第12話012「襲撃」



——南の森国立公園


「な、何っ! それは本当か!」

「はい。今、神殿遺跡で『神獣スザク像』を確認しました! おそらく間違いないかと⋯⋯」


 現在、俺たち四人は神殿遺跡から急ぎ戻り、アリアナ先生に事情を説明した。オーウェンの話を聞いた先生はすぐに生徒も先生も呼び集めた。


「どうしました、アリアナ先生?」

「校長! オーウェン君が神殿遺跡で『神獣スザク像』を確認したらしいのですが、それによると村周辺に魔獣出現の可能性が非常に高いとのことです」

「な、魔獣⋯⋯ですか?! それは本当ですか、オーウェン君!」

「はい!『神獣スザク像』の瘴気痕しょうきこんの侵食具合を見る限りだと⋯⋯」

「む〜、そうですか。わかりました。アリアナ先生⋯⋯」

「はい⋯⋯皆の者聞けっ!」


 アリアナ先生は校長と一度アイコンタクトをした後、そこにいる先生、生徒に魔獣についての話をした。


「そういうことだから⋯⋯この公園の安全もわからん! なので、一旦村へ戻る! 帰りは皆、先生の指示を絶対に守れ! 固まって動け! 魔獣はいつ出てきてもおかしくない状況だ! 行くぞっ!」


 アリアナ先生は的確な指示と皆に適度な緊張感を与えた。さすが現役冒険者⋯⋯咄嗟な対応にも関わらず冷静な判断と指示だ。


 そんなわけで俺たちは村へと戻ることとなった。



*********************



——南方鎮守城塞スザク


「おっらぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!」


 ドン⋯⋯っ!!!!!!!!


 ウォルターが魔力付与した剣を振るう。すると、目の前に広がる数十の魔物の群れが吹き飛ばされた。


断裂射手シュレッドアローーーーーーーっ!!!!!!」


 ウォルターのタイミングに合わせ、リリーが『真空状態の風の刃』を無数に作り出し切り裂く風属性中級魔術『断裂射手シュレッドアロー』を繰り出す。


『グギャァァァァァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!』


 吹き飛ばされた魔獣はリリーの断裂射手シュレッドアローにより一瞬にして肉片へと化した。


「相変わらず、二人の連携攻撃はえげつね〜な〜」

「す、すごい⋯⋯」


 ヴァーズがウォルターとリリーの戦いの様子を見て、懐かしみつつ圧倒的な攻撃に舌を巻く。その横ではローランドが二人の連携攻撃にただ呆然としていた。


「ボケっとするな、ローランド! 俺たちも負けずに魔獣を蹴散らす⋯⋯ぞっ!」

「は、はいっ!!!」


 ヴァーズはローランドに喝を入れつつ、迫ってきた魔獣を大斧一振りで真っ二つにする。ローランドもそのヴァーズの喝に応える様に目の前の敵を通常の剣よりも細身の長剣を持って舞うように切り刻んだ。


「なんだ、やるじゃないか、ローランド! この調子でどんどん狩ってけ!」

「はい!」


 周囲には城塞からの兵士だけでなく、近隣の村に常駐していた騎士団、術士団の兵士も駆けつけた。結果、数的には魔獣のほうが倍ではあるが戦況は人族側が押していた。


「それにしても! どうして魔獣が! 群れをなして人族の陣地に! 侵攻してくるなんて! やはり不自然です! よね!」

「ああ! 本来、魔獣は! 自分たちの縄張りテリトリーに侵入しないかぎり! 襲うことはない! のだがな! そもそも! 単独行動が多い魔獣が群れをなすなど! ありえん!」


 ヴァーズとローランドは互いに背を向けることで死角を消して戦いながら話をしている。


「ということは! この魔獣の群れは! 人為的!」


 ザン!


 ローランドが目の前のDランクの人型で豚の顔を持つ『オーク』を一刀両断する。


「ああ! それは間違いない! ただし! その首謀者が! バスケル辺境伯かどうかはまだ! 確証はないがな!」


 ヴァーズが2メートル近い大斧にも関わらず、軽々と振り回してはオークを切り果たす。


 そんな二人が会話をしているときであった。


「ヴァ、ヴァーズ司令っ! ヴァーズ司令っ! 大変ですっ!」

「アデル! ど、どうしたっ!?」


 普段、冷静なあのアデルが顔面蒼白でやってきた。


「む、村に⋯⋯サイハテ村に⋯⋯」

「村がどうした! しっかりしろ、アデル!」

「Bランカーの魔獣、エビルドラゴンがサイハテ村に出現しました」

「なっ?! エ、エビルドラゴン⋯⋯だとっ?!」


 ヴァーズがアデルの言葉に驚愕の顔を浮かべる。


「はい。それとエビルドラゴンを伴っている者がおりまして、それが⋯⋯バスケル・ハイツーク辺境伯」

「⋯⋯バスケル。やはり、か」

「はい。今回の魔獣出現は人為的であり、首謀者はバスケル・ハイツーク辺境伯だったようです。そして、ここに出現した魔獣の群れはおそらく⋯⋯」

デコイ⋯⋯か。しかし、本命であるサイハテ村にいる魔獣が⋯⋯あのBランカーのエビルドラゴンなどとは⋯⋯バスケル、あやつ本気か?」


 ヴァーズはバスケル辺境伯の計画があまりにも非道であることに怒りを露わにする。すぐに、村へ行ってバスケル辺境伯を殴り飛ばしたい衝動に駆られるがここを離れることはできない。最初よりは多少魔獣を討伐したおかげで数は減っているもののまだ油断できない数だからだ。


「じゃあ、ちょっくら俺ら行ってくるわ⋯⋯ヴァーズ」

「わたしもね」

「っ!? ウォルター! リリー!」


 ヴァーズの前にウォルターとリリーが現れる。


「騎士団と術士団が加わったおかげでだいぶ魔獣の数は減ってきてはいるが、この場を統率するお前がいないと瓦解する恐れがある。だから俺とリリーで村のほうは対処する。だから、お前はここでキバんな!」

「そうよ、ヴァーズ。それに村にいるっていうバスケル辺境伯も殴り飛ばしたいしね」

「ウォルター⋯⋯リリー⋯⋯」

「ということで、ここはまかせたっ!」

「いってきますっ!」


 ウォルターとリリーが物凄いスピードで村へと戻っていった。その二人を見ながらヴァーズは顎に手を当て考える。


(いくら、あいつら二人でもエビルドラゴンを倒せるかどうかは⋯⋯五分五分。ここを早く片付けて村に駆けつけなければ⋯⋯)


「アデル! 村のことを皆に伝えろ! あと、ここを早めに片付けて村に向かうから討伐を急げと言えっ!」

「はいっ!!!!!!!!」


 伝言をアデルに伝えるとヴァーズは『鬼の形相』で、魔獣をさっきよりも格段に早いスピードで屠っていった。

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