第17話017「神様(クソじじい)のミス」
「やー、さっきはすまんかったの〜。少し野暮用でそっちを先に処理してての⋯⋯」
神様が約三ヶ月以上ぶりに現れた。
「おい! 何が『さっき』だ! あんたが連絡したのは三ヶ月以上前のことだぞ?」
「ん? 三ヶ月前? あああああああああああああああっ!? あの世と現実では時間の流れが違うんじゃったわい! 忘れとった、スマン、スマン⋯⋯」
神様クソじじいはいつもの軽いノリで謝った。
反省している様子は微塵も感じられないのはもはや仕様だ。
「で、どうじゃ? 転生してからの生活は?」
「いや今、俺⋯⋯絶賛死ぬ直前なんですけどっっ!! 転生しても何も力無くてどうしようもないんですけどっ!! まあ力はいらないって言ったのは俺だけれども! ていうか今、俺どういう状況なんだよっ!!!!!」
俺はキレ気味に⋯⋯というかキレた。
勝手にこんなよくわからない『真っ白な空間』に飛ばされたことにキレた。
神様クソじじいが毎回突然現れることにキレた。
転生したらてっきり何か『特別な力』があると勘違いした自分にキレた。
実際『特別な力』など持っていないことを知って絶望した自分にキレた。
そんな『力も何も無い自分』では仲間を助けることなんてできないことにキレた。
「⋯⋯お前さん」
「ちくしょうっ! ちくしょうっ!! ちく⋯⋯しょう⋯⋯」
気づくと俺は肩を震わせながら涙を流していた。
「ん? ちょっと待て? お前さん⋯⋯特別な力など無いって言ったか?」
「ん? あ、ああ⋯⋯」
「ん、んん〜〜〜〜〜〜????? あ、あれ〜〜〜〜〜〜〜???????」
「??」
すると、神様が俺の周囲をクルクル回りながらマジマジと鑑定するように見回した。
「な、なんだ⋯⋯よ⋯⋯一体っ! 気持ち悪いな〜⋯⋯こっちはそれどころじゃ⋯⋯」
「あああああああああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!」
神様が突然、頭を抱えながら叫び出した。
「うわっ?! な、なんだよ、いきなり!!!!!」
「す、すまん⋯⋯」
「な、何が?」
「開放するの⋯⋯忘れてた」
「開放⋯⋯? 何の?」
「お前さんに渡した『恩恵』⋯⋯『特殊能力』の⋯⋯開放」
「⋯⋯え?」
「お前さんには『恩恵』である『特殊能力』は渡してあったのじゃが、うっかりその力を開放するの忘れとったみたいでな。だから『力』を利用できなかったようじゃ⋯⋯てへぺろ」
「へー、そうなんだ。ふーん⋯⋯」
ゴッ!
俺は忖度無しの一発を食らわした。ノーモーションで。
「ぼ、ぼぼぼぼ、暴力反対っ! ぼ、暴力はいかんぞ、暴力はっ!!!!!!」
「アハハハ⋯⋯ウフフ⋯⋯。アハハハ⋯⋯ウフフ⋯⋯。アハハハ⋯⋯ウフフ」
俺は神様クソじじいの静止を完全に無視し気の済むまで笑い殴った。
*********************
——10分後
顔を腫らした神様から事の顛末を聞かされた。
「⋯⋯要するに、俺は『特殊な力』をすでに受け取っていたがお前がその能力の開放を忘れていた、と?」
「だ、だって! さっき横から『緊急!』て無理矢理上司から会話を遮られたからで⋯⋯ふ、不可抗力⋯⋯」
「言い訳しない!」
「!! す、すみません」
現在、神様クソじじいの完全な失態・失念によって俺の命が脅かされる状況となったということで、とりあえず神様には土下座してもらっている。
「ていうか、あんたが能力開放忘れたおかげでこっちは今、死ぬ直前なのだがどうしてくれる?」
「あ、それなら問題ないぞ?」
「何?」
そう言うと、神様は立ち上がり得意げに説明を始めた(すでに反省の色が消えたようだ。これが仕様か)。
「今回、ワシの失念のせいでそのような状況となったので救済策がある。それは⋯⋯」
こいつ、本当に反省してるのか? とイラついたがとりあえずその『救済策』とやらの説明をそのままさせた。
「このままリセットしてもう一度転生し直す、というものじゃ」
「⋯⋯リセットしてもう一度、転生⋯⋯し直す?」
「うむ。そうすれば、次は別の世界で⋯⋯お前さんが望む争いのない⋯⋯」
「ちょっと待て! それってつまり⋯⋯この世界で⋯⋯トーヤ・リンデンバーグとしてもう一度やり直すってことにはならないってことか?」
「そうじゃ。リセットして転生し直すとは別の世界の人物に転生するということじゃ」
「じゃ、じゃあ⋯⋯妹やオーウェン⋯⋯さっきの状況はどうなるんだよ?!」
「どうもこうも、あのままじゃ。あの魔獣の炎によって三人は死ぬ運命じゃよ。言っておくが、ワシが失念したのはあくまでお前さんの特殊能力の開放なだけで、もし、ワシが忘れずにお前さんの能力を開放してたのならお前さんは力を貸すということで両親と共に魔獣の群れがいる南方鎮守城塞スザクに行くはずじゃったからな。その場合、この窮地には間に合わず三人はやはり魔獣に殺される運命じゃ」
「なっ⋯⋯?!」
「だから、お前さんが罪に思うことはない。あの三人はここで死ぬ運命なのじゃ」
「そう⋯⋯だったんだ⋯⋯」
衝撃の事実だった。
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