳明晰、運動神経抜群で背も高い。
英語はペラペラで、他に、フランス語、中国語、スペイン語もペラペラで…
噂では、実家は相当な金持ちだとか…
その佐々木が、英語の難しい問題で明人を当てた。
明人は、黒板まで出て来て解き出した。
佐々木は、かなり明人の近くで明人を凝視している。
(彩峰と、いちいち近けーんだよ!)
机に頬杖を付きながら、恒輝は、内心又悪態を佐々木に付いた。
明人は、スラスラと迷う事なく問題を解いていく。
その明人の横顔とチョークを持つ指先と
、スラッとした立ち姿から色気がダダ漏れで…
クラスメイトはみんな、そして、いつしか恒輝までもぼ~っと見詰めてしまっていて…
恒輝は慌てて首を軽く振って我に帰った
。
(しっかりしろ!俺は、あいつは無理なんだって!でも、やっぱ…)
完璧なオメガの明人の隣には、自分より完璧なアルファの佐々木の方が絶対良く似合うと、恒輝は新ためて思った。
「完璧な正解だ!」
明人の答えに、佐々木が感嘆の声を出した。
恒輝以外のクラスメイトも、明人に言葉も無く圧倒されている。
すっと黒板から振り返り、明人が席に戻ろうとした。
だが、その時…
恒輝と明人の目が合った。
ハッと固まり瞠目する恒輝に、明人は…
恒輝の反応がかわいくて、クスリと恒輝の目を見詰め微笑んだ。
佐々木も、クラスメイトも、その様子を呆然と見る中…
恒輝は、顔を赤くしながら、フイっと横を向いた。
授業時間も終盤。
佐々木が今日の授業を早めに終え、クラス全員に告げた。
「今日、進路希望調査の提出日だ!放課後回収するから、まだ書いてない者は書いとけよ!それと、今から、来週の英語の補習者の名前を呼ぶ!」
恒輝は、自分の進路をもう完全に決めていた。
この高校を卒業したら、絶対、東京を一人離れ、何処か地方の適当な楽な大学に行こうと思っていた。
東京を離れて、恒輝の事を全く知らない人間ばかりの、恒輝がアルファだと誰も知らない土地へ行く。
そして、出来損ないのアルファの自分は
…
もう、アルファだオメガだのに振り回さる事無く、べータと身分を偽って、心機一転生きて行きたいと思っていた。
そして、いつか、恋愛して結婚もするなら、ベータの、出来る事ならかわいい、胸の大きい、優しい女子が絶対いいとも思っている。
それが、自分にとって一番楽に過ごせて合っているし、それこそが幸せだと思っている。
(悪いな…彩峰…お前と約束したのは、友達になるって事までだからな…)
恒輝は振り返る事無く、恒輝の背中を見詰めていた明人に、心の中で謝罪した。
しかし、
「西島!」
英語の補習に、恒輝の名が呼ばれてしまった。
明人の事での腹いせに、佐々木が恒輝を補習に呼んだ…と、どんなに恒輝は思いたかったか…
だが…
前の副担の時から、恒輝は補習に呼ばれていたし…
数学や他の科目でも、補習の常連だった
。
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